ヤンデレ狼の英雄様に無理矢理、番にされました。さて、それではデスゲームを始めましょうか

井藤 美樹

文字の大きさ
上 下
58 / 73

ならば、さらに煙で燻りましょう

しおりを挟む

「陛下と王妃様には、リアお姉様から、それとなく伝えてくれると助かります」

 私やカイナル様が直に動くと、あの女が警戒するかもしれないからね。どこに紛れているかわからない以上、私たちは受け身の形をとるのか得策。

 ならば、報告するのはリアお姉様しかいない。今回の警護の総責任者だからね。さすがに、執務室内は安全でしょ。

 私のお披露目会とはいえ、他国の方々を招いた公式の場、それを荒らすことになる可能性が高いなら、きちんと報告を上げておかないといけないでしょ。すり合わせをしないといけないし。以前、噂話程度だけど、他国の高位貴族が公の場で婚約破棄を宣言して、後に廃嫡、鉱山行きになった話を聞いたから特にね。

「それとなくね……」

 リアお姉様が前に見た、あの黒い笑みを浮かべている。私の意図を汲み取ってくれたみたい。格好いいな。

 すでにコーマン王国が、我が国に対して問題を起こしたことは明白。その延長上だと捉えてくれたらいいの。なら、責任のすり替えは容易にできるからね。どのみち、友好国ではなくなるから気にしなくていいし、遠慮もいらない。

 先に喧嘩を売ったのは、コーマン王国だからね。私たちは自国の矜持を護るだけ。

「始まる前に捕らえることができたらいいのですが、正直、今の状態だと難しいと思うので」

 言っちゃあ悪いけど、かなりの高難度のミッションだと思う。

 それに、あの女の信望者がどれだけの数入り込んでいるか把握できてないからね。一応、あの女の従者、侍女、少しでも関係があった者は捕縛済み。今は監視され接触は不可。

 でも、それはあくまでコーマン王国の関係者のみ。他国までは干渉の手を伸ばせない。まだ、コーマン王国は友好国だし、招待した他国の方々に失礼だからね。反対に、我が国が批難されるかもしれない。そう考えると、迂闊うかつに手を伸ばせないよね。

「確かに、現状手詰まり状態。確実におびき出さないといけないわね」

 餌に食らいついてもらわないと、この作戦は不発に終わる。確実に息の根を止めないとね。

「ならば、確実にネズミが巣穴から出てくるように、より多くの藁に火を点け、煙で燻せばいいだけのことですよね、リアお姉様」

 人間はそうそう理性だけじゃ生きていけないわよ。特に、常日頃から抑えこんでる人間はね……

 私とカイナル様が囮になることは決定済み。いつにも増して、仲が良い所を見せつければ出てくるでしょ。そこらへんは、カイナル様が地を出してくれれば問題なし。

 私もリアお姉様を真似して、黒い笑みを浮かべてみた。上手くできたかな。ずっと空気になっていた、アジル殿下とスノア王女殿下がすっごく引いてるよ。ちょっと、ショック……

「さ、さすが、幼少期からの英才教育、完全に染まってるね……」

「まぁ……それくらいじゃないと、ゴルディー公爵家の一員になれないことが、よくわかりましたわ」

 アジル殿下とスノア王女殿下が、小さな声でボソボソと言い合っている。ちゃんと聞こえてるからね。でも、ちょっと嬉しい。少し落ち込んで気持ちが浮上したよ。

「確かに私はカイナル様の番ですけど、その前に、アジルお兄様とスノアお姉様の妹ですわ」

 にっこりと微笑んでそう言うと、二人とも口元を押さえて俯いてしまった。

「「尊い!!」」

 なにが? たまに、理解できない反応するんだよね。首を傾げてると、なぜかリアお姉様も同じ反応をしている。

 カイナル様は小さな溜め息を吐くと、私の肩に額を擦り付けてきた。

 私、なにかした!?

 誰か、説明してくれないかな、お願い。
 



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

訳ありな家庭教師と公爵の執着

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝名門ブライアン公爵家の美貌の当主ギルバートに雇われることになった一人の家庭教師(ガヴァネス)リディア。きっちりと衣装を着こなし、隙のない身形の家庭教師リディアは素顔を隠し、秘密にしたい過去をも隠す。おまけに美貌の公爵ギルバートには目もくれず、五歳になる公爵令嬢エヴリンの家庭教師としての態度を崩さない。過去に悲惨なめに遭った今の家庭教師リディアは、愛など求めない。そんなリディアに公爵ギルバートの方が興味を抱き……。 ※設定などは独自の世界観でご都合主義。ハピエン🩷 さらりと読んで下さい。 ※稚拙ながらも投稿初日(2025.1.26)から、HOTランキングに入れて頂き、ありがとうございます🙂 最高で26位(2025.2.4)。 ※只今、不定期更新となります。

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

夫と息子は私が守ります!〜呪いを受けた夫とワケあり義息子を守る転生令嬢の奮闘記〜

梵天丸
恋愛
グリーン侯爵家のシャーロットは、妾の子ということで本妻の子たちとは差別化され、不遇な扱いを受けていた。 そんなシャーロットにある日、いわくつきの公爵との結婚の話が舞い込む。 実はシャーロットはバツイチで元保育士の転生令嬢だった。そしてこの物語の舞台は、彼女が愛読していた小説の世界のものだ。原作の小説には4行ほどしか登場しないシャーロットは、公爵との結婚後すぐに離婚し、出戻っていた。しかしその後、シャーロットは30歳年上のやもめ子爵に嫁がされた挙げ句、愛人に殺されるという不遇な脇役だった。 悲惨な末路を避けるためには、何としても公爵との結婚を長続きさせるしかない。 しかし、嫁いだ先の公爵家は、極寒の北国にある上、夫である公爵は魔女の呪いを受けて目が見えない。さらに公爵を始め、公爵家の人たちはシャーロットに対してよそよそしく、いかにも早く出て行って欲しいという雰囲気だった。原作のシャーロットが耐えきれずに離婚した理由が分かる。しかし、実家に戻れば、悲惨な末路が待っている。シャーロットは図々しく居座る計画を立てる。 そんなある日、シャーロットは城の中で公爵にそっくりな子どもと出会う。その子どもは、公爵のことを「お父さん」と呼んだ。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】記憶を失ったらあなたへの恋心も消えました。

ごろごろみかん。
恋愛
婚約者には、何よりも大切にしている義妹がいる、らしい。 ある日、私は階段から転がり落ち、目が覚めた時には全てを忘れていた。 対面した婚約者は、 「お前がどうしても、というからこの婚約を結んだ。そんなことも覚えていないのか」 ……とても偉そう。日記を見るに、以前の私は彼を慕っていたらしいけれど。 「階段から転げ落ちた衝撃であなたへの恋心もなくなったみたいです。ですから婚約は解消していただいて構いません。今まで無理を言って申し訳ありませんでした」 今の私はあなたを愛していません。 気弱令嬢(だった)シャーロットの逆襲が始まる。 ☆タイトルコロコロ変えてすみません、これで決定、のはず。 ☆商業化が決定したため取り下げ予定です(完結まで更新します)

前世でこっぴどく振られた相手に、今世ではなぜか求婚されています ~番とか、急にそんなこと言われても困るんですが~

小倉みち
恋愛
 小さな村に住む16歳の少女、エミリーの前世は、なんともしがないものであった。  公爵令嬢であった彼女は、幼年期、1人の男の子に恋をする。  相手は、同じく公爵家の御子息。  原始の龍の血が流れる、神話時代から続く古い家柄出身の彼。  その血が最も色濃く出た彼は、誰よりも美しかった。  そんな彼に一目ぼれをした彼女は、自分の家の力を最大限に利用して、彼に猛アタックする。  しかし彼はそんな彼女を嫌い、邪険に扱う。 「君と付き合うつもりはない」 「もう二度と、近づかないでくれ」 「鬱陶しい」  そこまで言われてなお、彼女は盲目だった。  ほかの男性には目もくれず、彼だけを追いかけ続けた。  しかし、その恋心を利用した悪しき連中によって、彼女は命を落とすこととなる。  死に際、彼女は我に返った。  どうして、そこまであの人のことが好きだったんだろうか。  そうして生まれ変わった今、恋に盲目過ぎた前世を深く反省し、堅実に生きようと決意する彼女。  そんな彼女の元に、突然「彼」が現れ、こう言った。 「君は俺の番なんだ。俺と共に来てくれ」  ……いやあの、急にそんなこと言われても困ります。

処理中です...