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二年生になりました
第十六話 国の質
しおりを挟む「…………どう思う?」
ケルヴァン殿下が学長室を出た後、私はドアを見据えたまま、後ろに控えているスミスとクラン君に問い掛けます。
「率直に言えば、いい捨て駒ですね」
スミスらしい返答ですわ。私も同感です。
ケルヴァン殿下は第四王子。
生まれ落ちた瞬間から、その立場は微妙だったでしょう。後継者候補から最も遠く、その上、芸術より武芸に重きをおいている様子。まだ、生まれてきたのが女子ならば、それなりに大事にされていたでしょうけど。親子の情は別として。
だけど、生まれてきたのは男だった。
そもそもおかしいのです。
従者一人だけを連れて留学してくるのは。
第四王子とはいえ、王族に属する者。調べた限りでは、王位継承権を放棄していない様子。もししていたとしても、王族にはなんら変わりはありません。その王子を、たった一人の従者を付けて留学させるなんて、普通考えられません。暴挙ですわ。罪を犯し、国外追放されたのならまだしも。
関税を上げる切っ掛けは、確かに二通目の釣書に間違いありませんわ。でも、それから先はエルヴァン王国の評価によってのもの。
つまり、お父様に見透かされているのだ。王国の質をね。
エルヴァン王国にとって、ケルヴァン殿下はスミスの言う通り、捨て駒でしょう。たぶん、ケルヴァン殿下も身に沁みて感じているでしょうね。
エルヴァン王国はおそらく、こう考えているでしょう。
ケルヴァン殿下が上手くやって、シオン様の座を奪うか愛人になれば万々歳。無事関税を引き下げ、これから先自国を有利にもっていきたい。
反対に、我が国の怒りを買い処罰された時は、或いは何らかの事故があった時は、それを盾に我が国に難癖をつけようと手ぐすねを引いて待っている。
そんなところでしょうか。
「……さぞかし、交渉術に自信があると見えますね」
ほんとに愚か。
自分の息子を捨て駒にした時点で、その国の交渉術など手に取るように分かるものを。
そんな国で育ったのに、よくケルヴァン殿下はまともに育ったものね。よほど近くにまともな人がいたのか、それとも反面教師にしたのか。まぁ今はどちらでも構いませんわ。
「スミス。ケルヴァン殿下と従者を見張りなさい」
「畏まりました」
スミスが軽く頭を下げます。
私が示唆した通り、ケルヴァン殿下は自国に対し文を送るでしょう。エルヴァン国王が直に交渉するようにと。
さて、エルヴァン王国はどう動くでしょうか。まぁ……ゲスい国はとことんゲスいと思いますけどね。報告が楽しみですわ。私の友人を悲しませるのは許しませんよ。
☆☆☆
第四回ホラー・ミステリー小説大賞にエントリーしています。
タイトルは【人喰い遊園地】です。
少し古い作品です。クリスマス編を追加予定。
恐怖を楽しんで頂けたら嬉しいですm(_ _)m
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