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婚約破棄されました
大隊長は大きな溜息を吐く
しおりを挟むセリアが一方的に婚約破棄された。
それも冤罪でだ。
全く実家に帰ろうとしないセリアを、わざわざあいつに会わせるために、俺は祝賀会のパーティーを欠席した。そして代わりに、セリアに行かせることにした。活動期を理由にな。
その結果がこれだ。
あんなことを仕出かすと知っていれば、俺も参加して、あのクソガキをぶちのめしてやったのに。まぁ、すぐにその機会はきたけどな。
今でも、血が沸騰する程に怒りが込み上げる。
俺にとって、セリアは娘のようなものだ。その可愛い娘を奴はこけにしやがったんだ。晒しもんにしたんだ。怒って当然だろう。殺したくなっても仕方ないだろう。自分たちのことなどどうでもいい。言わせておけばいい。大事なのはセリアだ。
だが結果として、あの屑とセリアとの縁が切れたことは心からよかったと安堵している。ほんとに、屑の中の屑だったからな、あいつは。そんな屑と婚約を交わす羽目になったのは、ずばり金のためだ。俺たち大人たちがだらしないせいで、子供にしわ寄せがきた。特にセリアにだ。
セリアはそれを淡々と受け入れていた。
それを不幸だとも思わない。皇女として当然だと考えていた。それは違うといくら俺たちが説いても、困った顔で苦笑するだけだ。そんなところはあいつも同じだった。ほんと、よく似てる親子だよ。だからこそ、不憫で、素直になれなない不器用な親子ともいえるんだが。
まぁ、婚約が白紙に戻ったことはよかった。
しかしこの事実は、周辺諸国にもすぐに伝わる筈だ。屑が場所を考えずにしたのも悪かった。チッ。また参加したくなったぞ。
いくら俺が娘だと思っても、セリアは皇女だ。当然、周辺諸国の王族から婚約の申し込みが殺到するだろう。まぁ早々すぐに、次の婚約は決まらないと思うが、ゆくゆくは決まるだろう。
そのことは、あいつらも分かってると思うんだが……。折角猶予が出来たんだ。早く手を打たないと、また横からカッ拐われるぞ。
本人はとうに侍女と一緒に帰ったのに、目の前でセリアを取り合ってる馬鹿な子供たちを呆れながら見ている。
これでも隊長だ。実務も実績もずば抜けている。だが、セリアが絡むと途端に馬鹿になる。ましてや、全員執着心が強過ぎるときたもんだ。
それは、セリアがこの地に来た時からだった。
長男のアークは穏便に婚約を解消し、ルークは婚約を始めから拒否した。ユナに至っては、性転換の薬の開発を始めやがった。始めは冗談だと思ったが、そうじゃないらしい。まだ男になってないから、完成はしてないだろう。永遠に完成しないことを父は心から願うぞ。
もし、この中の一人がセリアを射止めたら、俺は本当の父親になれるな。
子供たちよ、頑張れ。
そして、そろそろ気付け。セリアはとうに帰ったぞ。
今も牽制し合う子供たちを呆れた目で見ながら、俺は大きな溜息を吐いた。
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