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学園は勉強するところです

国王と宰相は国の脆さを知る

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「それで、商会の息子の様態は?」

「まだ、目を覚ます気配はありません。覚せば直ぐに始められます」

 何度同じことを訊き、同じ答えを返しているだろう。何十回も交わされた会話。

 国王と宰相、両者の声には全く覇気がなかった。目の下には何重もの隈が出来ている。それは国王の横に立つ宰相も同じだった。この数日、二人ともろくに寝ていない。

 国王と宰相をここまで憔悴させたのは、コンフォート皇国とセフィーロ王国から届けられた書状が原因だ。

 両国から告げられたのは、同盟の破棄だった。

 突然の同盟の破棄ーー。

 それによって、この国は隣接する全ての国から完全に孤立することになった。

 国境も封鎖され、人の動きも制限された。物資も入って来なくなった。

 このままこの状態が長く続けば、我々グリフィード王国の民は間違いなく餓死する者が出て来るだろう。そして、いずれは国として維持出来なくなり崩壊する。この時になって、国王と宰相は我が国が如何に脆いか知った。

 何としても、国を護らなければならない。我の代で終わらせる訳にはいかぬ。

 国の崩壊を回避するためには、コンフォートとセフィーロに頭を下げ許しを乞うしか道はない。

 そもそもの原因はこちら側にあるのだ。

 コンフォート皇国の第一皇女セリア様とセフィーロ王国の公爵令嬢リーファ孃を、我が国の民が、アルベルト王太子襲撃犯に仕立てようとしたことにあった。全面的にこちらが悪い。

 馬鹿な話だ。愚かにも程がある。

 おそらく、ウィリアムの借金を少しでも減らすために、あいつの信仰者たちが犯したのだろうと容易に想像出来た。出来たが、これといった確証がない。

 一応、ルイス、ギルバート、ソフィアの三名の身柄は押さえている。

 状況証拠なら三人とも真っ黒だ。だが、確証がない。

 唯一の証拠は、リベル=グランハットだけだが、その学生もルイスの手に掛かり、今はベッドの中だ。なんとか一命は上級ポーションのおかげで取り留めることが出来た。傷は塞がっておるが、一向に目を覚まさない。

 目を覚ましたなら、聞き出せるものをーー。

 まこと腹立たしい限りだ。

 アルベルトの奴が、もう少し早く踏み込んでおったらと悔やむが、それを今更責めても何も生まれん。

 踏み込んだ際、その場にいた大勢の騎士たちが、「あの女」「加害者」という言葉を、確かにソフィアの口から聞いたと証言している。箝口令を敷いているのに、まるで事件のことを知っているかのような反応。そのような物言いだったと聞く。

 だが、それだけでは証拠として不十分だ。平民ならまだしも、三人は貴族だ。曖昧な罪では裁けぬ。ウィリアムもだ。

 実際、三人は厳しい取り調べにおいて否認している。当然、ウィリアムの関与もだ。

 ルイスがリベルを攻撃したのは、ソフィアを殺そうとしたからだと証言し、ソフィアもギルバートも同じ証言をしている。そこに、矛盾や綻びがない。

 ハンターからリベル=グランハットの名前が出た時、背後に誰かがいることは容易に想像出来た。

 一介の商会の次男風情がこんな計画を立てる必要性がどこにある。それに、こんなことを起こして、彼に何の得があるというのだ。誰が考えても答えは否だろう。

 面倒だから、一層のこと、全員の首をはねて渡せれば楽なんたが、そうはいかない。聖女もこの際もうどうでもよい。

 コンフォートもセフィーロも生かしておくようにと言ってきた。

 自分たちの手で罪人たちを処罰したいのだろう。

 コンフォート、セフィーロが設けた期間は一週間。

 あと二日しかないーー。



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