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二年生になりました

第六話 頼まれました

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 お祖父様の所に相談しに行った帰り、まだ時間が早いので学園に戻って来ました。午後の授業は受けれますね。

 まぁ全教科、単位を取れているので、別に授業を受ける必要はありませんが、学生の気分を味わいですから。だって、一生の内、この時でしか味わえませんもの。面倒な方もいらっしゃいますが。

「あっ、いた!! セリア皇女殿下」

 早速、声がしました。その声とほぼ同時に、私の前に現れるケルヴィン殿下。

「こんにちは。ケルヴァン殿下」

「今日こそは時間がとれるだろうか?」

 かなり諦めが悪くて面倒くさいけど、人は悪くないんですよね。根負けですわ。

「構いませんわ。放課後でも宜しいですか?」

 さっきまで沈んでいたケルヴァン殿下の顔が一気に綻びます。

 ちょっと可愛いと思ってしまいましたわ。弟がいればこんな気分なのかもしれません。だって、私の下は誰もいないんですもの。

 さて、午後の授業も終わり、放課後になりましたわ。

 帰ろうとしたリーファを無理矢理に引き止め、カフェテラスに来ました。室内でなく、敢えて外のテーブル席に座ります。オープンに。勿論、リーファの分は私が出させてもらいましたわ。

 全員の分が来たところで、さっそく切り出しました。

「では、話を聞きましょうか?」

 何モジモジしてるんですか? 大柄な男がモジモジしている姿は気持ち悪いですよ。口には出しませんが。

「…………実は、セリア皇女殿下に頼みがあるんだ」

「ええ。それは聞きましたわ。で、頼みとは何ですの?」

「紹介して欲しい人がいるんだ」

「紹介して欲しい人ですか? それって、まさか女性ですか?」

 内心ドキドキしながら尋ねます。リーファも食らいついてますね。全く見た目は変わりませんが。

 もしかして、そっち方面のお話かもしれないので。だとしたら、私は適任ではありませんよ。でもまぁ、知っている人なら出来ると思いますが……悪い人ではないので。

「ちっ違う!! 男性だ!!」

 えっ!? そっち方面でしたか……

「……なんか、とんでもない勘違いをしているような気がするのは、俺だけか。

 まぁいい。

 実は、昔から憧れている人がいるんだ。国を想い。民のために戦い続けた英雄。俺と同じ歳だと聞いた。その人と話がしたい。そして出来れば、友達になりたいんだ。

 頼む。この通りだ。紹介してくれないか。【黒の英雄】に」

 ケルヴァン殿下は両手をテーブルに付き頭を下げ、必死で頼みます。

「…………はぁ?」

 思わず、淑女らしからぬ声が出ましたわ。

 黒の英雄ですか……それって、私ですよね…………
 


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