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また、乙女ゲームですか

第二十四話 一緒に滅びなさいな

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「何故、ここに貴女がいるのよ!!!!」

 屋台巡りをしてからケーキを買って、砦に戻って来た途端、鋭い声が私に突き刺さります。

 振り返らなくても分かりますわ。その声の主が誰かは。私が苦労して作った魔法具の意味がなくなってしまいましたね。脱力感は否めませんわ。

 楽があれば苦があると言います。高名な哲学者が、幸せと不幸せは同じぐらい訪れると言ったとか……。それを身に沁みて知ることなるとは、この時は思いもしませんでしたわ。ええ、思いもしませんでした。

 停学中だと気を抜いていた私の落ち度ですわ。相手はまともな常識のある方ではありませんのに。

 シスターが怒鳴りながら、こちらに向って走って来ます。少し距離がありますが、いつもの庇護欲を唆る雰囲気はどこに行ったのでしょう。ああ……研究棟に突撃した時点で完全に剥がれてましたよね。

 兎に角、鬼気迫る表情で近付いて来ます。取り巻きを引き連れて。

 その中に、あの馬鹿公爵令息もいました。彼は青い顔でしたけど。

 おそらく、彼の元にも書簡が届いたのでしょう。そもそも、精神関与を阻害する魔法具を取り外しているようですし。自業自得ですね。全てを理解した上で、シスターと一緒にいる道を選んだのですか。ほんと、愚かですね。そこまで、あの女に魅力があるとは思えませんが。アバタもエクボってこのことですね。

 シオン様が私を護るように肩を抱き胸元に引き寄せます。相変わらず、シオン様はいい匂いですわ。

「ありがとうございます。シオン様」

 シオン様の厚い胸筋に頬を寄せてから見上げます。ニッコリと微笑みながらお礼を言いました。

「離れなさいよ!!!! そこは私の場所よ!!!!」

 いやいや、いつこの場所が貴女の場所になったのですか!? というか、やっぱりシスターが呟いた〈シオン〉は、私のシオン様でしたね。

 シスター。貴女が狙っているルートはシオン様でしたのね。

 シオン様はとても魅力的な方です。なので、攻略者になるのも頷けますわ。少し年がいってても。それを抜きにしてもあまりある魅力を持つ方ですもの。シオン様を選ぶ気持ちは理解出来ますわ。

 だからといって、貴女には決して渡しはしませんわ。絶対にね。

 それにしても、取り巻きの連中の前でそのセリフは駄目でしょう。そう思いましたが、取り巻き連中の様子は、シスター同様興奮していってます。

 つくづく、常識から掛け離れていますわね。

 はぁ~~。これからは、それを想定して対策しないといけませんわね。難易度がかなり上がりましたわ。

 しかし、シスターたちは私の元に来ることは出来ませんでした。侍女さんと砦の職員に足止めされてますわ。

「貴女何を言っているのです? 私の最愛の婚約者に。妄想はいい加減にして下さいませ」

 クスッと笑いながら言い放ちます。

 知らないかもしれないので、はっきりと宣言しましたわ。証言者も大勢いますわ。それでも尚、シオン様に手を出して来るのなら、容赦は致しませんわ。

 興奮したシスターは喚き散らしています。拘束していなければ、完全に私に暴力を振るっていましたね。まぁ、それでもよかったのですが。堂々と排除出来ますからね。

 だけど、私がワザとでも暴力を振るわれると、シオン様が悲しみますからね。別の場所で。

 あっ、侍女さんが実力行使をしてますね。職員たちも。このまま学園に運ぶようです。それが一番ですわね。

 停学中の外出。

 砦での騒ぎ。

 まず間違いなく、停学期間が伸びるわね。次、何か問題を起こしたら、おそらくシスターは退学になるでしょう。取り巻きの連中も。それぞれの婚約者をほっとく程仲がいいんだから、一緒に滅びなさいな。

 引き摺られて、乱暴に連れて行かれる彼らを見ながら私は内心そう思った。

 それにしても、楽しい気分が台無しですわ。こういう時は、シオン様の体温と匂いに浸るのが一番効果的ですわ。
 
    
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