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また、乙女ゲームですか

第十四話 懐かれてしまいましたわ

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「昨日は、申し訳ありませんでした」

 深々と頭を下げているのはジーナ様です。リーファに呼ばれ教室を出た途端、ジーナ様に謝罪されましたの。

「謝る必要はありませんわ、ジーナ様。私も知らず知らずのうちに、ジーナ様を傷付けることを言ってしまったのでしょう。私の方こそゴメンなさいね」

「いえっ、違います。セリアお姉様は少しも悪くはありませんわ」

 そう……ならいいのですが。ん……? 今、変な単語が聞こえてきたような……きっと、聞き間違いですよね。

「…………聞き間違いじゃないわよ、セリア」

 リーファがなんとも言えない顔をしながら訂正します。聞き間違いってことにしておきたかったのに。私、ジーナ様に懐かれるような事言ったかしら。全く、記憶にないんですが。

「…………お姉様……?」

 口元を引き攣らせながら尋ねます。ほんとは尋ねたくなかったのですが、そうはいきませんよね。

「泣いたのは、感動したからだって」

 感動ですか……尚更、分かりませんね。

「初めてだったんです。私の考えを頭から馬鹿にせず、真剣に答え、変わらぬ態度で聞いて下さったから……」

 だから、感動して泣いてしまったと。

「真剣な人間に対して、真剣に答えるのは当たり前のことですわ」

「セリア……また、泣かそうとしてる」

 リーファはジーナ様を抱き締めヨシヨシとあやす。

 それは完全に濡衣ですわ。



 という訳で、仕切り直してお茶会開始です。今日は泣かないで下さいね。

「……いつも私は異端者と言われてきました。家族は私の考えを馬鹿にはしません。認めてはくれませんが……。
 魔物は殺すモノ。殺して当たり前のモノと。セリアお姉様もそうだと思っていたのです。でも、違いました。
 あんな風に言われたのは初めてでした」

 もう泣きそうですね。なし崩し的に、私の呼び名はお姉様になってますね。まぁ構いませんが。だってここで否定したら、泣かれますからね。

 それに、正直言えば、その呼び名嫌いではありませんわ。私をお姉様って呼ぶ方っていませんもの。なんか、新鮮ですわ。

「まぁ、私の考えも少数派ですからね」

 自分でもよく分かってますわ。なので、あまり口にはしません。どこで誰が聞いてるか分かりませんもの。この会話も聞かれたら困るので、防音壁を張ってますし。

「確かにそうよね。魔物は殺して当たり前が通説だからね。例えそれが幼獣でも」

 リーファの台詞に私は頷く。

「人を害する可能性がある以上、可哀想ですが仕方ありませんわ。ただ平気でやるか、そうでないかの差ですけどね」

「その差が大きいのよ」

「そうかもしれませんわね。
 ……それで、シスターの件ですけど、お引き受け下さるかしら?」

 話が進まないので、多少強引ですが軌道修正致しましたわ。

「…………その件でしたら、すみませんが協力は出来ませんわ。したいのは山々なんですけど」

 あら、この反応は意外でしたね。断られましたわ。てっきりお姉様と慕ってこられるから、受けて下さると考えていましたのに。

「理由をお伺いして宜しいかしら?」

「私の夢は、田舎の領地で思いっきり魔獣の研究をしたいのです。白い結婚になったとしても。寧ろ、それを狙っています」

 白い結婚ね……まさか、まだ成人していない方から、その単語が出てくるとは思いもしませんでしたわ。そこまで思い悩んでいたということですか。

「ジーン様。詳しく教えて下さらないかしら」

 他国の者が口を挟むことではないと思ったのですが、ジーン様を見ているとほっとけなくなりましたわ。

 リーファを伺えば、彼女も驚いていました。どうやら知らなかったようですね。尚更気になりますわ。
 
 
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