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また、乙女ゲームですか

第八話 だから離れる道を選んだのでしょう

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 お祖父様といい、相変わらず、人の心を勝手に読みますね……お母様。その事について、今は追求しませんわ。代わりに教えてもらいますよ。

「手伝って下さるのなら、誰がこんな馬鹿げたことを起こしたのか教えて下さいます?」

「ええ勿論。この世界の創世神よ」

「…………はい?」

 今、何ておっしゃいました?

「だから、創世神よ。別名、誘拐犯とも言うわね」

「…………」

 聞き間違いであって欲しかった。そうですか……創世神様ですか。私は創世神様に喧嘩を売ったんですね。聞くんじゃなかった。後悔しても遅いですわね。

「そんなに、深刻に考えなくといっても、創世神が特別に何かした訳じゃないわよ。あくまで、この世界のことを教えただけ。だとしても、セリアにとったら、到底許せることではないけどね」

「つまり、私は創世神様の遊戯に巻き込まれたという訳ですか」

 頭痛がしてきましたわ。

「遊戯というより趣味ね」

 尚悪いですわ。

「…………何かしらの対策を打ちたくても、創世神様相手ではどうしようもありませんし、この件はこれまでとしましょう」

 お母様はやる気満々のご様子でしたが。実際、そう口にすると物凄く不満気でした。

 当然でしょ。私も命が欲しいですよ。大切なシオン様もいますし。シオン様に何かあったら、お母様でも許しませんよ。

「分かったわよ」

 宜しいですわ。渋々ですが、納得して頂けたようでよかったですわ。それともう一つ、お母様に訊いておきたいことがありましたの。

「話は変わりますが。……お母様はご存知なのではありませんか? 聖教会を創立した方を」

 そう尋ねた途端、お母様の機嫌が悪くなりました。嫌悪感丸出しです。露骨に嫌な顔をしてますわね。

「知ってるわよ」

「ということは、その方も【落ち人】ですか? もしそうなら、普通にその辺を闊歩しててもおかしくはありませんよね」

 なんせ、創世神様が直に連れて来た方々は、永遠に近い命を持ってらっしゃいますからね。

「この辺を闊歩してるとは思わないけどね。私とアイツ、そり悪いから。根本的に何もかも合わないのよ」

 何か分かる気がしますわ。聖教会を創立しようとした時点で、お母様とは正反対ですもの。 

「アイツは、自分を選ばれた人間だと思ってる。この世界に連れて来られたのは運命。元いた世界での生活は魂の修行だったと抜かしていたわ。
 自ら、創世神の使徒だと言ってるしね」

 それはまた凄い人ですね。お母様と根本的に合いませんわ。なんせお母様は、創世神様を誘拐犯って言ってますしね。そりゃあ、合いませんわ。

「そして最悪なことに、それを私にも強要してきたのよ。しつこい程にね。当然無視したわよ。うざいから。するとアイツは、私を邪神の使徒だと宣言したのよ。大勢の人の前で」

「何ですか!? それは!!」

 ありえませんわ。どれほど自分が偉いって思ってらっしゃるの。こんなに優しいお母様をよくも!!

「アイツは魔物を完全悪だと考えてる。私も魔物を狩ることに反対なんてしないわ。狩らなきゃ、自分の身が危ないんだから。
 でもね、魔物に直接的にせよ、間接的に関わるにせよ、関わった者全員を穢れた人間として差別するのだけは許せなかった。
 穢れた人間を隔離すると言って、スラム街に住まわせるのも許せなかった。
 同じ街に生活する民なのに、生活区域を制限するのも許せなかった。自分たちは何食わない顔で、その恩恵を受けていながらね。
 だから私は、彼らを逃がすことにしたの。山脈を超えたこちら側にね。中には、残った者もいたけどね」

 昔を思い出したのか、少し寂しそうに笑います。

 お母様は本当に優しい方です。口は悪いし、少しだらしないところもありますが。人を憎み切れない、嫌いになり切れない方です。だから、敢えて離れる道を選んだのでしょう。

 

☆☆☆

【第一回次世代ファンタジーカップ】に参加してます。

 タイトルは〈何もかも全てを奪われた元勇者王子、今度は俺が貴様らから全て奪ってやる〉です。

 一応、復讐物になってます。

 楽しんで頂けたら嬉しいですm(_ _)m


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