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成り立てほやほや王女殿下の初外交
18 決着がついたようです
しおりを挟む「一滴も血を流さずに、奪い取ったようだな」
イシリス様が私の膝の上に顎を乗せながら、ポツリと呟く。
今日もいいお天気だわ。
「まぁ、当然でしょ。あの馬鹿たちに遅れをとるようなら、すでに終わっています。一国の王になるなんて到底無理な話ですわ」
イシリス様の頭を撫でながら私は答える。
近いうちに動きがあるとは思っていたけど、考えていたよりも早く決着がついた。
「で、馬鹿たちはどうなったんだ?」
気になるわよね。私もそうだったから。
「前国王と王妃、第一王女は北の塔に幽閉されたそうですよ。監視しやすいように一箇所に放り込んだみたいですね。まず、一生出てこれないでしょう」
今度は間違いなくね。馬鹿は何を仕出かすかわからないから一緒に。絶対、突拍子のないことをやらかすに決まってる。
「まぁそうだが、監視する奴、大変だな」
なんとも言えない表情をするイシリス様。本来の御姿でも、じゅうぶん伝わるわ。
「確かに、そうですわね。私なら耐えられませんわ。違う意味で、精神がやられます」
苦笑しながら、私は答えた。
すっごく、煩そうじゃない。わけわかんないヒステリー起こして。深夜問わず毎日続きそうだし。
「俺もだ……」
イシリス様、想像しただけでげんなりとなってるわね。そりゃあそうか。特に耳が良いイシリス様なら、私たち以上に地獄よね。げんなりしているイシリス様が可哀想なので、話を先に進めよう。
「そうそう、イシリス様知ってます? 前国王たちが捕り抑えられた時の様子」
「詳しいことは聞いてないな」
イシリス様の声が少し弾んでいる。興味を引いたよう。
「なんでも、前国王は踊り子と楽しんでいた最中にのりこまれ、王妃は寝室で近衛騎士とお楽しみの最中だったとか。似た者同士ですよね。さすが、夫婦ですわ」
エンドキサン王国の前国王夫妻が、揃って下衆だったのは驚いたわ。前国王は好色そうだったけど、まさか王妃までもがね……いやいや、爛れきってるよね。もうやりたい放題って感じ。王族だった屑も好色だったし、またしても共通点みっけ。嬉しくないけど。
ところでさぁ……つくづく思うけど、家の暗部たちって、すっごく優秀じゃない。まるで、その場で見ていたような、精細に記載された報告書。あえてこちらから訊かないけど、たぶん、その目で見てたんだろうね。じゃなければ、書けないわよ。案外、踊り子が暗部だったりして。考えすぎよね……正直、怖い。でも味方なら、これ以上心強いものはないわね。
「……リアスを虐めた女はどうなんだ?」
「第一王女ですね。彼女は王都に戻って来た取り巻きたちと、お茶会をしている最中に捕らえられたそうですわ。リアスに直接手を出した侍女と騎士も。全員捕まえ、第一王女以外全員、平民の牢屋に放り込んだと書いてありました」
迅速な行動よね。やるわね、先代国王に王太子殿下。徹底的に膿を出し切るつもりね。取り巻きの一人は公爵令嬢だったし。なら、しばらく荒れるわね。ベルケイド王国には直接影響はないと思うけど、隣接している国はさぞかしピリピリしてるでしょうね。腐っていても、大国なんだし。
「なかなかやるな」
イシリス様がニヤリと笑う。
「同感ですわ。取り巻きたちは貴族牢ではなく、平民の牢屋。侍女と騎士には激しい尋問。……やっと、話ができる状態になりましたね。話をするかどうかは、お父様次第ですけど」
私的にはどっちでもいいけどね。
「俺は、この時間が邪魔されなければいい」
人型に姿を変えたイシリス様が、熱い目で私を見上げ囁く。
瞬時に真っ赤になる私だけど、ここで逃げ出すのは嫌。だから、なんとか逃げ出さずに言った。
「……私もですわ」
とても小さな声だったけど。
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