上 下
85 / 331
二年生になりました

第三話 この想い伝わりますか

しおりを挟む


「セリア。今日は部屋で夕食をとろう」

 夕食にはかなり遅い時間になりましたが、仕事がおしててやっと時間がとれましたわ。

「それは構いませんが。待っててくれたのですか、シオン様」

 悪いことしましたわ。つい夢中で時間を忘れてしまいましたわ。先に食べてくれてもよかったのですが、そう前に言ったら、シオン様、もの凄く不機嫌になったことがあったので黙っときます。

「ああ。少しでもセリアとの時間を持ちたくてな」

 シオン様のハニカミ顔。最高ですわ。疲れが吹っ飛びますわ。学園のストレスも解消されますわ。

「私もシオン様と一緒にいたいですわ」

 自然と満面な笑みが浮かびます。

「なら、おいで」

 シオン様が腕を広げて待っています。当然、私はそこに飛び込みますわ。

 ギュッと抱き締められた後、フワリと私の体は宙に浮きます。いつものように抱っこされた後、座らされたのはシオン様の膝の上。

「……もしかして、この体勢のまま食べるのですか?」

「嫌か? たまにはいいだろ」

 そう言いながら、シオン様は口元にスプーンを持ってきます。

 これはアーンですか。アーンですよね。

「ほら。口開けて」

 分かりました。開けますよ。開ければいいんですよね。

「次はパンにしようか? 食べたい物があるなら言えよ」

 悪戯っ子のような顔で言います。だけど、その目は……

「次は私の番ですわ。シオン様は何が食べたいですか?」

 シオン様の目を見詰めたまま問います。

「クソッ。煽るな」

 シオン様は私から視線を外し、そっぽを向いていますが、私の腰に回った手はそのままです。

「煽ってませんよ」

 シオン様の耳元に唇を寄せて答えます。

「それを煽ってるって言うんだ!!」

 耳まで真っ赤ですね。やってる私も負けないくらい真っ赤だと思いますが。

「こっちを向いて下さいな、シオン様」
 
 そうお願いしても向いてくれません。

 なら、仕方ありませんわね。私はシオン様の逞しい上半身にに凭れます。薄着のせいか、シオン様の体温がより一層感じられます。あっ、また体温が上がりましたね。

「……シオン様。貴方の心を曇らせてるものは何ですか?」

「…………」

 素直に話す気はないんですね。無理に白状させようとは思いませんよ。まぁ、どうしてかは想像つきますしね。もし逆の立場なら、私も気になりますもの。気になるってことは、それだけ私を愛してくれているってことですよね。嬉しくて、ついスリスリしてしまいましたわ。

「だから!!「やっとこっち向いてくれましたね」

 ニッコリと微笑む私に、シオン様が固まります。

「どうして、そんな顔をしてるんだ……?」

「そんな顔?」

「幸せそうな、溶けそうな顔だ」

 てっきり、私が怒ったとでも思ったのでしょうか。

「そんなの、決まってるではありませんか。幸せだからですよ。シオン様に愛に包まれてることが再確認出来ましたから」

 そう答えると、シオン様が悔しそうに顔を隠そうとします。その手を止めて、私はシオン様の首に手を回し肩に顔を隠します。

「シオン様にも伝わりますか? 私の気持ちが」

 腰に回っていた手が背中に回ります。そしてギュッと抱き締められました。

「……ああ。伝わる。俺も、セリアを心から愛している」

「私も愛してますよ、シオン様を」





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい

矢口愛留
恋愛
【全11話】 学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。 しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。 クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。 スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。 ※一話あたり短めです。 ※ベリーズカフェにも投稿しております。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

愛想を尽かした女と尽かされた男

火野村志紀
恋愛
※全16話となります。 「そうですか。今まであなたに尽くしていた私は側妃扱いで、急に湧いて出てきた彼女が正妃だと? どうぞ、お好きになさって。その代わり私も好きにしますので」

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

【完結】本当の悪役令嬢とは

仲村 嘉高
恋愛
転生者である『ヒロイン』は知らなかった。 甘やかされて育った第二王子は気付かなかった。 『ヒロイン』である男爵令嬢のとりまきで、第二王子の側近でもある騎士団長子息も、魔法師協会会長の孫も、大商会の跡取りも、伯爵令息も 公爵家の本気というものを。 ※HOT最高1位!ありがとうございます!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。