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貴方の傍らで

ミーティング(1)

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 薄暗い室内に集まる五人の女性たち。中央には命よりも大事なスケッチブックとメモ帳。

 皆神妙な表情をする中、一番最初に口を開いたのは文官1だった。

「セリア皇女殿下が認めて下さいましたわ!! 皆様。これはもう天啓です!! 我らの想いを広めていきましょう!!」

 ガッツポーズをする文官1。彼女は全てのカップリングをこよなく愛している。

「しかし会長、コンフォート様と皇帝陛下のカップリングが出来ませんわ……」

 悲観する侍女1。彼女の専門は年齢層が高い同士のカップリング。なので、コンフィート様と皇帝陛下のカップリングは最高なのだ。

「それは本当に残念で仕方ありません。しかし、落ち込むことはありませんわ。書かなければいいのです。残さなければいいのです。我々の頭の中を覗き見など出来ないでしょう」

「確かに、会長の仰ることは分かります。ですが、どうしても残したいのです。だって、あまりにも尊いではありませんか!! 皆様もそう思いますよね!!」

 力説する侍女1。

「その気持ちは痛い程分かりますが……

 もし、セリア皇女殿下やスミス様にバレたら、この活動自体がなくなってしまう可能性があります。それだけは、決してあってはならないことです」

 悲痛な表情をしながらそう答えたのは、文官2だった。彼女の専門はフツメンと美形のカップリング。

「分かってます。だけど……」

 侍女1は悔しそうに唇を噛み締める。

「では、設定を変えればどうですか?」

 侍女2が提案する。彼女の専門は年の差カップリング。或いは上司と部下のカップリングもあり。

「でも、それでは、あの御二方の目は誤魔化せませんよ」

 文官2の台詞に誰も何も言えなかった。

「なら、手を出せない程大きな組織にしませんか?

 つまり、信仰者を増やすのです。

 尊い、至高の愛の姿です。

 感銘を受ける方は多いと思いますわ。現に、その広がりは徐々に広がりつつあります。基盤をしっかり築けることが出来たのなら、そうそう無茶をしても許されるのでは?

 それに、一度でもコンフォート様と皇帝陛下を見た信仰者なら、必ず想像し、残そうとなさいますわ」

 ずっと黙って聞いていた侍女3が、ニッコリと微笑みながら妥協案を出す。彼女は少し病んでる方を専門にしている。

「それは良い考えよ!! 副会長」

「そうですわ!! それなら、私の思いはいずれ必ず実を結びますわ!!」

「なら、やることは決まってますね」

「ええ」

 口々に侍女3に賛同するメンバーたち。

「我々の未来のために!!!!」

 会長である文官1が片手を天に向かって突き上げ、声高らかに宣言する。すると、残りのメンバーも同じように片手を天に向かって突き上げ復唱した。

「「「「我々の未来のために!!!!」」」」

 



 勿論、このミーティングは監視されていた。

 報告を受けたスミスは一言。

「下手な宗教よりもたちが悪い」

 と、ウンザリした表情でボヤいたとか。







☆☆☆


 第十四回恋愛小説大賞にエントリーしてます。

 気楽に読めますので是非(。•̀ᴗ-)✧



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