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貴方の傍らで

第十三話 竜人恐るべし

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 お母様の精神をゴリゴリと削った後、お礼を言ってお帰り頂きました。ちゃんと丁寧にお相手しましたわ。感動で涙目になっていましたよ。

 それにしても、全く……何を根拠にオジサマ好きと言ったんだか。ほんとに何を言い出すか分かったものではありませんわ。

 確かに、魔法具を再度シオン様の耳に着けましたわ。それがイコール、オジサマ好きって。安直過ぎません。

 ……正直に言えば、少し落ち着かなかっただけですわ。中年のシオン様も青年のシオン様も、シオン様には変わりはありません。どちらも、私が愛する人です。

 ですが、青年のシオン様は見慣れていないせいか、何か落ち着かないのです。あまりにも格好良すぎるせいのが悪いのだと思います。

 私が初めてシオン様と出会ったのは、十年前、五歳の時です。

 その時のシオン様よりも若いんですよ。落ち着かなくて当たり前ではありませんか。それに、伯爵家に連れて来られてすぐに、私はお母様の所に魔法を学びに行きました。なので、しっかりとその顔を認識したのは、青年のシオン様よりも、中年に差し掛かったシオン様でした。

 なので、青年のシオン様は見慣れていないのです。

 それに、ただたんに若返った訳ではなく、魅力が倍増したというか……説明しにくいのですが、間近で見ていた私が悩殺されてしまう程なのです。そう口にすれば、生温かい目で見られそうですが、惚れた欲目ではなく、本当に魅力が増したのです。

 それは魔法具を装着しても、たいして変わりませんでしたわ。毎日見ていても慣れないなんて。

 ーー竜人恐るべし。
 
 問題が一つ解決すれば別の問題が浮上するなんて。

 魅力を下げる魔法具を開発してくれないかしら。難しいのは分かってますが。面白がって造ってくれないでしょうね。だったら、私が造るしかありませんね。

 う~~んでも、正直難しいかな。時間も掛かるし、もし出来ても、シオン様が着けてくれるか。怒られそうですね。それか、笑いながら受け取ってはくれても、着けてくれなさそうです。

 そして、魅力を振りまきながら私を虐めて楽しむのです。シオン様って、そういういたずらっ子的な所がありますからね。

「……まぁそれも、私的には愛しいんですけどね」

 堂々巡りになりそうな問題です。

 シオン様は年の差を気にしてましたし、自分の容姿も気にしていました。私は必死で民を護ってきた勲章だと思うんですけどね。誇りだと。そこが男心っていうか……まぁ分かります。

 ほんとに、堂々巡りになりますね。

 私も負けずに自分を磨かないと。まずは、この絶壁をどうにかしないと。ミルクを毎日飲んでいるのに効果がありませんの。でも、信じて飲み続けるしかありませんよね。

 寝る前の習慣となった私からのキスをした後、私は囁きます。
 
「シオン様。早く目を覚まして下さい。二か月後には私のデビュタントが控えているんですよ。私とファーストダンスを踊ってくれるんですよね。シオン様が参加しないのなら、私は参加しませんから」

 お父様もリムお兄様も、絶対参加するように仰るでしょうけど、私は絶対に参加しませんから。皇女の仕事はちゃんとしています。文句は言わせませんわ。お母様は認めてくれるでしょうけどね。








「………………それは、困るな……」

 







☆☆☆


 一週間切りましたね。

 第四回キャラ文芸大賞にエントリーしてます。

 タイトルは【護国神社の隣にある本屋はあやかし書店】です。

 気楽に読めますので、是非(。•̀ᴗ-)✧


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