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貴方の傍らで

第二十話 約束ですよ

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「はい!! そこでターン。手先、足先まで神経に気を使いなさい!」

 休むことなく踊り続けて二時間。

 さすがに疲れましたわ。魔物討伐の際は、二時間動なんて大した時間じゃありませんのに、踊りとなれば別ですね。普段使わない筋肉を使うからかしら。

「セリア様!! 余所事を考えてる暇はありませんよ!! もう一回、最初から」

 激が飛ぶ。パンパンとスミスは自分の手を打った後、また最初から始まるループ地獄。

 ……鬼です。

 鬼教官がここにいます……

 息が切れている私の手を握り、片手は腰に軽く手を添え、汗は掻きながらも涼しい顔をしているシオン様。

 踊れましたのね。まぁ貴族なので、踊れるとは思っていましたが、てっきり苦手とばかり思っていましたわ。完全にリードされっぱなしです。男性にリードされるのはおかしくはありませんが、リードされっぱなしは何か嫌ですわ。なので、必死に付いていきます。

 シオン様はニヤッと笑うと、スピードを上げていきます。

 まだ上げるんですか!?

 完全に面白がってますね。

 負けるのが嫌なので踏ん張ります。

「今日はこれまでにしましょう。中々様になってきましたね。後もう少しですよ、セリア様」

「……ありがとうございました」

 やっと終わりましたわ。結局、一度も休憩を入れずに三時間踊り続けましたわ。分かってましたが、シオン様は合格点なんですね。

 そんな感じで、ダンスの特訓の後は座り込んでしまう私を、いつもの子供抱っこで運んでくれます。

「シオン様はズルいですわ。ダンスが得意なんて」

 唇を尖らせ文句を言います。

「別に得意じゃないぞ」

「嘘です。あのスミスが何も言わないなんて。何処でダンスを習ったのですか? 余程の訓練をしたんでしょうね」

 私以外の女性ひとと。

「そりゃあ、セリアの倍以上生きてんだ。それなりにやってるに決まってるだろ」

 苦笑しながらも、どこか嬉しそうなシオン様。

「何、嬉しそうなんですか」

 まさか、私がヤキモチを焼いたとでも思ったんですか。そうですよ。焼いたんですよ。悪いですか。文句ありますか。

「嬉しいに決まってるだろ。セリアの可愛い顔が見れたんだから」

 途端に真っ赤になる私。これだけで機嫌がよくなるんだから、私も単純ですわ。

「ほんとに可愛いな。セリア約束しよう。これから先はセリアとしか踊らない」

 顔は嬉しそうに笑みを浮かべながら、その目は真剣で熱をおびていました。まるで吸い込まれそうです。

「約束ですよ」

「ああ」

「なら、私もシオン様としか踊りませんわ」

 私もシオン様の熱が移ったようです。

「だとしたら、嬉しいな」

 益々熱をおびるシオン様の目が近付きます。間近でもっと見たかったのですが、礼儀ですもの、ちゃんと目は閉じましたわ。



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