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また、乙女ゲームですか
第二十九話 ひとまず安心しましたわ
しおりを挟む深夜でした。
何の前触れもなく、突然イヤリング型をした魔法具が震え熱くなります。反射的に飛び起きましたわ。そのままベッドから下りると、魔法具に触れます。
「お母様!! 大丈夫ですか!?」
深夜ですが、思わず声が大きくなります。声の大きさなんて構っていられません。それほど、心配していたのだから。
「こんな夜遅くに連絡してごめんね」
ちょっと元気がなさそうですが、無事でよかったですわ。切羽詰まった様子は声からはしません。でもそれは、あくまで声の感じです。実際はどうかは分かりません。なので、一度戻るように言いました。
「そんなことどうでもいいです。それで、今も聖教会の近くですか? 取り敢えず一度戻って来て下さい。魔力は残ってますよね」と。
「大丈夫。飛べるくらいは十分残してるわ。それより、今から戻っても大丈夫なの?」
飛べるくらいね……。
つまり裏を返せば、かなりの魔力を消費したってことですね。あの底なしと言われ、【黒炎の魔女】と恐れられたお母様がですよ。
「こんなに心配掛けて何言ってるんですか!! さすがに、私も怒りますよ」
若干、声が低くなります。
「え~~だって「だっても何もありません。さっさと戻って来なさい」
母親ですが、つい命令口調になります。
「じゃあ、今から戻るわね」
そう言い終わると、魔法具がプツリと切れました。
その直後です。張っていた結界魔法がバチッと音をたて、消えてしまいました。よくある事です。
消えた原因が目の前にいます。
すぐに私は、結界を張り直しました。ネズミが潜り込んでるかもしれませんから。まぁ、潜り込んだとしても、無事生きてこの城から出ることは不可能ですけどね。
実際、こんな深夜でも、侍女の一人がスーと現れ消えます。本当に、とても優秀ですわ。
「……ただいま。セリア、シオンもごめんね」
半裸のシオン様を見て、恥ずかしがることなく挨拶をするお母様。でも、その目は次第に鋭くなります。
「まさか、同衾してたの? 手は出してはいないよね。もし出していたら……分かってるわよね? シオン」
「分かってる。手は出してない」
若干、青くなりながら答えるシオン様。どこを押さえているのですか。
「ほんとに?」
「ああ」
二年後に結婚するんですから、少しくらいいいではありませんか……。駄目ですわ。今はそんな話をする場合ではありませんわね。それよりも今は、お母様の体が心配です。
「大丈夫ですか? お母様。今、侍女がお茶を持って来ますわ。それを飲んでから、ひとまずお休み下さい。話はそれからですわ」
お母様を支えるように手を背中に添わせます。少しお母様がふらつきます。
思っていた以上に、お母様は消耗してますね。何があったのでしょう。とても気になりますわ。
「ありがとう、セリア。取り敢えず、お茶を貰うわ」
そう微笑みながら答えるお母様。その微笑みには影が差しています。
やはり、かなり魔力を消費しているようですね。お茶を用意してくれている侍女に魔力用のポーションを持ってくるように指示しました。詳しい話はお母様が元気になってからですね。
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