134 / 331
また、乙女ゲームですか
第二十二話 どの国にもいるようですね
しおりを挟む馬鹿男が怒りの形相でこっちに来ようとして来ます。それも声を荒らげながら。
関わりを持つつもりは端からないので、ここは逃げましょう。馬鹿に関わる時間程無駄なモノはないですからね。幸い、今いる場所は二階なので全然平気ですわ。リーファに目配せしてから窓を開け飛び降ります。リーファも。淑女としてはあるまじき行為ですが、馬鹿男に関わるよりは遥かにマシですわ。一種の自己防衛ですね。
逃げられた馬鹿男が、窓から私の罵詈雑言を真っ赤な顔で叫んでますね。余程悔しいのでしょう。私の知ったことではありませんが。この行為が、後に自分の身にどのように返ってくるのか、今から楽しみですわ。
「……ほんとに、五月蠅いですわ」
あの馬鹿男、まだ怒鳴ってますわね。そういえば、何度か見た顔ですね。思い出しましたわ。シスターの隣にいたあの男ですか。隣を伺えば。
リーファ? その顔。久し振りにキレてますね。怖いですわ。……ということは、あの馬鹿男がジーナ様の婚約者のクリーク様ですか……。あれで、公爵家の令息? コンフォート皇国にも似た馬鹿はいましたが、セフィーロ王国にもいたのですね。
「言いたいことは分かるわ。
私もそこまで酷いとは、さすがに思わなかったわよ。最低限の分別があると思ってた。それさえなかったわね。
アレが公爵家の令息なんて、セフィーロの恥さらしが!!」
言葉遣いが一段と悪くなってますわよ。
「……一つ訊きたいのだけどいいかしら?」
「何?」
声が低いです。それに、眉間に皺が寄ったままです。
「彼、セフィーロ王国の人間ですよね。確か……公爵令息だったと記憶していますが、ましてや、ジーナ様の婚約者なのでは?
リーファって、王弟殿下の娘でしたよね。それも、次期王妃になられる方ですよね。私の記憶では、次期王妃って国母だったと思うのですが。なのに、アレですか?」
私に対する態度も最悪を通り越していますが、自国の次期王妃に対する態度も最悪を通り越しています。これが王宮内でしたら、最悪極刑もあったでしょう。なんせ、怒鳴って掴み掛かりそうな勢いでしたもの。実際、あの場に残っていたらそうされたでしょう。
「セリア。ごめんなさい。母国の馬鹿がとんでもないことを。改めて、セフィーロ王国から謝罪させてもらうわ」
頭を下げられました。リーファが悪いわけではないんですけどね。これくらいのことで、リーファとの、いえ、セフィーロ王国との関係は揺らぐことはありませんが、謝罪は受け取りましたわ。
「分かりましたわ。そこはリーファにお任せしますわ。……それにしても……」
溜め息が出ますわ。
自国の次期王妃と同盟国の皇女に対してあの態度とは。
「前々から馬鹿とは思ってたけど、あれ程馬鹿とは思わなかったわ。ほんと恥ずかしい。あんな奴が、同じ公爵家なんて!!」
「まぁ、どの国でも、馬鹿はいるってことでしょうね。
心配なのは、ジーナ様ですわ。おそらくこの一見で、婚約は白紙に戻されるでしょうね」
となれば、ジーナ様の計画が完全に頓挫しますわね。白い結婚を覚悟してまで、叶えようとした願いでしたのに。
「それで良かったのよ。あのクズにジーナは勿体ないわ」
「私もそう思いますわ。後三年あるのです。正々堂々研究を続けられるよう、手をうつことは出来ますわ。勿論、私は応援しますよ」
頑張る人は大好きですわ。
「セリアが味方になってくれたら、とても心強いわ」
「手伝えることは限られてますけどね」
私はニコッと微笑んだ。
20
お気に入りに追加
7,467
あなたにおすすめの小説
愛想を尽かした女と尽かされた男
火野村志紀
恋愛
※全16話となります。
「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
何を間違った?【完結済】
maruko
恋愛
私は長年の婚約者に婚約破棄を言い渡す。
彼女とは1年前から連絡が途絶えてしまっていた。
今真実を聞いて⋯⋯。
愚かな私の後悔の話
※作者の妄想の産物です
他サイトでも投稿しております
王命を忘れた恋
須木 水夏
恋愛
『君はあの子よりも強いから』
そう言って貴方は私を見ることなく、この関係性を終わらせた。
強くいなければ、貴方のそばにいれなかったのに?貴方のそばにいる為に強くいたのに?
そんな痛む心を隠し。ユリアーナはただ静かに微笑むと、承知を告げた。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。