133 / 342
また、乙女ゲームですか
第二十一話 この世界は現実なのに
しおりを挟む「セリア。聞いた?」
今日は朝から会議があったので、昼からの登校です。教室のドアを開けたら、開口一番、リーファは満面な笑みを浮かべながら訊いてきました。とても楽しそうですわ。
「こんにちは、リーファ。それで、何をです?」
反対にそう尋ねると、リーファはニンマリと笑います。淑女の仮面どっかに忘れて来ましたね。別に構いませんけど。仮面を被ると、リーファは完璧な淑女に大変身しますからね。その変わりようは、最早芸術の域に達してますわ。
「またまた~~とぼけちゃって。研究棟の件よ」
「ああ……その件ですか……研究棟に忍び込もうとなさったようですね。警備員に捕まって、今も監視が付く中、一室に閉じ込められているとか。取り巻き連中とは別に」
スミスが告げた通り、シスターはクラン君を追っ掛けて研究棟に来たようです。でも、研究棟には入れなかった。当然ですわ。研究棟に入れるのは、教室を借りている契約者の私たちと契約者の関係者だけですわ。
運良く忍び込めたとしても、大概の研究室は防犯をしっかりしていますからね。当然私もですわ。悪意のある方は入れないようにしてますからね。防音も。
「このまま退学にはなれば楽なのに」
殆ど聞こえないくらいの声でリーファは呟きます。私も心底そう思いますが、現状はそうならないでしょう。
「それは難しそうですわね」
自然と私の声も小さくなります。
「どうして?」
「忍び込もうとしていた事になってはいますが、実状は突撃してきたと言った方が正しいですからね。
それに、理由が理由ですし。研究や発明品を盗もうとさしたわけではなさそうですから。厳重注意と停学三日あたりが妥当と思いますわ」
「あ~~理由って、クラン君の事でしょ。どこをどう見たら、そう思うの?」
「私にそう訊かれても分かりませんわ。そもそも、今回の騒動の切っ掛けは、お菓子を買いに頼んだことですから」
うんざりした声音で答えます。
監視員にも、教員にも、シスターは私が悪いように言ってるようですわ。クラン君が虐げられてるって。それを注意するために会いに来たと。ほんと迷惑ですわ。あの騒動の後、クラン君は呼び出され事情を聞かれましたし。私も聞かれましたわ。
「お疲れ様。にしても、クラン君って、シスターみたいな花畑女にやたらモテるよね」
リーファの素直な返答に、もう苦笑するしかありませんわ。
「それ、クラン君の前で言ったら駄目ですよ。本人、とても気にしてるんですから」
それも可哀想なくらいに。
「言わないわよ」
頬を膨らますリーファは可愛いですわね。その頬突きたくなりますわ。しませんけど。
「……どうも、花畑女には、クラン君のような平民の従者、それも顔が良くて出来た青年は、とても魅力的に映るようですわ。従者として当たり前の仕事でも、虐げられてるように映るみたいですよ」
大きな溜め息を吐きながら言う私に、リーファはポツリと「この世界は現実なのに……」と呟きました。
「それに気付くなら、こんなことは仕出かしませんわ」
「それもそうね」
今度は二人で溜め息を吐きます。その時でした。
「おい!! お前か!?」
大声で騒ぐ馬鹿が現れたのは。
これ以上馬鹿に付き合うつもりはないので無視しましょう。馬鹿を見たリーファの目がとても怖いですわ。まぁ、そうなりますよね。
30
お気に入りに追加
7,462
あなたにおすすめの小説
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。

婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

妹のことを長年、放置していた両親があっさりと勘当したことには理由があったようですが、両親の思惑とは違う方に進んだようです
珠宮さくら
恋愛
シェイラは、妹のわがままに振り回される日々を送っていた。そんな妹を長年、放置していた両親があっさりと妹を勘当したことを不思議に思っていたら、ちゃんと理由があったようだ。
※全3話。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です

婚約者が、私より従妹のことを信用しきっていたので、婚約破棄して譲ることにしました。どうですか?ハズレだったでしょう?
珠宮さくら
恋愛
婚約者が、従妹の言葉を信用しきっていて、婚約破棄することになった。
だが、彼は身をもって知ることとになる。自分が選んだ女の方が、とんでもないハズレだったことを。
全2話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。