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学園は勉強するところです
俺の地獄は今始まったばかりだ
しおりを挟む毎日毎日繰り返される尋問。
あの女が言ったことは嘘じゃなかった。大袈裟でもなかった。謁見の間で行われた尋問など毛が生えたようなものだ。
少しでも吃ったり嘘を吐いたら、即座に反応する魔法具。
激痛で苦しむ俺に、ペナルティーとして尋問官は体の一部を削いでいく。但し、体の機能を失わせない程度にだ。そこに特別な感情はない。ただたんに、自分の仕事を黙々としているだけだった。
それが更に恐怖を生んだ。
まるで人間を、俺を、無機質なモノのように見る目が怖い。
もう……悲鳴さえ上げられない。喉がやられたみたいだ。涙さえ出なくなった。出るのは息を吐く時に出る僅かな音だけだ。
だけど、尋問は無情にも続く。俺は僅かに出る音で何とか答えるしかない。
「はい」とーー。
全ての尋問が終わった瞬間、中級ポーションを飲まされ傷は治った。
そして数日後。
判決の日が来た。やっと刑が決まる。おそらく俺は死刑だろう。それも残忍な処刑法で殺されるに決まっている。この国の皇女の殺害を仄めかしたのだから。
連行された裁判所でギルバートやルイス、ソフィアに会った。リベルもだ。
皆、目立った傷はなさそうだ。だが全員、死んだ魚のような濁った目をしていた。おそらく俺もだ。特に何も感じない。嘗ての仲間に会ったのに。何の感情も湧いてはこなかった。たぶん俺は、半分死んだんだ。アイツらもな。
判決は意外な結果で終わった。
ギルバートとルイス、そしてリベルは犯罪奴隷として伯爵家へと連行された。ソフィアもだ。
俺も犯罪奴隷として、伯爵領の魔の森で働かされることに決まった。
てっきり、死罪とばかり思っていたが……幸か不幸か俺たちは生き残った。
おそらく、俺には魔力と高い戦闘能力があったからだ。そのおかげで、死罪は免れたらしい。使い勝手のいい道具として、俺を使い潰す気なんだろう。簡単に死なせてはくれないようだ。
アイツらも優秀な部類の人間だ。得意分野をいかして、俺のように使い潰されるんだろうな。
皆と別れ、俺は一人、護送車に乗せられ砦に連れて来られた。
「犯罪奴隷に自由はない。勿論、生殖関係もな。だから、管理させてもらおう。切り落とすのは簡単だが、それをすると筋肉が落ちるからな」
そう告げられて、乱暴に放り込まれたのは、兵士やハンターたちの詰所だった。
「魔物討伐の他にもう一つ、大事な仕事がある。こいつらを静めることだ」
静める……? どういう意味だ。
「安心しろ。幾ら傷を負っても一晩で治る。四肢を切断するような変態はいないから、その点は大丈夫だ。じゃあな。せいぜい可愛がってもらえよ、元王子様。それから、終わったらちゃんと掃除しとけよ」
連れて来た男はそう告げると、休憩所を出て行った。
同時に伸びて来る男たちの手。
瞬時に理解する。
男が言った「静める」って言葉の意味を。
俺はこの時、忘れていた感情を二つ思い出した。
悲鳴を上げ必死で逃げようとするが、却ってそれが男たちに火をつけた。満腹な猫がネズミをいたぶって遊ぶように、男たちは俺をいたぶる。
魔法を使おうとするが、発動しない。当然だ。犯罪奴隷が自由に魔法が使える筈ない。
絶望と恐怖ーー。
見開いた目には、血走る目で俺を見下ろす男がたちの顔だった。
俺の地獄は今始まったばかりだ。
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