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貴方の傍らで

第四話 やっぱりアレは必要ですよね

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 ざっと砦内を案内した後、執務室で実務日誌や経簿などの書類をアーク隊長に見せます。それから、アーク隊長からの質問に答えること二十分。

 アーク隊長が書類を机の上に置きます。そして顔を上げ告げました。

「おおよそは理解した。砦に関しては任せてくれ。きっちり管理してやる。ついでに、少し見直していいか?」と。

 管理だけでなく改革もしてくれるなんて、願ってもない台詞ですわ。こちらから頼みたいくらいでしたもの。勿論、即OKしましたわ。

「アーク隊長にお任せします。ほんとに助かりますわ。どうしても、集中出来ない分甘くなっしまって」

 ほんとはもっと締めたかったのです。だけど、掛け持ちのせいで出来ませんでした。出来るなら、伯爵領で書いていた契約書を皆に書かしたいくらいですわ。

 ほら、あの契約書です。

 討伐中に怪我やまんがいち命を落としたとしても、コンファ伯爵家及びコンフォート皇国は一切の責任を負いませんってやつです。引かれる方も多いと思いますが、それ一つで気合が入るでしょ。勿論、私もサインしてますよ。

 とはいえ、実際何かあった時はきちんと対応してますし、それなりに保障もしています。家族に関しても。なので、あくまで通過儀礼的なものですけどね。

 それに意味があるのかと訊かれたら、正直困りますけどね。でも、必要だと思うのです。なので、それとなく打診してみました。

 すると、「そうだな。その件も考えてみよう」と言ってくれました。

「お願いしますわ。それがあるとないとでは、気合の入れ方が違いますもの」

「まぁ、多少の反感はあると思うけどな」

「現時点で、砦で働いている人に関しては反感があるかもしれませんが、新しく入る人に関しては、拒否するのであれば、入れなければいいだけのことです。違いまして?」

 切り捨てるものは切り捨てる。冷たいと思われるかもしれませんが、致し方ないことですわ。

「違わない。他に要望は?」

「ありませんわ」

 全面的にプロにお任せしますわ。

「分かった。……悪いが、後はこちらでするから、皆持ち場に戻れ」

 そう命じられ、雑用をしていた兵士たちは執務室から出て行きます。それを見た私は同行していたスミスに対し小さく頷くと、スミスは何も言わず執務室を退室しました。

 アーク隊長が人払いをする理由が何なのか察した私は、念のために結界を室内に張ります。外に漏らす訳にはいきませんからね。

「人払いをしてまで訊きたいことは、シオン様のことですね」

 張り終えてからそう切り出します。

「ああ。そうだ。親父のことは皆に内緒だからな。ソリア。一度親父に会えないか? 難しいのは理解している。でも、どうしても心配なんだ」

 アーク隊長の気持ちは痛い程分かります。たった一人の親ですもの。いくら私が無事だと告げても、心配に決まってますわ。私も出来ることなら、アーク隊長たちに見舞って欲しい。だけど……

「……私も出来ることなら、アーク隊長たちに見舞って欲しいと思いますわ。でも、正直無理でしょう」

 そう答えるしかありません。

「どうしても駄目か」

「ええ。竜族は他のオスを番に近付けるのを最も嫌がります。それが血縁者でも。シオン様が許されているのは、意識がないことと、私という番がいるからですわ。番を持たないアーク隊長たちは許されないでしょう」

「……やっぱり無理か。頭では分かっているんだ俺も。竜族の番に対しての思い入れがすごいことをな。……悪かったな。無理な願いをして」

 私に対し気遣うように笑みを浮かべながら言うアーク隊長を見て、私は苦しくなりました。でも、こればかりは私でも無理な相談なのです。

 こうして気まずいまま、砦の引き継ぎは終わりました。






☆☆☆

 
 第四回キャラ文芸大賞にエントリーしてます。

 タイトルは【護国神社の隣にある本屋はあやかし書店】です。

 気楽に読めますので是非(。•̀ᴗ-)✧
 



 
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