婚約破棄ですか。別に構いませんよ

井藤 美樹

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悪役令嬢と呼ばれましたわ

私はヒロインなのよ

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 エレノアになる前の私の人生なんて、碌なものじゃなかった。

 ほんと、糞のような人生って言っても大袈裟じゃない程酷かったよ。マジで。

 死ぬ前の二年間は完全に引きこもりだったしね。その間、家族の顔も見てないし。正直、いつ死んだのかも分かんないや。すごく眠くなったのは覚えてるから、たぶん、その時に死んだんじゃないかなって思ってる。

 でもね。

 まさか、ネット小説でよく書かれているようなことが、現実に起きるなんて思いもしなかったよ。

 そんな夢のようなことが自分の身に起きてるなんて知らない私は、いつもと同じように起き目を覚ましたの。

 あれ……体が動きにくい。変な寝方したからかな。一瞬、そう思ったわ。だけど直ぐにおかしいなって感じたのよね。

 だってそこは、さっきまでいた薄暗い汚部屋じゃなかったんだもん。勿論、変な匂いもしないし。まるっきり自分の部屋とは違ったのよね。

 いったい、ここはどこなの……?

 答えは意外に直ぐに分かったわ。起き上がって、自分の顔を見た瞬間にね。

 分かった途端、私は神様って本当にいるんだって実感したの。だって、ここは私が大好きなゲームの中なんだから。

 そして、私はこの世界を救うヒロイン。

 ヒロインよ。ヒロイン!! 何の取り柄もなくて、顔もブサイクでデブだった私がよ。信じられる? でもね、これが現実なの。あの頃の生活がまるで嘘のようにさえ思えるわ。

 皆がね、私を愛してくれるの。期待してくれるわ。そして、褒めてくれる。私をね、見てくれるの。

 何よりも、私という存在を認めてくれる。

 今私がいるこの世界は、引きこもりの私にとって理想の世界だった。だから、このゲームにのめり込んだの。やり込んだわ。ヒロインの台詞を暗記出来るくらいにはね。

 だから、私には分かるの。

 これから先、コンフォート皇国に何が起きるのかがね。

 ゲームのストーリはこうよ。

 傲慢で我儘だった悪役令嬢のセリアが、婚約破棄されて魔の森に追放されるところから、物語は始まるの。

 そして悪役令嬢は、お約束通り闇落ちするのよね。自業自得なのにね。

 闇落ちした悪役令嬢は黒炎の魔女と名乗り、魔物を率いてコンフォート皇国を攻め込もうとするのよ。酷くない? それを聖女である私、エレノアが仲間と共に戦い退治する。

 そこで知らされるの。本当は、エレノアがコンフォート皇国の皇女で悪役令嬢が偽物だって。当然よね。

 そして最後は、育ての親と新しい家族に見守れながら、エレノアは仲間の一人と結婚してハッピーエンドで終わるの。

 攻略者はシークレットも入れて五人。
 
 私のイチオシは、勿論シークレットのユリウス様よ。彼が攻略するには、他の四人を攻略しなくちゃいけないの。 

 本格的にゲームが開始されるのは六年後。

 楽しみ~~。

 そう思ったのに、いざゲームが開始したら、攻略者は全員学院にいなかった。学園にいたのよ。そんなことってある? マジありえない。あんだけ楽しみにしてたのに!!

 ましてや、攻略者の二人伯爵家のアーク様もルーク様も学生じゃなかったのよ。

 悪役令嬢はちゃんと婚約破棄された筈なのに。おかしいわ。でも、すぐに理由が分かったわ。追放されてなかったのよ。そのせいね。悪役令嬢が魔の森に追放されないと物語は始まらないのよ。

 悪役令嬢も私と同じ転生者ね。だから、バグが起きたのよ。死にたくない気持ちは分かるけどさ、そこは運が悪かったって諦めてよね。私のために。

 しょうがないわね。だったら、私が物語を始めさせるしかないでしょ。



 そう息巻いて学園に来たのに、どうして思った通りにいかないの……?

 全部、あの悪役令嬢のせいよ!!

 あの悪役令嬢がヒロインポジにいるせいじゃない。許せない!! そこは私の居場所よ!! 絶対、取り返してみせるわ。



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