136 / 342
また、乙女ゲームですか
第二十四話 一緒に滅びなさいな
しおりを挟む「何故、ここに貴女がいるのよ!!!!」
屋台巡りをしてからケーキを買って、砦に戻って来た途端、鋭い声が私に突き刺さります。
振り返らなくても分かりますわ。その声の主が誰かは。私が苦労して作った魔法具の意味がなくなってしまいましたね。脱力感は否めませんわ。
楽があれば苦があると言います。高名な哲学者が、幸せと不幸せは同じぐらい訪れると言ったとか……。それを身に沁みて知ることなるとは、この時は思いもしませんでしたわ。ええ、思いもしませんでした。
停学中だと気を抜いていた私の落ち度ですわ。相手はまともな常識のある方ではありませんのに。
シスターが怒鳴りながら、こちらに向って走って来ます。少し距離がありますが、いつもの庇護欲を唆る雰囲気はどこに行ったのでしょう。ああ……研究棟に突撃した時点で完全に剥がれてましたよね。
兎に角、鬼気迫る表情で近付いて来ます。取り巻きを引き連れて。
その中に、あの馬鹿公爵令息もいました。彼は青い顔でしたけど。
おそらく、彼の元にも書簡が届いたのでしょう。そもそも、精神関与を阻害する魔法具を取り外しているようですし。自業自得ですね。全てを理解した上で、シスターと一緒にいる道を選んだのですか。ほんと、愚かですね。そこまで、あの女に魅力があるとは思えませんが。アバタもエクボってこのことですね。
シオン様が私を護るように肩を抱き胸元に引き寄せます。相変わらず、シオン様はいい匂いですわ。
「ありがとうございます。シオン様」
シオン様の厚い胸筋に頬を寄せてから見上げます。ニッコリと微笑みながらお礼を言いました。
「離れなさいよ!!!! そこは私の場所よ!!!!」
いやいや、いつこの場所が貴女の場所になったのですか!? というか、やっぱりシスターが呟いた〈シオン〉は、私のシオン様でしたね。
シスター。貴女が狙っているルートはシオン様でしたのね。
シオン様はとても魅力的な方です。なので、攻略者になるのも頷けますわ。少し年がいってても。それを抜きにしてもあまりある魅力を持つ方ですもの。シオン様を選ぶ気持ちは理解出来ますわ。
だからといって、貴女には決して渡しはしませんわ。絶対にね。
それにしても、取り巻きの連中の前でそのセリフは駄目でしょう。そう思いましたが、取り巻き連中の様子は、シスター同様興奮していってます。
つくづく、常識から掛け離れていますわね。
はぁ~~。これからは、それを想定して対策しないといけませんわね。難易度がかなり上がりましたわ。
しかし、シスターたちは私の元に来ることは出来ませんでした。侍女さんと砦の職員に足止めされてますわ。
「貴女何を言っているのです? 私の最愛の婚約者に。妄想はいい加減にして下さいませ」
クスッと笑いながら言い放ちます。
知らないかもしれないので、はっきりと宣言しましたわ。証言者も大勢いますわ。それでも尚、シオン様に手を出して来るのなら、容赦は致しませんわ。
興奮したシスターは喚き散らしています。拘束していなければ、完全に私に暴力を振るっていましたね。まぁ、それでもよかったのですが。堂々と排除出来ますからね。
だけど、私がワザとでも暴力を振るわれると、シオン様が悲しみますからね。別の場所で。
あっ、侍女さんが実力行使をしてますね。職員たちも。このまま学園に運ぶようです。それが一番ですわね。
停学中の外出。
砦での騒ぎ。
まず間違いなく、停学期間が伸びるわね。次、何か問題を起こしたら、おそらくシスターは退学になるでしょう。取り巻きの連中も。それぞれの婚約者をほっとく程仲がいいんだから、一緒に滅びなさいな。
引き摺られて、乱暴に連れて行かれる彼らを見ながら私は内心そう思った。
それにしても、楽しい気分が台無しですわ。こういう時は、シオン様の体温と匂いに浸るのが一番効果的ですわ。
40
お気に入りに追加
7,462
あなたにおすすめの小説
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。

婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

妹のことを長年、放置していた両親があっさりと勘当したことには理由があったようですが、両親の思惑とは違う方に進んだようです
珠宮さくら
恋愛
シェイラは、妹のわがままに振り回される日々を送っていた。そんな妹を長年、放置していた両親があっさりと妹を勘当したことを不思議に思っていたら、ちゃんと理由があったようだ。
※全3話。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です

婚約者が、私より従妹のことを信用しきっていたので、婚約破棄して譲ることにしました。どうですか?ハズレだったでしょう?
珠宮さくら
恋愛
婚約者が、従妹の言葉を信用しきっていて、婚約破棄することになった。
だが、彼は身をもって知ることとになる。自分が選んだ女の方が、とんでもないハズレだったことを。
全2話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。