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二年生になりました
第二十五話 手紙
しおりを挟むケルヴァン殿下と従者を保健室に残し、私はいつものように作業場兼臨時執務室に戻って来ました。
すると、珍しくお父様がソファーに座って私を待っていました。作業場の隅には暗部の青年が。その反対側の隅にも一人。
このタイミングで。間違いなく、ケルヴァン殿下のこと知ってそうですわね。だから来たのかもしれません。さすがですわ、お父様。でも、どうして?
その疑問は直ぐに解けましたわ。
ちょうど、エルヴァン王国に放っていた暗部が戻って来る頃合いでしたの。私もですが、お父様もエルヴァン王国に暗部を放っていましたね。何かあったのかしら。
「お父様がこの学園に来るのは初めてですね。お元気そうでなによりですわ」
「セリアも元気そうだな。うん。その制服姿もなかなか可愛いな」
「褒めて頂きありがとうございます。私もこの学園の制服気に入ってますの」
そう答えながら、お父様の向かいに座ります。今は公式な場ではありませんからね。
侍女が煎れてくれたお茶をお父様と飲みながら話を聞きましょう。そのために来たんですよね、お父様。
代表して話だしだのは、お父様が送った暗部。青年の方でした。黙って報告を聞く、私とお父様。
「……なるほどね。エルヴァン王国にも、ケルヴァン殿下以外に、まともな人はいたみたいね」
暗部からの報告を聞いた私の第一声です。
「そうでなければ、とっくに内部崩壊してただろ」
確かに。お父様の言う通りですわ。
「今は王都を脱出し、雲隠れしているようですが」
おそらく、時期を見ているのね。
どうやら、ケルヴァン殿下を助け出してここまで連れて来たのは、第二王子の配下の者のようです。そうでなければ、あの傷でここまで来れる筈ありませんわ。
それは分かりましたわ。
「そう……で、これは何かしら?」
スミスから手渡された手紙を確認しながら尋ねます。その声は若干厳しくなります。
「第二王子からの手紙です」
「手紙は見て分かりますわ。でもどうして、第二王子から直接受け取っているのかしら」
ピリッとした空気が流れます。
我が国の暗部が対象に存在を知られるなんて信じられませんわ。その実力を知っているだけに。
でも、事実は事実。
その第二王子はかなりの実力者。そして、頭も相当キレる。その実力を、この手紙一つでまざまざと見せつけた訳ですね。
「申し訳ありません」
「セリア様。申し訳ありません。今一度鍛え直したいと思います」
私が放った暗部とスミスが頭を下げ謝ります。
「……で、何て書かれてるんだ?」
お父様が気になったのはこれですね。まぁ、気になりますよね。
早速、開封してみました。
時間がなかったらしく、書かれている内容は簡潔でした。
ケルヴァン殿下を保護して欲しいことと、従者に気を付けること。この二点のみです。
しかし、その短い文章には、ケルヴァン殿下の身を案ずる兄としての心情と、私に対して真摯に頼み込む姿勢が伝わってきました。
「で、どうする?」
「ケルヴァン殿下の身は、このまま私の方で保護いたしますわ。友人ですので」
そう答えると、お父様が意地悪そうな笑顔で尋ねてきます。
「シオンは大丈夫なのか?」
お父様も知ってますからね。苦笑しか出ませんよ。
「この件に関しては私の一存で致しますわ。文句は言わせません」
「そうか。ならいい。従者の件も頼んだぞ」
「はい。畏まりました。皇帝陛下」
さて……従者はどの道を選択するのでしょうか。一応、釘は刺してありますが。それに気付いてもらえればいいのですが……
☆☆☆
【第四回ホラー・ミステリー小説大賞】に参加しています。
タイトルは〈人喰い遊園地〉です。
少し古い作品ですか、本編は完結済み。
恐怖をお楽しみ頂ければ嬉しいですm(_ _)m
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