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貴方の傍らで
第六話 私の運命の番ですから
しおりを挟む「…………おい。これ、誰だ?」
早速撮って見せましたよ。アーク隊長に。その第一声がこれです。
「シオン様ですわ」
少し苦笑しながら答えます。
「確か俺の記憶では、父上の年は四十二歳だったと思うが」
「ええ。先日誕生日が来ましたから、四十ニ歳になりましたね」
買った誕生日プレゼントはシオン様の側にちゃんと置いていますよ。来年こそは一緒に祝いたいですね。
「これ……どう見ても、四十ニ歳には見えないんだが」
「私も見えませんね」
「見えないよな」
「見えませんね」
「…………俺と対して歳が変わらないように見えるんだが」
「私もそう見えます」
本当にそう見えるから答えているだけですけどね。でも、アーク隊長には不服だったみたいです。
まぁ……そうでしょうね。いきなり、自分の父親が二十代後半の姿まで若返ったんだよって言われたら、普通、何ふざけてるんだって怒りますよね。当然、簡単には信じられませんよね。
だけど、アーク隊長は信じてくれました。一切も疑うことなく。
「セリア」
繰り返される同じ返答に苛立ったのか、語気がやや強くなります。
ちゃんと説明しろって、その目が言ってます。勿論、ちゃんと説明しますわ。
……それにしても、さすがアーク隊長ですね。少しも取り乱していませんもの。驚愕はしてるみたいだけど。
「私もはっきりとした理由は分からないのです。お祖父様もお祖母様も。
ただ……竜人に体を作り変えたことで、細胞が活性化されたのが原因なのではと。あくまで、仮説の段階ですが。そのせいで、絶頂期だった頃まで若返ったのではないかと言われました」
アーク隊長は難しそうな表情で私の話を聞いています。その顔には、そんなことがありえるのかと語っています。私も始めはそうでしたもの。その気持ちはよく分かりますわ。
「……セリアは驚かないんだな」
その疑問も尤もですよね。私がアレク隊長の立場なら驚愕したでしょうけど。
「半年間見続けましたからね。若返っていく様子を。
始めは緩やかな変化でした。アレって、首を傾げる程度の変化だったんですよ。目尻の皺がなくなったとか、白髪がなくなったとか。それが、ここ二か月で見る見る変化しだして。今はここまでに。
どうやら、これ以上は若返ることはなさそうですけど。定着したというか、止まったというか、表現が難しいですわね」
さも、子供の悪戯が止んだ程度の話し方をする私に、アレク隊長は何とも言えない表情で私を見ています。
「やけに、すんなり受け入れるんだな?」
「目の前で変化を見ていたせいもありますが、容姿がいくら変わろうが、シオン様には違いありませんから。私はシオン様の容姿を愛した訳ではありませんわ。確かに、格好いいですけどね。シオン様の一番の魅力は中身ですもの」
「…………まぁ、確かにそうだが」
苦虫を噛み潰したような表情をしながら、アレク隊長は渋々認めます。その後、小さな声で呟きました。
「ほんとに惚れ抜いてるんだな」と。
「ええ。私の運命の番ですから」
満面な笑みを浮かべながら答えます。
「……父上は幸せ者だな」
だとしたら、私も嬉しいですけとね。
「それはそうと。……表向きは、黒の魔女の薬で眠り続けてることになってるんだよな。なら、ちょうどよかったな。薬の副作用で押し通せるんじゃないか」
そう言われて、思わず苦笑してしまいます。
「かなり無理はあると思いますけどね」
「押し通すしかないだろ。でもまさか、父上が伝説の黒の魔女の知り合いだとは思わなかったぞ」
ん? もしかして、知らないんですか?
「知り合いというより、友人ですね。かなり深い。二人共本音で話していますもの。あっ、でも、これからは少し関係が変わるかもしれませんね。だって、私の母親ですから。シオン様にとったら、義理の母親になりますね」
アレク隊長からしたら、義理のお祖母様になるのかしら。それはそれで面白そうですわね。未来も楽しそうですけど、今もとても面白いですわ。特に、アレク隊長の顔が。
「そうそう。このことは内緒にしといて下さいね。一応、国家機密なので。喋るとコレですよ」
私は自分の首を横から切り落とす仕草をします。冗談ではなく。
その時のアレク隊長の顔は一生忘れませんわ。
☆☆☆
第四回キャラ文芸大賞にエントリーしてます。
タイトルは【護国神社の隣にある本屋はあやかし書店】です。
少し前の作品になりますが、是非(。•̀ᴗ-)✧
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