婚約破棄ですか。別に構いませんよ

二年生になりました

第十四話 その手で来ましたか

　まさか、シオン様の胸に抱かれて眠ってしまうとは思いもしませんでしたわ。恥ずかし過ぎます。よだれ垂れてませんよね。

　あまりの恥ずかしさに、逃げるようにシオン様を送り、学園に戻って来たら、何も言わず、侍女たちが生温かい目で出迎えてくれましたわ。

　どうして起こしてくれなかったのでしょう。泣きながら怒ってそのまま寝てしまうなんて、まるで子供じゃありませんか。私は成人した女性なんですよ。もう。

　まぁ起きた私に……あんな…………

　口にするのも憚りますわ。ほんとにシオン様ったら。成人してからスキンシップが激しくなりましたわ。一歩進んだ感じでしょうか。不安もあったと思いますが。これって、大人の女性だと考えてくれてるからですよね。だけど、それで誤魔化されませんよ。

　あ～～それにしても、思い出すなっていうのが無理ですわ。どうしても思い出してしまいます。そして、一人赤面してしまいます。あんな熱い目で、あんな激しい口付けなんて。一人悶絶する私を見て、尚一層、侍女たちは生温かい目で見てきます。

「セリア様。不躾ながら一言申し上げます」

　制服に着替え登校しようとしたら、侍女の一人が頭を下げ、そう声を掛けてきました。珍しいことです。

「何かしら？」

「もし登校されるのなら、そのお顔と首筋、鎖骨をどうにかしてからでないと、差し支えがあると思いますが」

「えっ！？」

　戸惑う私の前に、侍女の一人がサッと手鏡を渡す。自然と自分の姿を手鏡で見て気付きました。

「なっ、何ですか！！？？　これは！！！！」

　首筋と鎖骨に赤い痣。鎖骨にある痣は制服から見え隠れしそうな際どい場所。首筋にあるのは完全に見えてます。何かの内出血のようなあと。それは、紛れもないアレですわ。アレですよね………

　いつの間に！！！！

　思わず、座り込んでしまいましたわ。慌てて治癒魔法を掛けたのですが、消えることはありませんでした。つまり、只の内出血ではなく、魔力を含んだ内出血だということです。

　完全にやられました。まさか、こんな手で来ようとはーー。

　こんな、直ぐに消えない痕を付けられたら、着たばかりの制服を脱ぐしか選択肢ありませんよね。侍女の指摘に気付かないまま登校していたらと考えると、血の気が引きますわ。

　シオン様の馬鹿ーーーー！！！！

　痣が消えるまで一週間、学園を休む羽目になりましたわ。

　旧王宮の執務室に籠もりましたよ。当然、シオン様の送り迎えも遠慮させて頂きましたわ。勿論、シオン様は砦で寝起きしてもらいましたよ。