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また、乙女ゲームですか
第十三話 泣かしてしまいましたわ
しおりを挟む「お待たせ致しましたわ。セリア皇女殿下。私、ジーナ=ユリフォードと申します」
なるほど。あくまでも、伯爵令嬢の体でいくつもりですね。別に構いませんわ。特に問題はありませんもの。
「こんにちは。こちらこそ、忙しい中お呼びしてしまって、ごめんなさいね。ジーナ様。どうぞ。お座りになって。ここのパンケーキは美味しいんですよ」
ニコッと微笑みながら薦めます。
「はい。リーファ様からよく聞いていますわ」
この子、頭がキレますわね。それとなく匂わせてきましたわ。ならば、話は早いですね。
「そうですか。ならば、お願い聞いて頂けるかしら?」
「その件でしたら、お断りしますわ」
断りますか。面白いですね。リーファは慌ててますけど、特に気にしていませんわ。
「理由をお伺いして宜しいですか?」
「……私、魔獣に興味がありますの」
「魔獣にですか……?」
まさか、そんな返答が返ってくるとは思いませんでしたわ。彼女のいう魔獣の興味とは、私が知るものとは少し違うようですわね。
「おかしいでしょうか?
セリア皇女殿下は魔獣を狩る立場ですものね。謂わば魔獣の敵。さしずめ私は、異端者でしょうか」
喧嘩腰ですわね。この様子では、散々異端者と言われてきたようですわね。
「何、セリアに喧嘩売ってるのよ、この子は。セリア、ごめんね。三男が魔法具馬鹿なら、この子は魔獣馬鹿なのよ」
リーファはポカリとジーナ様の頭を叩くと私に謝ります。
それにしても、魔獣馬鹿ですか……まぁ、ある意味私も魔獣馬鹿になりますよね。
「構いませんわ。
そうですね。私は魔獣を狩る者。魔獣の敵ですわね。でも、貴女様のことを異端者とは思ってはいませんわ」
「…………嘘ですわ」
ポツリとジーナ様は呟きます。
「あら、どうして嘘だと思うのです?」
「だって、魔獣や魔物を好んで狩りに行ってるではありませんか!?」
「好んでは行っておりませんわよ。ストレス解消する時はありますけど」
「同じことじゃない!! 余計、質が悪いわ」
「ジーナ!!」
リーファがジーナ様を窘めます。その一言が更に悪化させました。
「同じではありませんわ。
私は民を護るために、ビーストを起こさせないために、魔の森に入り魔物を討伐しています。趣味でしているわけではありませんわ」
「えっ、違うの?」
隣でそんなことをほざいているリーファを睨み付けます。
「でも、ストレス解消をしてるって言ったではありませんか!?」
「確かに言いましたね。
私も人間ですからね。ストレスはありますわ。ただ……ストレスを解消する目的だけで、魔の森に潜ったりはしませんよ。あくまで、仕事に赴いた時に自然と力が入るだけですわ。それすら、貴女様から見れば罪でしょうか?」
「それは……」
言葉が続かないジーナ様。
「私は皇女です。戦う術を知らない民を護る義務があります。何故なら、彼らが払う税収で、我々貴族は生活をおくれているのですよ。当然ではありませんか。
故に、ほんの少しでも人間を民を傷付ける可能性があるのなら、私は躊躇うことなく殺しますわ。
でも同時に、魔物たちの冥福も祈ります。おかしいですか? だって、どんな理由があるにせよ、命を奪う行為にはかわりませんわ。魔物から見れば、私は極悪非道な殺戮者でしょうね」
自嘲気味な笑みを口元に浮かべながら話す私を、リーファもジーナ様は呆れることなく黙って聞いてくれました。そんなに驚くような話をしましたか?
「……これは、あくまで私個人の希望ですが……もし、ビーストの原因が判明し、魔物固有の習性が少しでも周知されれば、一方的に殺す関係は緩和されるかもしれませんね」
夢物語かもしれませんが。さすがにジーナ様の前で、そこまでは言えませんでした。
扇で顔を隠し黙り込んでいるジーナ様。どうやら、嫌われてしまったようですね。
リーファが心配して横から覗き込んでいます。それ、マナーとしてはアウトですよ。
「ジーナ!! どうしたの!? 何泣いてるの!?」
えっ!? 私、ジーナ様を泣かしてしまったようです。そこまで酷いことを話したかしら。でも私のせいですよね。慌てて謝罪しましたわ。
当然、お茶会は終了になりました。
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