婚約破棄ですか。別に構いませんよ

井藤 美樹

文字の大きさ
上 下
76 / 342
貴方の傍らで

ミーティング(1)

しおりを挟む


 薄暗い室内に集まる五人の女性たち。中央には命よりも大事なスケッチブックとメモ帳。

 皆神妙な表情をする中、一番最初に口を開いたのは文官1だった。

「セリア皇女殿下が認めて下さいましたわ!! 皆様。これはもう天啓です!! 我らの想いを広めていきましょう!!」

 ガッツポーズをする文官1。彼女は全てのカップリングをこよなく愛している。

「しかし会長、コンフォート様と皇帝陛下のカップリングが出来ませんわ……」

 悲観する侍女1。彼女の専門は年齢層が高い同士のカップリング。なので、コンフィート様と皇帝陛下のカップリングは最高なのだ。

「それは本当に残念で仕方ありません。しかし、落ち込むことはありませんわ。書かなければいいのです。残さなければいいのです。我々の頭の中を覗き見など出来ないでしょう」

「確かに、会長の仰ることは分かります。ですが、どうしても残したいのです。だって、あまりにも尊いではありませんか!! 皆様もそう思いますよね!!」

 力説する侍女1。

「その気持ちは痛い程分かりますが……

 もし、セリア皇女殿下やスミス様にバレたら、この活動自体がなくなってしまう可能性があります。それだけは、決してあってはならないことです」

 悲痛な表情をしながらそう答えたのは、文官2だった。彼女の専門はフツメンと美形のカップリング。

「分かってます。だけど……」

 侍女1は悔しそうに唇を噛み締める。

「では、設定を変えればどうですか?」

 侍女2が提案する。彼女の専門は年の差カップリング。或いは上司と部下のカップリングもあり。

「でも、それでは、あの御二方の目は誤魔化せませんよ」

 文官2の台詞に誰も何も言えなかった。

「なら、手を出せない程大きな組織にしませんか?

 つまり、信仰者を増やすのです。

 尊い、至高の愛の姿です。

 感銘を受ける方は多いと思いますわ。現に、その広がりは徐々に広がりつつあります。基盤をしっかり築けることが出来たのなら、そうそう無茶をしても許されるのでは?

 それに、一度でもコンフォート様と皇帝陛下を見た信仰者なら、必ず想像し、残そうとなさいますわ」

 ずっと黙って聞いていた侍女3が、ニッコリと微笑みながら妥協案を出す。彼女は少し病んでる方を専門にしている。

「それは良い考えよ!! 副会長」

「そうですわ!! それなら、私の思いはいずれ必ず実を結びますわ!!」

「なら、やることは決まってますね」

「ええ」

 口々に侍女3に賛同するメンバーたち。

「我々の未来のために!!!!」

 会長である文官1が片手を天に向かって突き上げ、声高らかに宣言する。すると、残りのメンバーも同じように片手を天に向かって突き上げ復唱した。

「「「「我々の未来のために!!!!」」」」

 



 勿論、このミーティングは監視されていた。

 報告を受けたスミスは一言。

「下手な宗教よりもたちが悪い」

 と、ウンザリした表情でボヤいたとか。







☆☆☆


 第十四回恋愛小説大賞にエントリーしてます。

 気楽に読めますので是非(。•̀ᴗ-)✧



しおりを挟む
感想 775

あなたにおすすめの小説

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?

藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」 9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。 そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。 幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。 叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。