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また、乙女ゲームですか
第二十二話 どの国にもいるようですね
しおりを挟む馬鹿男が怒りの形相でこっちに来ようとして来ます。それも声を荒らげながら。
関わりを持つつもりは端からないので、ここは逃げましょう。馬鹿に関わる時間程無駄なモノはないですからね。幸い、今いる場所は二階なので全然平気ですわ。リーファに目配せしてから窓を開け飛び降ります。リーファも。淑女としてはあるまじき行為ですが、馬鹿男に関わるよりは遥かにマシですわ。一種の自己防衛ですね。
逃げられた馬鹿男が、窓から私の罵詈雑言を真っ赤な顔で叫んでますね。余程悔しいのでしょう。私の知ったことではありませんが。この行為が、後に自分の身にどのように返ってくるのか、今から楽しみですわ。
「……ほんとに、五月蠅いですわ」
あの馬鹿男、まだ怒鳴ってますわね。そういえば、何度か見た顔ですね。思い出しましたわ。シスターの隣にいたあの男ですか。隣を伺えば。
リーファ? その顔。久し振りにキレてますね。怖いですわ。……ということは、あの馬鹿男がジーナ様の婚約者のクリーク様ですか……。あれで、公爵家の令息? コンフォート皇国にも似た馬鹿はいましたが、セフィーロ王国にもいたのですね。
「言いたいことは分かるわ。
私もそこまで酷いとは、さすがに思わなかったわよ。最低限の分別があると思ってた。それさえなかったわね。
アレが公爵家の令息なんて、セフィーロの恥さらしが!!」
言葉遣いが一段と悪くなってますわよ。
「……一つ訊きたいのだけどいいかしら?」
「何?」
声が低いです。それに、眉間に皺が寄ったままです。
「彼、セフィーロ王国の人間ですよね。確か……公爵令息だったと記憶していますが、ましてや、ジーナ様の婚約者なのでは?
リーファって、王弟殿下の娘でしたよね。それも、次期王妃になられる方ですよね。私の記憶では、次期王妃って国母だったと思うのですが。なのに、アレですか?」
私に対する態度も最悪を通り越していますが、自国の次期王妃に対する態度も最悪を通り越しています。これが王宮内でしたら、最悪極刑もあったでしょう。なんせ、怒鳴って掴み掛かりそうな勢いでしたもの。実際、あの場に残っていたらそうされたでしょう。
「セリア。ごめんなさい。母国の馬鹿がとんでもないことを。改めて、セフィーロ王国から謝罪させてもらうわ」
頭を下げられました。リーファが悪いわけではないんですけどね。これくらいのことで、リーファとの、いえ、セフィーロ王国との関係は揺らぐことはありませんが、謝罪は受け取りましたわ。
「分かりましたわ。そこはリーファにお任せしますわ。……それにしても……」
溜め息が出ますわ。
自国の次期王妃と同盟国の皇女に対してあの態度とは。
「前々から馬鹿とは思ってたけど、あれ程馬鹿とは思わなかったわ。ほんと恥ずかしい。あんな奴が、同じ公爵家なんて!!」
「まぁ、どの国でも、馬鹿はいるってことでしょうね。
心配なのは、ジーナ様ですわ。おそらくこの一見で、婚約は白紙に戻されるでしょうね」
となれば、ジーナ様の計画が完全に頓挫しますわね。白い結婚を覚悟してまで、叶えようとした願いでしたのに。
「それで良かったのよ。あのクズにジーナは勿体ないわ」
「私もそう思いますわ。後三年あるのです。正々堂々研究を続けられるよう、手をうつことは出来ますわ。勿論、私は応援しますよ」
頑張る人は大好きですわ。
「セリアが味方になってくれたら、とても心強いわ」
「手伝えることは限られてますけどね」
私はニコッと微笑んだ。
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