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貴方の傍らで
第二十三話 新たな一歩
しおりを挟む「で、聞こうか。何があった?」
ソファーに座るシオン様の膝の上に座らされた私は、シオン様に詰問されています。
別に悪いことはしていませんわ。ドキドキが止まりません。夜着の上にカーディガンを羽織っただけなので、絶対、そのドキドキは伝わってるでしょうね。
「……今日、エルヴァ王国から書簡が届きましたの」
「エルヴァ王国って、最近隣国になったあの国か?」
「ええ。そうです」
「その書簡って、釣書か?」
私が告げる前に言われて、反射的に顔を上げてしまいましたわ。同時に、息を止めてしまいました。だって、あまりにも間近に、シオン様の顔があったんですもの。
小さい頃から見てきた顔ですが、そんなの関係ありませんわ。最愛の人の顔が間近にあれば、皆私と同じ反応をすると思います。
恥ずかしくて、俯きたいのですが、真剣な探るような目で見詰められて俯向けません。
「やっぱりそうか。……たぶんそうだろうなって思ったよ。考えてみれば、俺の後釜を狙う奴はごまんといるからな」
自嘲気味に笑うシオン様に私は言います。
「私の伴侶はシオン様だけですわ!!」
自然と声が大きくなりました。だって、そんな哀しい笑みは、シオン様には似合いませんもの。
「俺もだ」
優しい笑みの中に少しだけ不安が混じっています。どうすれば、シオン様の中から不安が消えるのでしょうか。
シオン様から不安が消えるなら、私は何でもするのに。
方法が見付からなくて、私はただ……シオン様の胸に体を預けています。
「ところでセリア。釣書はどうした?」
「面倒なので、お父様にそっくりそのまま預けましたわ」
「そうか。それが一番だな」
「…………今すぐ、結婚出来ればいいのに」
結婚したら言って来ないでしょ。
「俺はセリアが隣にいればそれでいい。
楽しい時は一緒に笑って。幸せを分かち合って。不快なことも一緒に排除して。何か問題が起きれば一緒に乗り越える。
……俺はそんな関係を、セリアと共に築いていきたい」
初めてでした。シオン様から具体的な話をされたのは。感情が溢れ出すように、ポロポロと涙が溢れ落ちます。
ーー隣にいる。
案外簡単なことだと思われるかもしれません。多くの恋人同士や夫婦の間で、簡単に使われる言葉かもしれません。
でも本当は、とてもとても難しいことなのだと、今の私は思うのです。時には意見がぶつかったり、喧嘩することもあるでしょう。
その時間も幸せだと思えるような関係を、私もシオン様と一緒に築きたい。
「シオン様。おろして下さい」
不安な顔をしながらも、渋々下ろしてくれたシオン様の足の間に立ち、私は涙を拭うと、シオン様の両頬に手を添え上を向かせます。
揺れる目に私の顔が映ります。それを見ながら、私は告げます。
「セリア=コンフォートは、この命が消えるまで、シオン=コンフォ様の隣に立ち続けることを誓います。私の全てを掛けて」
そう宣言すると、目を見開くシオン様。私は微笑むと、自分からシオン様に顔を寄せます。
私はこの時のことを一生忘れません。
この胸を熱くする想いと共に、心に、記憶に刻み込みますわ。
私たちの新たな一歩は、この瞬間、確かに踏み出したのだから。
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