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貴方の傍らで
第十八話 やっと戻って来ました
しおりを挟むグリフィード領に戻って来ました。
皆涙ぐんで喜んでくれました。あのスミスも目頭を熱くさせていたのには驚きました。だからでしょうか、胸の奥がギューと掴まれた感じになって、私の涙腺は完全に壊れてしまいました。
だけど、幸いにも、ブサイクな顔は誰にも見られずにすみました。代わりに、シオン様の上着が濡れてますけどね。いつもの、頭ポンポン付きで。頭ポンポン最高です。
「長い間、迷惑を掛けてしまった。本当にすまない」
シオン様は私を胸のに抱いたまま、集まった皆に深々と頭を下げました。
「……次は許しませんよ」
皆を代表して、スミスが言います。
「ああ。二度とセリアを悲しませたりしない。セリアにも、皆にも約束しよう」
そして誓ってくれました。私の頭を撫でながら。その時です。
「勿論、私たちにも約束してくれるわよね」
和やかな場の筈だったのですが、無粋な声に場が完全にしらけてしました。悲しいかな、声だけで分かります。完全に涙も引っ込んでしまいましたよ。
「…………お母様」
そう呟くと同時に姿を現したのは、思った通りお母様とお父様でした。
まだ、お父様がその台詞を言うのは分かりますが、原因の一端であるお母様が言うのは納得出来ませんわ。
「わざわざお越し頂き、ありがとうございます」
若干声が低めで挨拶をします。
「テンション低いな」
お父様が苦笑します。理由は分かっておいででしょう。
明日皇宮に向かおうと考えていましたが、来ていただいたのなら、その時間は省けましたね。たぶん、お祖父様から連絡を受けたのでしょう。
「勿論、皇王陛下と皇妃様にも誓います。二度とセリアを悲しませることは致しません」
私の肩を抱き寄せながら、シオン様は誓います。その姿をソッと見上げます。
精悍でキリリと引き締まった横顔。この場にいる誰よりも真剣な表情に、私は本当にこの人を選んで良かったと心から思いました。
「当然だ。次は許さんからな」
それは、隣にいる人にも言って下さい。心の中でそう突っ込んでしまいましたよ。口にしたいのですが、したらしたらで面倒くさいことになるので却下です。時間がある時はしますけどね。今はシオン様と一緒にいたいのです。
でもまぁ……心配して駆け付けて来てくれた気持ちは正直嬉しいですけどね。
「ところで、もう大丈夫なのか?」
やっぱり、お父様も心配だったのでしょう。
「ああ。もう大丈夫だ。心配掛けたな、レイ」
「まぁ、お前のことだから大丈夫だとは思っていたけどな。……無事でよかった」
「レイ……」
ほんとに仲良しさんですね。軽く抱き合い肩を叩き合います。
感動的シーンを邪魔したくなくて、黙って見ていましたのに、この場にそぐわない妙な邪な圧を背後から感じるのは何故でしょう。思わず振り返ってしまいましたわ。
すると、女文官さんと侍女数名が、何やら一生懸命メモをとってるようでした。慌てて隠しても駄目ですよ。後でちゃんと内容を確認しますからね。
視線をスミスに向けると、スミスは軽く頷きました。さすがスミスです。
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