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二年生になりました
第三話 この想い伝わりますか
しおりを挟む「セリア。今日は部屋で夕食をとろう」
夕食にはかなり遅い時間になりましたが、仕事がおしててやっと時間がとれましたわ。
「それは構いませんが。待っててくれたのですか、シオン様」
悪いことしましたわ。つい夢中で時間を忘れてしまいましたわ。先に食べてくれてもよかったのですが、そう前に言ったら、シオン様、もの凄く不機嫌になったことがあったので黙っときます。
「ああ。少しでもセリアとの時間を持ちたくてな」
シオン様のハニカミ顔。最高ですわ。疲れが吹っ飛びますわ。学園のストレスも解消されますわ。
「私もシオン様と一緒にいたいですわ」
自然と満面な笑みが浮かびます。
「なら、おいで」
シオン様が腕を広げて待っています。当然、私はそこに飛び込みますわ。
ギュッと抱き締められた後、フワリと私の体は宙に浮きます。いつものように抱っこされた後、座らされたのはシオン様の膝の上。
「……もしかして、この体勢のまま食べるのですか?」
「嫌か? たまにはいいだろ」
そう言いながら、シオン様は口元にスプーンを持ってきます。
これはアーンですか。アーンですよね。
「ほら。口開けて」
分かりました。開けますよ。開ければいいんですよね。
「次はパンにしようか? 食べたい物があるなら言えよ」
悪戯っ子のような顔で言います。だけど、その目は……
「次は私の番ですわ。シオン様は何が食べたいですか?」
シオン様の目を見詰めたまま問います。
「クソッ。煽るな」
シオン様は私から視線を外し、そっぽを向いていますが、私の腰に回った手はそのままです。
「煽ってませんよ」
シオン様の耳元に唇を寄せて答えます。
「それを煽ってるって言うんだ!!」
耳まで真っ赤ですね。やってる私も負けないくらい真っ赤だと思いますが。
「こっちを向いて下さいな、シオン様」
そうお願いしても向いてくれません。
なら、仕方ありませんわね。私はシオン様の逞しい上半身にに凭れます。薄着のせいか、シオン様の体温がより一層感じられます。あっ、また体温が上がりましたね。
「……シオン様。貴方の心を曇らせてるものは何ですか?」
「…………」
素直に話す気はないんですね。無理に白状させようとは思いませんよ。まぁ、どうしてかは想像つきますしね。もし逆の立場なら、私も気になりますもの。気になるってことは、それだけ私を愛してくれているってことですよね。嬉しくて、ついスリスリしてしまいましたわ。
「だから!!「やっとこっち向いてくれましたね」
ニッコリと微笑む私に、シオン様が固まります。
「どうして、そんな顔をしてるんだ……?」
「そんな顔?」
「幸せそうな、溶けそうな顔だ」
てっきり、私が怒ったとでも思ったのでしょうか。
「そんなの、決まってるではありませんか。幸せだからですよ。シオン様に愛に包まれてることが再確認出来ましたから」
そう答えると、シオン様が悔しそうに顔を隠そうとします。その手を止めて、私はシオン様の首に手を回し肩に顔を隠します。
「シオン様にも伝わりますか? 私の気持ちが」
腰に回っていた手が背中に回ります。そしてギュッと抱き締められました。
「……ああ。伝わる。俺も、セリアを心から愛している」
「私も愛してますよ、シオン様を」
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