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また、乙女ゲームですか
第十話 試してみる価値ありますね
しおりを挟む朝から、シオン様の機嫌があまり宜しくありません。
敢えて突っ込みはしませんが、不機嫌さの理由は分かります。分かりましたわと、言い換えた方がいいですね。シオン様は敢えて隠そうとはしていませんし。
私としては、さして大したことではないのですが、シオン様にはとても大事なことのようです。仕方ありませんよね。竜族の性といいますか……。
ここは気付かない振りを致しましょう。それが一番無難な気がします。
さて、妙な緊張感の中で口を開いたのは、私のお姉様でも十分通用するお母様でした。お母様も気付いている筈なのに、完全にスルーです。
「セリア。一週間程家をあけるわ。ちょっと調べに行って来るから」
途端に、不機嫌な空気が一掃しましたわ。内心、溜め息ものです。
「聖教会の本部ですか?」
シオン様を無視して、サクサクと話を続けます。
「ええ」
「あのシスターが【落ち人】なのは間違いないわ。そして、私たちとは全く違う方法でこの世界に来た。それも間違いないわ。事故でもなく、正式の手順でもない。
大勢の命を対価にしてまで【落ち人】を召喚した理由。それがどうしても気になるのよ。何か企んでる気がするのよね……」
確かに、そうですわね。私でもそう考えますわ。
「……何か企んでいなければ、大勢の魔術師の命を対価にしてまで召喚しませんわね」
何か目的があるからこそ、大勢の魔術師の命を犠牲にした。その目的が何なのか、知る必要はあるでしょう。なんせ、当事者の【落ち人】が我が国にわざわざ留学しに来たのですから。忌み嫌っている者たちがいるこちら側にですよ。まぁ、自然に集まるようにされてるとはいえ、気になりますわ。
他国に下手に関わるのは良しとはしませんが、今回は特別ですね。だけど、
「大丈夫ですか?」
「危なくなったら逃げるわよ」
その言葉信用出来ませんね。
「お母様。これを。お母様なら、大丈夫でしょう。必ず夜、定期連絡して下さいませ」
そうお願いすると、お母様はおかしそうに笑い出しました。心配してるのに失礼です。
「ご、ごめんって。定期連絡っていう言い方がね~~」
「敵地に潜入するんです。言い方は間違ってはいませんわ」
「まぁ、そうだけどね」
「それで、お父様はどうします?」
「行く前に寄るわ」
「是非、そうして下さいませ」
バレた時にお父様から仕返しとばかりに無茶振りされますからね。私の考えてることが分かったお母様は苦笑いしています。私もですわ。
「そうそう。セリアに宿題。シスターの攻略相手を調べとく事」
「攻略相手ですか……?」
戸惑う私に、満面な笑みを浮かべながらお母様は教えてくれました。理由を。
「攻略相手を把握することは、乙女ゲームを攻略するのに一番重要なことなの。恋愛をする必要はないわ。裏から操ればいいのよ。だって、この世界は乙女ゲームに似てても、現実世界なんだから」
確かに……裏から操れば、簡単に排除することも出来ますわね。
「因みに、排除することを、乙女ゲーム用語で【ざまぁ】って言うのよ。最後の最後に、その台詞を言ってみなさい。とてもいい反応をしてくれるから」
なるほど。それは試してみる価値ありますね。
☆☆☆
第一回次世代ファンタジーカップに参加しています。
タイトルは〈何もかも全てを奪われた元勇者王子、今度は俺が貴様らから全て奪ってやる〉です。
序章終了しました。
明日から第一章開始です。
いよいよ復讐が始まります(。•̀ᴗ-)✧
楽しんで頂けたら嬉しいですm(_ _)m
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