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王族の心構えを教えてもらいました
しおりを挟む一応、私はゼシール王国の第二王女になったけど、生活の拠点はコルディー公爵家だからね、パーティーが終わった次の日には早々に公爵家に戻って来たよ。皆に引き止められたのを断ったからか、カイナル様の機嫌がすっごくいいの。
でも、それカイナル様のためじゃないよ。あれ以上王宮に残っていたら、人の視線に疲れそうだったからね。どんなに上手く隠していても、恐れと興味を含んだ目で見られて観察されているの、わかっていたから。
一応、一日休んでから学園に登校したの。対して変わってはいないんだけど……正直に言えば、少し悪化したようだった。
いや……前からボッチだったことには変わんないんだけど、離れていた距離がさらに二メートルほど後退した気がするんだよね。そのせいで、話し掛けてくるのはアジル殿下とスノア王女殿下だけ。そこは変わんない。あとは、なし。挨拶さえなくなった気がするよ。私がすればするけど、反対はないわね。
寂しくはないわよ。その方が勉強はかどるし、勉強するために入学したんだから。そうだよ、私には夢があるの!! 一級司書官になる夢がね!!
とはいえ、少し息抜きしたくて避難はしてるけど。スノア王女殿下も一緒にね。
「……ユリシアって、本質は寂しがり屋ですよね」
スノア王女殿下が変な誤解をしてるわ。顔を覗き込まれて、ドヤ顔で言われてるけど間違ってるから。
「スノアお姉様は誤解していますね。全く、寂しくはありませんわ。私は勉強をしに学園に来ているのですから」
私がそう訂正すると、スノア王女殿下はニッコリと笑った。
「寂しくない人は、全くとは言わないわ」
そう言われると、何故か反論できない。認めているようで、なんか面白くないわ。だとしても、ここで反論するほど馬鹿じゃないわよ。自ら、墓穴掘りたくないしね。
「アジルお兄様は、今日は休みですか?」
なので、話を変える。
「ええ、今日は会議に出ているわ。例の件でね」
素直に応じてくれてよかった。そっかぁ~アベルお兄様はまだ未成年で子供だけど、王太子だから出席してるのね。
「そうですか……」
長年友好国だった王国からの裏切り行為だからね。我がゼシール王国としては厳しい処置をかしたい所だけど、正直、そこまで厳しいものにはならない気がするの。
今でこそ、私は第二王女だけど、その前は平民だったからね。ゴルディー公爵家縁の者だとしても。身分差って、考えている以上に重たいんだよ。
「ユリシアが気にすることではないわよ。我が王国に喧嘩を売ってきた、コーマン王国が全て悪いのです」
「まぁ……そうなのだけど」
同情はしてないし、自業自得だと思ってる。だけど、胸の奥にわだかまりがあって、どうしても消えないの。それが嫌。
「まず間違いなく、コーマン王国とは友好国関係は凍結、払われていた関税その他、全て友好国関係になる前に戻るわね。それと賠償金でしょうか。ユリシア……貴女が胸を痛めているのは、コーマン王国の民のことね」
スノア王女殿下にそう訊かれ、私は小さく頷く。
「それは、ユリシアが気にすることではないわ。言い方が悪いけど、運がなかったとしか言えないわね。冷たいって思うかしら、でも、そう思わなければやってはいけないわ。王族はその国の一番偉い存在、そして、一番強くあらねばいけない存在ですわ。虚勢であったとしても、張り続けなければならないの、わかりますね、ユリシア」
スノア王女殿下にそう説かれ、私はハッとし顔を上げる。
「わかればよろしいですわ」
「……ありがとうございます、スノアお姉様。割り切ることは今は難しいかもしれませんが、忘れずに覚えておこうと思います」
その辛さが、王族であることなんだと思うから。
「それでいいわ。でも辛くなったら、ちゃんと家族を頼るのよ、いい」
「はい」
私はそう言ってもらって嬉しくて、微笑みながら答えた。でも次の瞬間、スノア王女殿下に抱き締められていたけど。
「ほんと、私の妹は可愛いですわ!!」
「スノアお姉様は、優しくて、とても頼もしいお姉様ですわ」
そうやって私たちがじゃれている横で、本来の部屋の主である生徒会長と副会長は、相変わらず空気になっていた。
国家の上層部の話を、いち生徒会室でしてるんだからしょうがないよね。
「……だけど、あの自己中女はそれではすませないわ」
耳元で、スノア王女殿下の低い声がした。
「それは大丈夫ですよ。カイナル様が、絶対、我が王国の法で裁くと言っていましたし、今頃は王族を剥奪されている頃だと思いますよ」
そう答えると、少し離れた場所から小さな悲鳴が聞こえた。反対にスノア王女殿下は、満面な笑みを浮かべて言ったの。
「そう……なら、裁判が行われるわね。公開裁判に切り替えてもらおうかしら。ならば、早速、陛下に直談判しなくては」
それからのスノア王女殿下の行動は早かったよ。早退して王宮に戻って、ほんとにしたらしい。結果はわかるよね。
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