72 / 78
聖国の大神官長様、今度は遊びに来る
05 だから腹黒なのよ
しおりを挟むユーリ様のたっての希望で、ベルケイド王国で一番美味しい魔物肉専門店に来ていた。
そして、今現在、注目の的になってます。容姿じゃなくて、違う意味で。
朝から魔物肉って……ユーリ様にとって、なかなかヘビーだと考えた私が馬鹿だったわ。半ば呆然としないながら、向かいに座るユーリ様を見ていた。
ちょっと待って。凄い勢いで、皿が空になっていくんだけど。同時に山積みになっていく。マジで、食べるスピード、イシリス様と同じじゃない。
本体が巨体のフェンリル様対人族。
普通なら、イシリス様には遠く及ばないはずなのに、それができるってことは、
「…………ユーリ様って、人間辞めましたの?」
思わず、ポツリと出てしまったわ。片足どころか、両足とも出てしまったのね。
「人聞きの悪いことを言わないでくれます。これぐらい、普通でしょう。ミネリア様は少食過ぎるのです」
「ユーリの言う通りだ。ミネリアは少食過ぎる」
イシリス様も参戦してきた。
一緒にしないでほしい。
それにしても、すっごい勢いで空になっていくのに、流暢に喋れるものね。もうこれ、一つの特技じゃない。
「いや、私が普通ですから。異常なのは、ユーリ様です。ユーリ様のお腹、マジックバックですか!?」
どこに消えてるのよ!?
「魔力を消費すると、お腹が空くのです」
あっ、それ聞いたことがある。確か、食事で補うパターンと睡眠で補うパターンがあるって。
「ユーリ様って、食事で補うのですね」
ユーリ様は小さく頷く。
……ん?
そんなになるまで、いつ魔力を使ったの? まっ、まさか!!
「……ユーリ様、あの魔法具を使用したからですか?」
それしか思い浮かばない。
品物が品物だけに、つい、小声で訊いてしまったわ。
「ええ、かなり燃費が悪くて」
マジか。しれっと肯定しないでよ。聖国のトップが魔力切れに近い状態になるって、どんだけ魔力を吸い取るのよ!? 燃費が悪いどころじゃないよね。一般人、いや、国所属の魔術師が誤って使ったら、魔力、生命力、全て吸い取られて、干からびて死んじゃう品物だよね!!
ユーリ様らしいといえばらしいけど。そんな危ない物を、何も言わずに渡すなんて……私、はやまったかも。
食事中なのに、大きな溜め息を吐いてしまう。
「……そのような危険な物、渡さないでくれます」
できるなら、即刻、返したいわ。
「その点は、問題ありません。私にしか使用できないように設定していますから」
だとしても、返したい。
私が考えていることなんて、ユーリ様にはお見通し。食事の手を止め、天使のような容姿を有効に使い「友人に会いたくて……我儘ですよね」と、声を震わせ呟く。
ざわつく店内。
これ、否定できない流れよね。完全に私、悪者じゃない。やられたわ……だから、腹黒なのよ。
「……返しませんから、安心してください」
そう言うしかないよね。
「ありがとうございます」
ユーリ様はニコッと微笑むと、また、美味しそうに食べ始める。
その姿を見て、誰も気付かれないように、私は小さな溜め息を吐いた。
42
お気に入りに追加
3,577
あなたにおすすめの小説
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から「破壊神」と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
私の幼馴染の方がすごいんですが…。〜虐められた私を溺愛する3人の復讐劇〜
めろめろす
恋愛
片田舎から村を救うために都会の学校にやってきたエールカ・モキュル。国のエリートたちが集う学校で、エールカは学校のエリートたちに目を付けられる。見た目が整っている王子たちに自分達の美貌や魔法の腕を自慢されるもの
「いや、私の幼馴染の方がすごいので…。」
と本音をポロリ。
その日から片田舎にそんな人たちがいるものかと馬鹿にされ嘘つきよばわりされいじめが始まってしまう。
その後、問題を起こし退学処分となったエールカを迎えにきたのは、とんでもない美形の男で…。
「俺たちの幼馴染がお世話になったようで?」
幼馴染たちの復讐が始まる。
カクヨムにも掲載中。
HOTランキング10位ありがとうございます(9/10)
【完結】両親が亡くなったら、婚約破棄されて追放されました。他国に亡命します。
西東友一
恋愛
両親が亡くなった途端、私の家の資産を奪った挙句、婚約破棄をしたエドワード王子。
路頭に迷う中、以前から懇意にしていた隣国のリチャード王子に拾われた私。
実はリチャード王子は私のことが好きだったらしく―――
※※
皆様に助けられ、応援され、読んでいただき、令和3年7月17日に完結することができました。
本当にありがとうございました。
転生皇女は冷酷皇帝陛下に溺愛されるが夢は冒険者です!
akechi
ファンタジー
アウラード大帝国の第四皇女として生まれたアレクシア。だが、母親である側妃からは愛されず、父親である皇帝ルシアードには会った事もなかった…が、アレクシアは蔑ろにされているのを良いことに自由を満喫していた。
そう、アレクシアは前世の記憶を持って生まれたのだ。前世は大賢者として伝説になっているアリアナという女性だ。アレクシアは昔の知恵を使い、様々な事件を解決していく内に昔の仲間と再会したりと皆に愛されていくお話。
※コメディ寄りです。
夫が十歳の姿で帰ってきた
真咲
恋愛
「これが、俺の未来の妻だって?」
そう言って帰って来た夫は、十歳の姿をしていた。
両片想いの伯爵夫婦が三日間で自分の気持ちに気づく、或いは幼少期の自分にしてやられるお話。
他サイトにも掲載しています。全4話。一万字ちょっとの短いお話です。
その結婚、喜んでお引き受けいたします
Karamimi
恋愛
16歳の伯爵令嬢、マリアンヌは、1年前侯爵令息のダニエルから、公衆の面前で一方的に婚約破棄をされた。そのせいで、貴族界では好奇な目に晒され、さらにもう結婚は出来ないだろうとまで言われていた。
そんな中、マリアンヌと結婚してもいいという男性が現れた。相手はなんと、以前からマリアンヌが慕っていた、侯爵家の当主、グリムだった。
まさか好きな男性に嫁ぐことが出来るだなんて!でも、本当に私でいいのかしら?不安と期待の中、嫁いでいったマリアンヌを待ち受けていたのは…
不器用だけれど誰よりもマリアンヌを大切に思っている若き当主、グリムと、過去のトラウマのせいで完全に自信を失った伯爵令嬢、マリアンヌが、すれ違いの日々を乗り越え、本当の夫婦になるまでのお話です。
グリムがびっくりする程ヘタレですが、どうぞよろしくお願いします。
断罪シーンを自分の夢だと思った悪役令嬢はヒロインに成り代わるべく画策する。
メカ喜楽直人
恋愛
さっきまでやってた18禁乙女ゲームの断罪シーンを夢に見てるっぽい?
「アルテシア・シンクレア公爵令嬢、私はお前との婚約を破棄する。このまま修道院に向かい、これまで自分がやってきた行いを深く考え、その罪を贖う一生を終えるがいい!」
冷たい床に顔を押し付けられた屈辱と、両肩を押さえつけられた痛み。
そして、ちらりと顔を上げれば金髪碧眼のザ王子様なキンキラ衣装を身に着けたイケメンが、聞き覚えのある名前を呼んで、婚約破棄を告げているところだった。
自分が夢の中で悪役令嬢になっていることに気が付いた私は、逆ハーに成功したらしい愛され系ヒロインに対抗して自分がヒロインポジを奪い取るべく行動を開始した。
村八分にしておいて、私が公爵令嬢だったからと手の平を返すなんて許せません。
木山楽斗
恋愛
父親がいないことによって、エルーシャは村の人達から迫害を受けていた。
彼らは、エルーシャが取ってきた食べ物を奪ったり、村で起こった事件の犯人を彼女だと決めつけてくる。そんな彼らに、エルーシャは辟易としていた。
ある日いつものように責められていた彼女は、村にやって来た一人の人間に助けられた。
その人物とは、公爵令息であるアルディス・アルカルドである。彼はエルーシャの状態から彼女が迫害されていることに気付き、手を差し伸べてくれたのだ。
そんなアルディスは、とある目的のために村にやって来ていた。
彼は亡き父の隠し子を探しに来ていたのである。
紆余曲折あって、その隠し子はエルーシャであることが判明した。
すると村の人達は、その態度を一変させた。エルーシャに、媚を売るような態度になったのである。
しかし、今更手の平を返されても遅かった。様々な迫害を受けてきたエルーシャにとって、既に村の人達は許せない存在になっていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる