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二年生になりました

第二十六話 その道を選んだのですね

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「……先程から、ずっと付き添ったままです」

 スミスの報告を聞きながら、私はドアの外から保健室の様子を伺っていました。

 お父様が皇宮に戻ってから数時間経った今も、従者は椅子に座り、まだ眠ったままのケルヴァン殿下を見詰めています。

 第二王子も従者に気を付けろと、助言していた。そんな彼を一緒にさせているのは、私なりの賭けでした。

 おそらく従者は、国王の息が掛かった者、或いは国王自身から、何らかの接触があった可能性が高いでしょう。もしくは、そう考えているということでしょうか……。私の勘も従者に対し、警報が鳴っていましたし。あながち、ハズレではありませんわ。

 それに、ケルヴァン殿下が戻る結果となった、手紙と同時に内緒で届けられた指示書。その中に同封されていた薬についても、まだ不明なままですし。別の薬を渡された可能性も十分考えられますしね。

 なんせ、彼には大きな弱みがありますから。おそらく、第二王子もその弱みを知っていたのでしょうね。勿論、悩んでいたことも。そうでなければ、一緒にコンフォート皇国に避難させたりしませんわ。

 薄っすらと浮かび上がる従者の横顔は、とてもとても険しく、難しい。物凄く思い詰めた表情で、眠っているケルヴァン殿下を、只々見詰めています。

 さぞかし、彼の中で様々な感情が渦巻いているのでしょうね。葛藤しているのでしょうね。

「………………今なら、殿下は苦しむこともなく……駄目だ。俺には出来ない。出来る訳ない!!」

 自分の拳で自分の太腿を叩き続ける従者。その目からは大粒の涙がボロボロと落ちています。

 おそらく、今その手に握られている紙の包の中には毒が入っているのでしょう。

 だとしたら、このまま放置することは出来ませんわ。だって、エルヴァン王国が何を狙っているのか、容易に想像出来ますもの。

「……なら、止めなさい」

 私の声に弾かれるように顔を上げる、従者。私は彼に微笑みながら、更に言葉を掛けます。

「貴方はその道を選んだのですね」と。

 従者は反射的に立ち上がり、持っていた包紙を床に落とした。それに気付かないまま後退り、腰に机画当たると崩れるように座り込んでしまいました。

 私は床に落ちた紙の包紙を拾います。

「これは毒ですか……」

 血の気を引いた顔で、従者は震えながら私を見上げています。

「あ……あ……………あ……あ…………」

 もう言葉にもならないようですね。

「これは私が預かります。……連れて行きなさい」

 クラン君に後手に縛られた従者は、そのまま保健室を連れ出された。

 これから先の話は、怪我人に聞かせる内容ではありませんからね。例え、目が覚めなくても。

 


☆☆☆

【第四回ホラー・ミステリー小説大賞】に参加してます。

 タイトルは〈人喰い遊園地〉です。

 少し古い作品ですか、本編は完結です。

 恐怖をお楽しみ下さいませm(_ _)m



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