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また、乙女ゲームですか
第十六話 少し面白くありませんね
しおりを挟む「それで、どうしてジーナ嬢は白い結婚を望んだんだ?」
シオン様が訊いてきます。あっ、勿論、シオン様の膝の上でですよ。定位置ですね。もう慣れましたわ。
「魔獣の研究をしたいためですよ」
「いくらでも出来るだろ?」
まぁ確かに、ジーナ様が望むなら最高の環境が用意されるでしょうね。王宮の一室かどこかの研究所の一室か。家族仲は宜しいようですから。
「……そうですわね。研究は出来ますね。でもそれでは、趣味の範囲で終わるでしょう。何故なら、理解されてませんもの。理解されないということは、必要とされてないことと同じですわ。
討伐よりも共存寄りですから、致し方ない面もありますが。
そんな環境の中で使われるお金は税金ですし。王女として、研究者として許せないのでしょう」
シスターが去った後、ジーナ様の本音を改めてリーファと一緒に聞きました。そこで知ったのです。ジーナ様の本気を。その胸に抱く熱い思いを。
「それは……」
言葉に詰まるシオン様。
「ジーナ様は本気で取り組んでいきたいのです。自分の一生を掛けて。だからこそ、趣味で終わらせたくはなかった。人としての幸せを、全て投げ捨てても貫き通したいのですわ」
「そこまでして、研究したいのか……」
複雑な表情ですね、シオン様。
でも、私は少し分かりますわ。私も似た所がありましたからね。スミール様と婚約したのは、スバリお金でしたし。今となっては、懐かしい思い出ですけどね。シオン様の前でスミール様の名前は出しませんよ。私も学習してますから。
「ええ。だから、白い結婚を望んだのです。
シスターの件もそうですが、クルーク様は婚約者の顔を知らないクズですからね、色々弱みを掴めそうでしょ。それを利用して領地に引っ込むのが、ジーナ様の目的ですわ。勿論、多額のお金と共に。それを元手に研究所を創立させる。
そして、いずれ出来るだろう愛人とその子を認める代わりに、研究の邪魔をさせない。
十五歳でそれを計画し、実行に移す。大した信念だと思いませんか?」
尊敬に価する人物だと思いますわ。どんな形であっても、信念を持った人はとても強いのです。
「ああ。ジーナ嬢は強いな。とても強い。どことなく、セリアに似ているな」
あら、シオン様が女性を褒めるのは珍しいですわね。初めてではありませんか。少し面白くありませんね。
「……どうした?」
黙り込んだ私を心配したシオン様は、私の顎を掴み上を向かせます。シオン様の瞳に私の顔が映っています。
「別になんでもありませんわ」
顔を背けたくても出来ません。出来るのは視線を外すことぐらいです。
「何でもなくないだろ?」
言うまで離してくれそうにありませんね。そんなに見詰められたら、顔が熱くなりますわ。心臓が今にも止まりそうな程、働いてますわ。
「……シオン様が……」
「俺が?」
甘い声で囁かないで下さい。
「…………初めて女性を褒めたんです」
そう答えたら、一瞬驚いた後、シオン様は満面な笑みを浮かべながら顔を近付けてきます。
「嫉妬か。とても嬉しい」
だから、そんなに甘い声で囁かないで下さいませ。
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