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また、乙女ゲームですか

第三話 特別製ですの

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「……クスッ。シオン様。まだむくれてるんですか」

 いつもと同じように膝の上に横向きで座っています。無言のシオン様の頬をツンツンと突きながら。

「別にむくれてはいない。気に食わないだけだ」

 それをむくれてるって言うんですよ。ほんとに、シオン様は可愛いですわ。普段のシオン様からは想像出来ない姿ですよね。こんな姿を見るのは私だけ。それがとても嬉しく思う私は、酷い女かもしれませんね。

「そう言うと思いまして、シオン様にもご用意していますの。はい。どうぞ」

 私はラッピングした箱をシオン様に手渡しました。シオン様は嬉しそうに箱を開けます。

「白色じゃないんだな」

 ケルヴァン殿下や従者君、クラン君たちのは白色です。魅了を含む精神関与の魔法やスキルが使用されたら、黒色に濁るよう改良されています。だから、誰が使用したのか分かるようになっています。

 だけど、私がシオン様に手渡したのは黒色のブレスレットです。

「シオン様のは特別製ですわ。
 ケルヴァン殿下たちに渡したのは、魅了を含む精神関与の魔法から身を護るもの。改良を加えて、使った者が分かるようになっています。
 だけど、シオン様のは改良した部分が皆とは違います。
 掛けた者の身に【印】が付くように細工していますの」

 久し振りに納得がいくものが作れましたわ。

「印?」

「ええ。【印】ですわ。
 模様とでもいいましょうか。
 弱ければ薄く、強ければ濃く。掛けられる時間が短ければ狭く、長ければ広範囲に。それものたうち回る程の激痛を伴って」

 どの様な意図があろうとも、シオン様に対して精神関与の魔法やスキルを仕掛ける者を許すことは出来ませんわ。当然の報いです。

 この前のハンターのお姉様は、正々堂々と真正面から突撃されましたが、全員がそうとは限りませんでしょ。中には、ハニートラップもありますしね。

 正面から来る分は、何の問題もありませんわ。シオン様を信用してます。問題は魔法やスキルを使用されたら時ですわ。なので、いい機会ですから、シオン様の分は念をいれて作りましたの。ちょっとした自衛ですわ。

 あっ因みに、ケルヴァン殿下たちの分は、段々色が黒くなるようになってますが、シオン様の分は段々薄くなるようにしていますの。

 シオン様はとても嬉しそうに着けてくれましたわ。機嫌もよくなってくれました。

 その話をリーファにしたら、何故か微妙な表情をされましたわ。どうしてでしょう。リーファは心配じゃないのかしら。シオン様程ではありませんが、倍以上の年が離れていらっしゃるのに。あっでも、もう一つ作ってくれないかと頼まれましたわ。やっぱり、リーファも心配なのね。

 

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