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また、乙女ゲームですか
第五話 会わせる手間は省けましたけど
しおりを挟む魔力で作った鳥を空に放ちます。これで、お母様と連絡がとれる筈。
魔鳥は上空を旋回します。
ん……? ……あれ? どうして、空に放った鳥がそのまま学園に戻ってくるのかしら? もしかして、お母様、学園にいるの!?
「取り敢えず、後を追いましょう」
考えるのは後ですわ。
あっちの方角はカフェですね。リーファとよく行っています。パンケーキが特に美味しいんですの。私は柔らかい方より固い方が好きなので。口に合いますわ。
「……スミス。もしかして、お母様、パンケーキを食べてるんじゃないかしら」
前から食べでみたいって言ってましたもの。それも制服を着て。聞いた時は、引きましたけどね。あのお母様ならありえますわ。
「もしそうだとしても、私は驚きません」
お母様の非常識は万国共通ですからね。それぐらい、私たちの間では有名ってことですわ。
私が放った魔鳥はカフェの上を旋回しています。やはり、カフェにいたようですね。というか、小さな人集りが出来ているのは、どうしてでしょう。嫌な予感しかしませんわ。
「…………あの中に入りたくありませんわ」
このまま踵を返して、知らなかったことしたいです。でも無理ですよね。
「行くしかありませんね……」
大きな溜め息を吐いてから、私は人集りに近付きます。
自然と会話が聞こえてきました。といっても、喋ってるのはお母様ではありません。どいたやら、一方的に女生徒が喋ってるようです。
もしかして、お母様に因縁をつけています?
「黒い髪に黒い瞳。貴女、何のつもりでその格好を? 聖人様の真似をして、聖人様になったつもりなの!? 聖人様を愚弄しないで頂きたいですわ!!」
本当に因縁でしたわ。ましてや、因縁をつけているのが、聖教会のシスターって……頭が痛いですわ。まぁ、会わせる手間が省けましたのは助かりましたけど。取り敢えず、この場を治めましょうか。学園に損害が出たら困りますから。
「何の騒ぎです」
人集りに向かって問い掛けます。興奮して聞こえないようなので、もう一度同じ台詞を繰り返します。すると、
「五月蝿いですわ!!」
と、声を荒げながら振り返るシスター。
私の容姿を見て唖然としているようです。当然ですわね。私の容姿はお母様譲りですもの。
シスターはブルブルと震えています。
「貴女はどなたかしら? 私の連れが何かご迷惑でもお掛けしましたか?」
シスターのことは知ってるけど、ここでは知らない振りをします。だって、挨拶されていないもの。
「……その容姿。どうして……?」
ボツリとシスターは呆然とした声で呟きます。私の耳にははっきりと届きましたが。
「どうしてと言われましも、返答に困りますわ。だって、お母様譲りですもの。
……そこ、退いて下さらないかしら。座れないのだけど」
漸く離れてくれたわ。全く。
挨拶もなしに下がる、シスター。ブツブツと口の中で何か呟いている。
「……………おかしいわ。黒髪と黒目は私しかいない筈なのに。これじゃあ、イベント始まらないじゃない」
イベント……
それじゃあやっぱり、彼女は……
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