婚約破棄ですか。別に構いませんよ

井藤 美樹

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また、乙女ゲームですか

第十二話 持つべきものは行動力のある親友ですね

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「ーーと言う訳で、リーファの知り合いで信用出来る方はいませんか? 出来れば、一年生の方がよいのですが」

 リーファに相談するとしても、全ては話していません。

 話したのは、シスターがどうやら【落ち人】であるらしいことと、それに聖教会が大きく関わっていることです。魔術師の命を犠牲にして召喚された旨はそれとなく告げましたわ。セフィーロ王国は友好国であり同盟国ですからね。近所付き合いはとても大切ですわ。

 そもそも、この学園が【落ち人】が集まるようになっているなんて言えるわけないでしょ。敏いリーファなら、薄々気付いているかもしれませんが。ましてや、そこに創世神様が関わっていることなんて、尚更話せませんわ。

「魔術師の件に関してはひとまず置いとくとして……シスターの動きは気になるわね」

「ええ。それも、高位貴族ばかり。以前の方がたのような単純な思考で手を出されているのなら、対処の仕様も簡単なのですが……」

 潰せばいいだけですから。自分から墓穴を掘る方が殆どでしたけどね。

 今回は少し違うかもしれないと匂わせます。騙してはいませんよ。その可能性もまだ残っていますからね。

 少し考えてから、リーファが口を開きます。

「…………そうね。丁度いい人がいるわ。うってつけよ!」

 リーファの顔がパァっと明るくなります。やっぱり、リーファに相談して正解でしたね。

「その方はどなたですの?」

「私の従妹よ。そして、シスターの取り巻き化している男の婚約者。うってつけじゃない。彼女なら、調べてもおかしくはないでしょ。それに、彼女のことだから調べ始めてると思うのよね」

 さすが、リーファの従妹ですわね。普通の令嬢なら、この短期間でそこまで切り替えられませんわ。婚約破棄をするにしてもしないとしても、弱味を持つってことは、これから先の人生に有利に立てますからね。出さなくても。

「お名前を伺ってもいいかしら?」

「ええ。ジーナ=セフィーロ様ですわ」

 意外な名前が上がりましたわ。でも、王女殿下が入学したとは聞いておりませんでしたが。漏れていたのでしょうか? いえ、それはありえませんわ。

「……セフィーロ? 王女殿下ですか? 今年の新入生の中に王女殿下が入学したとは聞いてはいませんが」

「表向きは伯爵令嬢で入学してるからね」

 なるほど。伯爵令嬢としての入学なら、私が知らなくてもおかしくはありませんね。

 それにしても、徹底してますわね。何か事情があるにせよ、裏から王族が入学することを学園に知らせないとは。

「似てるのよ、セリアと」

「私にですか?」

「ええ。社交の場には一切出ていないの。元々苦手って言ってるしね。だから、高位貴族の令嬢、令息も顔を知らない。だから、こんな手が打てるのよね」

 中々の行動派ですわね。

「婚約者を見極めたいから、わざと伯爵令嬢として入学したと……でも、お相手は相手が王女殿下とは知らないのですか?」

 知っていたら、王女殿下のしたことは意味がありませんからね。

「当然、知らないわ。資質を見るために、親戚筋の家の伯爵令嬢として婚約したから。まぁ親は知ってるけどね」

 でしょうね。

「で、お相手の方は?」

「ロフィー=クルーク様。クルーク公爵家の長男よ。金髪、青い目の。ほら、シスターを見掛けた時、隣にいた男よ」

 あ~~よく分かりましたわ。シスターがお母様に意味不明なイチャモンを吹っ掛けて来た時に、シスターの隣にいましたね。そうですか、彼が……。

「リーファ。ジーナ様にお願いしても宜しいでしょうか?」

 ニコッと微笑みながらお願いします。

「いいわよ。今から呼ぶわね」

 私に負けないくらい満面な笑みを浮べたリーファは、速攻、侍女に命じました。

 今からですか!? さすがリーファですわ。持つべきものは行動力のある親友ですわね。



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