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私の緊張を解してくれて、心から感謝するわ
しおりを挟むほんと、ゴルディー公爵家の騎士たちは優秀だよね。ちゃんと、パーティー会場のど真ん中にあの女を置いてきたんだから。それも、名前を呼ばれないままの入場だからね~かなり目立ったはずよ。
ましてや、ゼシール王国の高位貴族だけでなく、他国の来賓の方々も大勢いる中での放置。
カイナル様までとは言わないけど、かなり顔を知られているから、顔見知りも多いよね。だから、一人での入場だけど別に寂しくはないでしょ。
因みに、友好国だったコーマン国王夫妻は参加していないわ。ゼシール王国に入国していることは、皆に知られているのにね。そもそも、コーマン王国の者はユベラーヌ以外参加していないし、参加の仕方も、貴族、ましてや他国の王族に対するものではない。あの女なら、その意味が容易にわかると思うけど。当然、他国の来賓の方々もね。
そして、思い出す。囁かれている噂を――
コーマン王国の王女が、愛の女神レーシア祭の日に出会った運命の番の仲を、権力を使い引き裂こうとしている。ましてや、あまりにも度を越した行いのせいで、とうとう入国拒否されたと。
それが事実だと、参加している人たちは理解し、すぐに国に報告するわね。例え、あの中に信者がいたとしても、同じ泥舟に乗る者はいないでしょう。国を道連れにすることになるんだから。とはいえ、これは一般的な考え方。信者はどうか正直わからない。なので、最悪を想定して計画を立てたの。
まぁそれはさて置き、入国拒否されたのなら、何故この場にいるのか――
疑問に思うよね。でも、コーマン王女殿下の登場の仕方と国王夫妻の不参加で、理由はわからなくても、相当なことを仕出かしたことぐらい想像はできるよね。
さて、ユベラーヌ、貴女はこの状況を覆すことができるかしら。それだけの光を持ってるのかな? 入場が楽しみよ。私の緊張を解してくれて心から感謝するわ。
ねぇ、熱心な信者がいる貴女が、このパーティー会場でどれほど輝けるのか、果ては惨めに墜ちていくのか、この目でしっかりと確かめないといけないわね。
「楽しそうだな、シア。もうすぐ、俺たちの出番だ。準備はいいか?」
重厚な扉の前に立つ私とカイナル様。カイナル様が甘い顔と声で私に囁く。
「はい、大丈夫です」
クスッと笑いながら答える。
「シア?」
「カイナル様も、とても楽しそうですよ」
今から狩りに出るみたいにね。たぶん、リアお姉様の尻尾もカイナル様同様、揺れてるでしょうね。私も尻尾があったら、絶対揺れてるわ。
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