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成り立てほやほや王女殿下の初外交

06 選択

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 さっそく私はお父様に報告し、エンドキサン王国の第一王女に、そして、あのお茶会に参加していた腰巾着たちにも抗議文を送った。

 当然、リアスを苛めていた侍女と、見て見ぬ振りをしていた近衛騎士の名前も同封してね。当然でしょ。

 調べはついていたからね。

 あっ、そうそう、あのお茶会の映像と音声も一緒に送ってやったわ。下手に言い訳されるの嫌だからね。なんせ、溺愛されてる我儘王女だもの。我儘王女の言い分を鵜呑みにされたらたまらないもの。

 すると、速攻でやって来たわ。使いの者が書状を持って。

 ふ~ん。文官としては、そこそこの身分のようね。見たところ、宰相補佐ってところかな。まぁ、そこまではまだいいわ。だけどね、後が悪かったわ。詫びたいから登城してくれと書いてあったのよ。つまり、私たちを呼び付けたのよ!! 

 はぁ!?

 思わず、声が出そうになったわ。

 なに抜かしてるの!? こいつら。そっちが、来るべきじゃない!! 我が国を軽く見てるの!? ……そう、理解したわ。エンドキサン王国は私たちベルケイド王国を軽く見てるのよね。マウントをとりたいわけか。大国だから。

 今、扇を持っていたら、絶対折ってたわね。

 私でもそうだもの。お父様の顔にも青筋が。

 謁見室に控えていた執事や従者、侍女たちの殺気が漏れ出て部屋をゆっくりと満たしていく。

 戦いを知らない使いの方が腰を完全に抜かしてるわ。お漏らしはしないでよね。汚いから。

「はぁ!? なんで、こっちがわざわざ行かないと行けないんだ!? 馬鹿も寝てから言え!!」

 当然、お父様はそう怒鳴ると追い返した。

「それで、どうします? 陛下。このまま滞在して様子を見ますか、それとも帰りますか?」

 使いの者が出て行ってから、私はお父様に尋ねた。

 私的には、どちらを選択してもいいと思うの。

 このまま滞在して、エンドキサン王国の恥を周辺諸国の方々の前で晒させてもいいし、完全に国交を断絶するのもいいしね。どちらを選んでも、エンドキサン王国にとったら、かなりのマイナスよね。それに、後者を選んでも、私たちは特に困らないもの。小国舐めんな!!

「…………そうだな、帰るとするか」

 少し考えた後、お父様はそう決断した。

 そっちを選択したのね。さぞかし、エンドキサン国王は慌てるでしょうね。だって……。口元が緩むわ。

 お父様の決断に、室内にいた者たちが一斉に動き出した。ほんと、優秀だし頼りになるわね。

「では、国交断絶で。サインは、まだしてないのでしょ」

 滞在最終日に、周辺諸国の方々と国交を結ぶサインをすると聞いていたから、まだしてないはず。面目まるつぶれよね。いい気味。

「ああ、してない」

「なら、大丈夫ですね。ベルケイド王国は特に困りませんもの。それよりも、追い付かれると色々と厄介ですわ。さっさと出て行きましょう」

「そうだな。俺も荷造りを手伝うか」

「私はイシリス様をこちらにお呼びしますわ」

 イシリス様なら、この屋敷にいる全員と荷物を、一瞬でベルケイド王国まで運んでくれるから、追い付かれる心配はないわ。

「聖獣様を?」

「分霊体である子狼さんを目印に飛んで来れるそうですわ」

 だから、常に連れて歩くように言われていたの。いざって時に、助けにいけるからって。

 それにしても、選択を間違えないようにって、わざわざ忠告してあげたのに。こんな大事な場面で、選択を間違えるなんて、ほんと馬鹿よね。

 
 
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