47 / 342
悪役令嬢と呼ばれましたわ
どこを間違ったの
しおりを挟む「本当にここを下りて行けばいいんだよな?」
地下へと続く螺旋階段を下りながら、マルティスが訊いてきた。
「そうよ。私の言うことに間違いなんてないんだから、安心してよ」
何度も訊いてくるマルティスに、うんざりしながらも愛想よく答えてあげた。だって、途中でほっとかれたら嫌じゃない。こんな薄気味悪い所にさ。まぁ、私をほっとくなんて、まずあり得ないんだけどね。
ほんと、この男ってちょろかったわ。今も、ちょっと微笑んだだけで、鼻の下伸ばしちゃってさ。顔はいいけんだけど、頭は空っぽなのよね。だけど、自分は優秀だって思ってる。勘違い野郎。ほんと笑える~~。で、プライドも滅茶苦茶高いのよ。つくづく残念な男よね。そこそこの地位もあるし、利用するにはもってこいなんだけど、そろそろ潮時かもしれないわね。まぁ、これが上手くいったら、もうお払い箱なんだけどね。
悪いけど、私の推しは昔から、ユリウス様一択なの。私しかユリウス様を幸せに出来ないの。あの偽者じゃない。そもそも、あの薄気味悪い女がユリウス様の隣に立つなんて許せないわ。レイファ様もそう。クラン君も。皆あの偽者に騙されてるのよ。
あの女狡猾だから、皆気付かないのよね。だけど、私は知ってる。あの女がどれほど最低な女か。いくら口で言っても誰も信じてくれない。だけど、私は優しくて強いから、挫けたりはしない。皆を救ってみせるわ。
だって、私はヒロインなんだから!!
私がハマってずっとやってたゲームはシリーズ化されていてね、今取りに行ってるのは、ヒロインが王子様を呪いから救うアイテムなの。これがあれば、ユリウス様の呪いは無くなって、私とユリウス様は幸せになるの。待っててね、ユリウス様。
「……いつまで続くの? この階段」
苛々してきた。もう二十分以上は下り続けてるのに、ゴールが見えないんだけど。
「…………もしかしたら、目くらましの魔法が掛けられてるんじゃないか?」
目くらましの魔法……?
「エレノア……?」
考え込む私を心配して、マルティスが名前を呼ぶ。完無視よ、完無視。
煩い、少しは黙っててくれる。今、思い出しそうなんだから。プレイはしてないけど、攻略本は読んだから攻略の仕方は知ってる。確か……ヒロインの王子様を想う無心の心が、祈りが、魔法を解いた筈。
そうよ!! これは、試練の回だったわ。ヒロインは試されていたのよ。なら、大丈夫。私はユリウス様を愛してるわ。
ユリウス様だけを想いながら、階段を一段一段下りたわ。すると、さっきまでゴールが見えなかったのが嘘のように、ほんの五分程で地下に到着したの。
やっぱり、私ってヒロイン。試練の回、無事突破したん…………だ……よ…ね……。
なのに、目の前にいるのは何なの?
…………どうして?
ここに魔物がいるの?
どうして、口元が赤く染まってるの?
前足で踏んでるのは何なの……? マルティスは? いない? じゃあ、それって……!?
血に染まってるが、見慣れた制服。
さっきまで一緒にいた筈なのにーー。
「う、嘘よ…………い……い、嫌ーーーーーーーー!!!!!!」
どうして、私はヒロインだよね。なのに、何で、こんな目に合わなきゃいけないの?
体が燃えるように熱いよ。感覚がなくなってきたよ。どんどん力が抜けていく。私、死ぬの……こんな形でリセットなんて、バッドエンドもいいところじゃない。ほんと、最低~~。
ねぇ……どこを間違ったの?
「始めからよ」
意識を失う直前、そんな声を聞いた気がした。
納得。そっかぁ……始めからか…………リセットしたら、また始めからやり直さなきゃ………………
「それは無理ね」
意地悪言わないで…………私は……ヒロインな……ん…………だ……か…………ら…………………
68
お気に入りに追加
7,462
あなたにおすすめの小説
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。

妹のことを長年、放置していた両親があっさりと勘当したことには理由があったようですが、両親の思惑とは違う方に進んだようです
珠宮さくら
恋愛
シェイラは、妹のわがままに振り回される日々を送っていた。そんな妹を長年、放置していた両親があっさりと妹を勘当したことを不思議に思っていたら、ちゃんと理由があったようだ。
※全3話。

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。
くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」
「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」
いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。
「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と……
私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。
「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」
「はい、お父様、お母様」
「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」
「……はい」
「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」
「はい、わかりました」
パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、
兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。
誰も私の言葉を聞いてくれない。
誰も私を見てくれない。
そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。
ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。
「……なんか、馬鹿みたいだわ!」
もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる!
ふるゆわ設定です。
※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい!
※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ!
追加文
番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です

婚約者が、私より従妹のことを信用しきっていたので、婚約破棄して譲ることにしました。どうですか?ハズレだったでしょう?
珠宮さくら
恋愛
婚約者が、従妹の言葉を信用しきっていて、婚約破棄することになった。
だが、彼は身をもって知ることとになる。自分が選んだ女の方が、とんでもないハズレだったことを。
全2話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。