98 / 342
二年生になりました
第十五話 やっぱり、あの話ですか。
しおりを挟む一週間後、痣も綺麗に消えましたので学園に戻って来ました。今日の放課後は久し振りに魔物を討伐しに行きましょうか。
シオン様ですか……あぁ……それは、今は話したくはありませんわ。ただ言えるのは、こちらから迎えには行きません。砦に恐怖の嵐が吹き荒れようとも。薄情と言われてもです。
「久し振りね。セリア」
「おはようございます。リーファ」
和やかに挨拶を交わす私とリーファ。いつもはこの後、たわいない会話をしてると先生が来て朝のホームルームが始まるのですが、今日は違いました。代わりに来たのはケルヴァン殿下です。
「おはよう。セリア皇女殿下」
今日は尻尾を振ってはいませんね。少しは現実を直視出来たようですね。夢の人物と私は違いますから。ならば、この一週間の休みは意味があったということですね。
「少し時間をもらえないだろうか?」
深刻そうですね。
「昼休みで宜しければ」
「それで十分だ。助かる」
ホッと胸を撫で下ろすケルヴァン殿下。
普段脳筋の人が深刻になると、必要以上に気になりますね。たぶん、ケルヴァン殿下の悩みの種は想像出来ますが。
さて、昼休みになりました。
念のためにリーファにも同席してもらおうと思いましたが、もし想像していた内容なら二国間のことです。なので、リーファの代わりにスミスとクラン君が同席します。場所は学長室をお借りしました。
「ここなら、込み入った話も出来ますわ」
ニコッと微笑みながら話すよう促します。
「配慮感謝する」
「大事なクラスメートですもの。当然ですわ。で、話って何ですの?」
少し笑みが浮かんだケルヴァン殿下の顔が、直ぐに曇ります。
「……関税の件だ」
やはり想像していた通りでしたわ。思ってたよりは遅いですが。お父様が怒って関税を引き上げるって言ってましたからね。それもジワリジワリと。
「その件なら聞いておりますわ」
「ならば問いたい。何故引き上げたんだ?」
「理由は簡単ですわ。我が国とエルヴァ王国とは友好を結んでいませんもの。ましてや、同盟国でもない。あくまで、前の関税は、グリフィード王国との取り決めでなされたもの。我がコンフォート皇国とは関係ありませんわ。違いまして?」
それに、何故国同士の関税に関して、ケルヴァン殿下が表に出て来たのか。ゲスい考えが見え隠れしてますわ。
我が国も舐められたものね。
「確かにその通りだ。ならば、是非、コンフォート皇国と友好国になりたいのだが」
「ならば、エルヴァ国王陛下が動かれるべきでは。私はあくまで、一領主、只の皇女でしかありませんわ」
表の政治には一切関わっていませんので、私に言っても無駄だし何もしませんわよ。伝わったかしら。口を開き出して止めたところをみると、伝わったみたいね。
「分かった。色々勉強になったよ。今度落ち着いたら、一回手合わせしてくれないか?」
おずおずと訊いてきます。ほんと、大型犬ですわね。
「喜んで、お相手いたしましょう」
「ほんとに。ありがとう。セリア皇女殿下」
激しく左右に振れる尻尾が見えますわ。
「ケルヴァン殿下。硬苦しいので、セリアで構いませんわ」
耳が真横に倒れてますわね。
「ならば、俺のことはヴァンと呼んでくれ」
それはないですわ。婚約者や家族でないものが、異性を愛称呼びするなんて完全にマナー違反です。それこそ、変な噂に信憑性が増しますわ。
「それはさすがに出来ませんわ。なので、ケルヴァン様とお呼びしますわ」
シュンと尻尾か垂れ下がりましたね。
これでも、最大の譲歩ですわよ。同じ王族の子供同士なのでギリギリOKですわ。
手紙を書くためか、ケルヴァン殿下は颯爽と退出されましたが、どうなるのでしょうか。まぁ、一筋縄ではいかないことは誰でも分かると思いますが。
さて、あのゲスいエンヴァ王国の連中の出方次第で、私は出来たばかりの友人をなくすかもしれませんわね。
34
お気に入りに追加
7,460
あなたにおすすめの小説
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?
藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」
9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。
そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。
幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。
叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます!
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。