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二年生になりました

第一話 まさかまさかの登場です

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 この一年、様々な種類の馬鹿たちを見てきたつもりです。対処もしてきました。

 なので、ある程度の耐性を身に付けたと自負していましたが、まだまだ修行が足りていなかったようですね。

 目下、目の前の男に青筋がたちそうです。

「君が、セリア皇女殿下か」

 挨拶もなしに現れて、いきなりこれです。

「……リーファ。次の授業は移動教室でしたわね。急がないと遅刻してしまいますわ」

 ニッコリと微笑みながら、リーファに声を掛けました。

 名乗りもせず、いきなり目の前に現れ、人の名前を呼ぶ男と話すことなど何一つもありませんわ。

 ましてや、リーファを無視したのですよ。考えられませんわ。だって二年後、セフィーロ王国の王妃殿下になられる人物ですよ。隣国ではないとしても、周辺諸国の一国でしょ。それも、我が皇国よりも大国の国ですよ。

 末端でも、仮にも王族に属する者ならば、当然把握然るべき事ではありませんか。

 無知で無礼な方にはそれ相当の対応を。

 国の品位が下がりますからね。私もリーファも、それぞれ国を背負って立っているのです。無視されて当然ですわ。

「そうね。急がないと遅れるわよ」

 完全に目の前にいる男を無視する私に、リーファも合わせます。リーファもなかなかいい笑みですわ。

 男を避けて行こうとする私の肩に、男は手を伸ばします。

「おいっ。耳が聞こえないのか?」と見当違いのことを言いながら。

 当然避けましたわ。後ろを振り返らずに。触られたくありませんもの。どんな理由でも。私に触っていいのはシオン様だけですわ。

 幸い、男は追い掛けては来ませんでしたが、これから用心が必要ですわね。また厄介事が増えましたわ。ほんと、いい加減にして欲しいですわ。

「アレが例の?」

 少し離れてから、小声でリーファが訊いてきます。

「ええ。アレがそうです」

 隣にいるのがリーファなので、心底ウンザリした声で答えます。

「学年が上がって、早々、セリアも大変ね」

 リーファも苦笑いです。

 お父様がデビュタントが終わった後で教えてくれた通り現れましたわ。

 まさかまさかの登場です。

 その話を聞いた時、私もシオン様も信じられませんでしたわ。普通の神経ではありえませんもの。

 お父様が送り返した釣書と書簡を、私の所に恥ずかしげもなく、特に捻るわけでもなく送ってくることだけはありますわ。ましてや、それを抗議書と共にお父様は再度送り返しているのにですわよ。

 そうーー

 さっき目の前に現れた男は、エルヴァ王国第四王子ケルヴァン様。釣書の男ですわ。

 

 
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