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貴方の傍らで
第三話 意外な人が手伝いに来てくれました
しおりを挟む「まさか、アーク隊長が来てくれるとは思いませんでしたわ。ありがとうございます。ほんとに助かりますわ。でも、伯爵領は大丈夫なんですか?」
少し前から、私の代わりに砦を統括出来、魔物討伐に秀でた方をお父様に打診していました。
アーク隊長なら多額のお釣りがきますわ。だけど、アーク隊長はコンファ伯爵領の次期当主。とても助かるのですが、いいのでしょうか。まぁお父様がいいといっているようなので、大丈夫だと思いますが……
さすがに、領主の仕事をしながら、学園にも行き、理事長を務めながら砦を統括するのは厳しいものがありましたから。幾つ体があっても足りません。
皆が助けてくれますが、最終判断とサインは私がしないといけませんからね。どの仕事も中途半端に出来ませんもの。なので、人手の手配を頼みましたの。
春は魔物が凶暴化する時期です。今回は何とか乗り越えることが出来ましたが……あの時期は、半分体から魂が出てましたわ。毎日、魔の森と元王宮の往復でしたからね。シオン様の所は別として。
「大丈夫だ。今はルークとユナが頑張ってくれてる。親父が目を覚ますまで交代で手伝うよ。何人か連れて来たしな」
そういうと、アーク隊長は連れて来た配下を紹介してくれました。全員見知った顔です。禁止薬物の操作の時に手伝ってくれた人たちでした。アーク隊長はわざわざ彼らを選んでくれたようです。
その配慮に、私は心の底から感謝です。
「禁止薬物の件以来ですね。皆さんお元気そうで何よりです。また宜しくお願いしますね」
軽く頭を下げ頼みます。
皇族である私が頭を下げることに、文官たちは驚き眉を顰めていますが、これが体育会系の連中にとっては正解の態度なのです。
「「「「「はい!!」」」」」
心強い味方ですわ。これで大丈夫ね。
そんなことを考えていると、アーク隊長が私の顔に手を伸ばして来ました。目の下を親指で撫でられます。
「……セリア。隈が出来てる。顔色も悪い。ちゃんと食べてるか? 寝てるか? 無理してないか? 何で、もっと早く俺たちを頼らなかった。俺たち家族だろ。昔も今も。
まぁ……頼り難い気持ちもわからない訳じゃないが……それでも、頼って欲しかった」
半分怒りながら、残り半分は傷付いたような、何とも言えない表情をしながら、アーク隊長は私を気遣います。
頼り難かったのは事実です。
私はアーク隊長とルーク隊長から婚約を打診されていたのに、選んだのは二人の父親でした。アーク隊長とルーク隊長が真剣に私を想って下さったことは嬉しいです。でも……私は二人を兄としてしか見れなかった。今もそうです。
「……すみません」
「謝るな。責めてる訳じゃない」
微笑みながら、私の頭をポンポンと叩く。こういう仕草、ほんとシオン様てよく似ています。さすが、親子ですわね。
「……はい。ありがとうございます。アーク隊長」
ニッコリと微笑みながら、もう一度お礼を言うと、何故かアーク様は「ウッ」と呻き、鼻を押さえ私に背を向けます。
「アーク隊長。どうかしましたか?」
もしかして、私臭い?
はしたないですが、思わず、袖口を嗅いでみましたが、特に臭くはなかったのですが……念のために着替えた方がいいですね。
「……いや、大丈夫だ」
「なら、良かったですが……スミス、皆さんのもてなしを。少し場を離れます」
「はい。畏まりました」
私は執務室を出て自室に向かいました。勿論、着替えるためですわ。
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第四回キャラ文芸大賞にエントリーしてます。
タイトルは【護国神社の隣にある本屋はあやかし書店】です。
気楽に読めますので是非(。•̀ᴗ-)✧
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