婚約破棄ですか。別に構いませんよ

二年生になりました

第十九話 喧嘩を売られました

「ここは、学生やお姫様が来るような場所ではありませんよ」

　シオン様が部下に呼ばれて場を離れた時でした。

　例の私を睨んでいた女が喧嘩を売りに来ました。

　勿論買いますよ。シオン様に好意を持つのは分かりますし許しますが、婚約者私がいるのを知りながら近寄って来る女は全員私の敵ですから。返り討ちにして差し上げますわ。

「確かに、私は学生でお姫様ですけど、関係者でもありますよ」

　ニッコリと微笑みながら答えてさし上げましたわ。

　彼女の同僚の方かもしれませんが、真っ青な顔で彼女を止めようと手を伸ばしてますが、途中でその手を止めます。

　宜しい。邪魔は許しませんよ。

「砦の総責任者はシオン様ですわ」

　シオン様ですか……シオン様ね…………フフフ。いったい、誰の許しを得てその名を呼んでるのかしら。

「確かに総責任者はシオン様ですわ。でも、この砦の管理者は誰かご存知？」

　この砦の所有者はコンフォート皇国です。でも、管理をするのは領主代行である私、セリア＝コンフォート、私ですわ。

　つまり、私がシオン様に砦を任せているのです。立派な関係者でしょ。

「管理者は貴女様でも、この場は魔物討伐の最前線。貴女のような遊び半分の方がいていい場所ではありませんわ」

　言っていることは間違ってはいませんね。だけど、

「貴女、この砦に来てまだ日が浅いのね。少なくとも、一か月以上前から働いている人は、私にそのような口をききはしませんわ。そうでしょ？」

　最後の問い掛けは、女の後ろにいる女性に対してのもの。

「はい。私は二か月前にこの砦に派遣されましたが、セリア様に対して、そのような見当違いなこと口には決して致しません」

　でしょうね。これが正しい返答ですわ。

「なっ、何を言ってるのよ！！」

　猫の皮が剥がれ掛けてるわよ。何焦ってるのかしら。まさか、自分の味方をしてくれるとでも思ってたの。ありえませんわ。

「ねぇ、貴女、ハンターでしょ。ランクは何かしら？　私のことを遊び半分のお子様って言うのなら、私より上ですよね。勿論」

　因みに、私はＳＳですが。

「ええ、勿論。学生の貴女よりは遥かに上よ。いいこと。いくら婚約者だからって、遊び半分でこんな所まで顔を出さないで。命を張っている人に対して失礼よ！！」

　やっぱり、私が婚約者だって知ってましたね。それに、貴女が言ってるのはあくまで建前ね。本当は婚約者であるシオン様と一緒にいる私が気に入らないだけ。上手くいけば、私からシオン様を奪おうと思っているようです。出来るわけないんですけどね。

「婚約者であるシオン様と一緒にいて、貴女は失礼だと思います？」

　横恋慕する女の同僚に尋ねます。

「いいえ」

「何故？」

「セリア様が砦にいるということは、我が国、力なき民を護るこの壁が何百倍に強固されたことに匹敵しているので。
　……それに、この砦で働く大半の者は、貴方様が命を掛け民を護ったことを知っています」

　分かってくれている方は分かってくれてます。私とシオン様のじゃれ合いを許してくれてるのは、それなりに実績を残しているから。

　そして何より、命を張って戦い続けたからです。この女は知りもしませんでしたが。

「何言ってるのよ！！　頭おかしくなったの！？　この女の細腕で何が出来るっていうのよ！！　精々、シオン様の起爆剤程度でしょ」

　まぁ、確かにそこは否定しませんけどね。細腕だし、シオン様の起爆剤は嬉しいかも。そろそろ種明かしをしようと思った時でした。

「頭がおかしいのはお前だ」

「ハンターの質を落としやがって」

　背後から男性の声がしました。勿論、一人はシオン様。後はギルマスですね。二人とも苛ついているようです。少し殺気が漏れてますよ。特にシオン様。

「シオン様。女性には優しくしないと」

　殺気に当てられて腰を抜かし掛けている女に、助け船を出して上げました。

　ほんとは、私が自分の手で種明かしをしたいだけですけどね。

　




☆☆☆

　第四回ホラー・ミステリー小説大賞に参加しています。

　タイトルは【人喰い遊園地】です。

　少し古い作品ですが、楽しんで頂けると嬉しいです( ꈍᴗꈍ)