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貴方の傍らで

第五話 番強しです

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 アーク隊長の心配する気持ちは身に沁みて分かりますわ。本当に、仲の良い家族ですもの。幼い頃から側でずっと見ていた私はよく知っています。シオン様とアーク隊長たちの絆の強さを。

 当然といえば当然ですね。

 だってシオン様は、愛人や妾が珍しくない貴族社会の中で後妻を娶らず、自分の手でアーク隊長たちを育てあげましたから。それも立派に。絆が強くなって当たり前ですわ。

 なので、ほんとは私もアーク隊長たちに見舞って欲しい。心からそう思います。

 しかし……現実は厳しいもので。ほぼ不可能に等しいでしょう。

 まず、竜族の習性がそれを許しません。前にもいいましたが、番に対して竜族の執着ぶりは凄まじく、正直怖いものがあります。先祖返りとはいえ、その一端を間近で体験したばかりの私が断言しますわ。

 だとしたら、方法は一つしかありません。シオン様を移動させるしか……でも、移動させて何か起きたら、そう考えると怖くて出来ません。

 ならばせめて、映像だけでも見せることが出来たのなら……隊長たちの慰めになるでしょうか。それに、前もってが必要だと思うのです。

 どちらにせよ、お祖父様聖獣様に訊いてみないといけませんね。勝手には出来ませんもの。

「お祖父様。お願いがあるのです」

 その日の晩。いつもと同じように仕事を終えた私は、シオン様の元にやって来ました。そして出迎えてくれたお祖父様に早速尋ねます。

「お願い? セリアが。珍しいな」

「お祖父様。シオン様の様子を撮影してもよいでしょうか?」

「シオンの様子を? セリアのためか? それともシオンの子のためか?」

 詳しい説明をしなくても、お祖父様には全て分かっておいでです。考えが読めるんだから、下手な説明はいりませんね。

 でも、私のためって? まぁ……癒やしのために欲しいですけど。言葉にされると恥ずかしいですね。

「両方ですわ」

 嘘は吐けませんもの。吐いてもすぐにバレますし。

 お祖父様は眉間に皺を寄せて考え込んでいます。

 やっぱり難しいみたいですね。人ならそれくらいって思うことも、竜族では考えられないことがただあるのです。番がいる自分の住処を映像に残すことは、竜族にとってはアウトに近いのでしょう。無理にとは言えません。半ば諦めていると、隣から援護射撃がありました。

「別にいいではありませんか?」

 お祖母様です。

「しかし……」

 お祖父様は渋っています。そんなお祖父様に、お祖母様は若干キツイ言い方で説得しようとしてくれてます。

「可愛い孫と孫娘の願いですよ。筋を通してくれているのが分からないの?

 セリアは黙って映像を残すこともしなかった。やろうと思えば簡単に出来るのにね。少なくとも、セリアは私と貴方に対して誠意と敬意をもっているわ。そんな相手に、貴方は意地を張るの? そんなに器の小さな男なの?」

 神に等しいと言われている聖獣様にそこまで言えるお祖母様って……

 呆気にとられながら見ています。

 ほんと、竜族の方が番に弱いことが改めて理解出来ましたわ。竜族と番。その力関係が分かった気がします。

「………………分かった。許可しよう。但し、我も立ち合う」

 渋々認めてくれました。番強しです。

「お祖父様。お祖母様。ありがとうございます」

 私は満面な笑みを浮かべ、勢いよく頭を下げました。





☆☆☆


 第四回キャラ文芸大賞にエントリーしてます。

 タイトルは【護国神社の隣にある本屋はあやかし書店】です。

 少し古い作品ですが、応援宜しく(。•̀ᴗ-)✧




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