上 下
122 / 341
また、乙女ゲームですか

第十話 試してみる価値ありますね

しおりを挟む


 朝から、シオン様の機嫌があまり宜しくありません。

 敢えて突っ込みはしませんが、不機嫌さの理由は分かります。分かりましたわと、言い換えた方がいいですね。シオン様は敢えて隠そうとはしていませんし。

 私としては、さして大したことではないのですが、シオン様にはとても大事なことのようです。仕方ありませんよね。竜族の性といいますか……。

 ここは気付かない振りを致しましょう。それが一番無難な気がします。

 さて、妙な緊張感の中で口を開いたのは、私のお姉様でも十分通用するお母様でした。お母様も気付いている筈なのに、完全にスルーです。

「セリア。一週間程家をあけるわ。ちょっと調べに行って来るから」

 途端に、不機嫌な空気が一掃しましたわ。内心、溜め息ものです。

「聖教会の本部ですか?」

 シオン様を無視して、サクサクと話を続けます。

「ええ」

「あのシスターが【落ち人】なのは間違いないわ。そして、私たちとは全く違う方法でこの世界に来た。それも間違いないわ。事故でもなく、正式の手順でもない。
 大勢の命を対価にしてまで【落ち人】を召喚した理由。それがどうしても気になるのよ。何か企んでる気がするのよね……」

 確かに、そうですわね。私でもそう考えますわ。

「……何か企んでいなければ、大勢の魔術師の命を対価にしてまで召喚しませんわね」

 何か目的があるからこそ、大勢の魔術師の命を犠牲にした。その目的が何なのか、知る必要はあるでしょう。なんせ、当事者の【落ち人】が我が国にわざわざ留学しに来たのですから。忌み嫌っている者たちがいるこちら側にですよ。まぁ、自然に集まるようにされてるとはいえ、気になりますわ。

 他国に下手に関わるのは良しとはしませんが、今回は特別ですね。だけど、

「大丈夫ですか?」

「危なくなったら逃げるわよ」

 その言葉信用出来ませんね。

「お母様。これを。お母様なら、大丈夫でしょう。必ず夜、定期連絡して下さいませ」

 そうお願いすると、お母様はおかしそうに笑い出しました。心配してるのに失礼です。

「ご、ごめんって。定期連絡っていう言い方がね~~」

「敵地に潜入するんです。言い方は間違ってはいませんわ」

「まぁ、そうだけどね」

「それで、お父様はどうします?」

「行く前に寄るわ」

「是非、そうして下さいませ」

 バレた時にお父様から仕返しとばかりに無茶振りされますからね。私の考えてることが分かったお母様は苦笑いしています。私もですわ。

「そうそう。セリアに宿題。シスターの攻略相手を調べとく事」

「攻略相手ですか……?」

 戸惑う私に、満面な笑みを浮かべながらお母様は教えてくれました。理由を。

「攻略相手を把握することは、乙女ゲームを攻略するのに一番重要なことなの。恋愛をする必要はないわ。裏から操ればいいのよ。だって、この世界は乙女ゲームに似てても、現実世界なんだから」

 確かに……裏から操れば、簡単に排除することも出来ますわね。

「因みに、排除することを、乙女ゲーム用語で【ざまぁ】って言うのよ。最後の最後に、その台詞を言ってみなさい。とてもいい反応をしてくれるから」

 なるほど。それは試してみる価値ありますね。



☆☆☆

 第一回次世代ファンタジーカップに参加しています。

 タイトルは〈何もかも全てを奪われた元勇者王子、今度は俺が貴様らから全て奪ってやる〉です。

 序章終了しました。

 明日から第一章開始です。

 いよいよ復讐が始まります(。•̀ᴗ-)✧

 楽しんで頂けたら嬉しいですm(_ _)m


しおりを挟む
感想 774

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

我慢するだけの日々はもう終わりにします

風見ゆうみ
恋愛
「レンウィル公爵も素敵だけれど、あなたの婚約者も素敵ね」伯爵の爵位を持つ父の後妻の連れ子であるロザンヌは、私、アリカ・ルージーの婚約者シーロンをうっとりとした目で見つめて言った――。 学園でのパーティーに出席した際、シーロンからパーティー会場の入口で「今日はロザンヌと出席するから、君は1人で中に入ってほしい」と言われた挙げ句、ロザンヌからは「あなたにはお似合いの相手を用意しておいた」と言われ、複数人の男子生徒にどこかへ連れ去られそうになってしまう。 そんな私を助けてくれたのは、ロザンヌが想いを寄せている相手、若き公爵ギルバート・レンウィルだった。 ※本編完結しましたが、番外編を更新中です。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※独特の世界観です。 ※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

最後にひとつだけお願いしてもよろしいでしょうか

鳳ナナ
恋愛
第二王子カイルの婚約者、公爵令嬢スカーレットは舞踏会の最中突然婚約破棄を言い渡される。 王子が溺愛する見知らぬ男爵令嬢テレネッツァに嫌がらせをしたと言いがかりを付けられた上、 大勢の取り巻きに糾弾され、すべての罪を被れとまで言われた彼女は、ついに我慢することをやめた。 「この場を去る前に、最後に一つだけお願いしてもよろしいでしょうか」 乱れ飛ぶ罵声、弾け飛ぶイケメン── 手のひらはドリルのように回転し、舞踏会は血に染まった。

【完結】幼い頃から婚約を誓っていた伯爵に婚約破棄されましたが、数年後に驚くべき事実が発覚したので会いに行こうと思います

菊池 快晴
恋愛
令嬢メアリーは、幼い頃から将来を誓い合ったゼイン伯爵に婚約破棄される。 その隣には見知らぬ女性が立っていた。 二人は傍から見ても仲睦まじいカップルだった。 両家の挨拶を終えて、幸せな結婚前パーティで、その出来事は起こった。 メアリーは彼との出会いを思い返しながら打ちひしがれる。 数年後、心の傷がようやく癒えた頃、メアリーの前に、謎の女性が現れる。 彼女の口から発せられた言葉は、ゼインのとんでもない事実だった――。 ※ハッピーエンド&純愛 他サイトでも掲載しております。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

役立たずの私はいなくなります。どうぞお幸せに

Na20
恋愛
夫にも息子にも義母にも役立たずと言われる私。 それなら私はいなくなってもいいですよね? どうぞみなさんお幸せに。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。