ヤンデレ狼の英雄様に無理矢理、番にされました。さて、それではデスゲームを始めましょうか

井藤 美樹

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生徒会室で妹談義

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「なるほどね……そんなことになってたの。でも、カイナル様と喧嘩しなくてよかったわね。リーレルア様との仲も黙認してくれてるんでしょ」

 私が王族入りしてから、スノア王女殿下はずいぶん砕けた話し方になった。ついでに、表情も柔らかくなり豊かになった。あまりの変貌に、私は苦笑してしまう。

 これが素なんだね……特に驚かないかな。薄々わかってたからね……うん。

「はい。幸いにも無事事なきを得ましたが、いいのですか、スノアお姉様? 外でそんなに崩しても」

 アジル殿下と私だけならいいけど、ここは学園の生徒会室、当然、会長と副会長が仕事しているわけで……もちろん、話しながらも手は動いてるわよ。

「構わないわ、ユリシア。心配してくれてありがとう。本当に優しい妹よね。安心して、ここ以外はしないわよ。この二人が外に漏らすなど考えていないし。それにこの部屋、防音の結界が張ってあるから安心なのよ」

 そう言いながら、会長と副会長を見るスノア王女殿下。固まる二人。

 信頼しているからって言っているけど、完全に脅し文句だよね……スノア王女殿下、怖っ。

「なら、いいのですが……そうですね、会長も副会長も口が固い方なので安心です」

 ついでに、私も便乗しておいた。

 あ~会長がお腹を押さえている。今度、胃薬でもプレゼントしようかな。でも、これくらいで胃が痛くなるようだったら、王宮に就職するのはしんどいかも。なかなかの古狸と古狐が、常にいがみあってるからね、あそこ。なのになぜか、上手く噛み合っていくんだから、ほんと不思議だよ。

「ところでユリシア、いよいよ一か月切ったわね、お披露目会。ドレス届いたでしょ。あれ、私と色違いなの」

 スノア王女殿下と王妃殿下が選んでくれたって、アジル殿下から聞いていた。

 カイナル様は複雑な表情をしてたけどね……そこは我慢してもらった。趣旨が趣旨だからね。代わりに、アクセサリーはカイナル様に任せた。ここらへんが落とし所だよね。それでも不満顔だったから、久し振りに、例のヨシヨシをしてあげた。

「そうなんですね、ありがとうございます、スノアお姉様。とっても素敵なドレスです」

「本当は、アクセサリーもお揃いにしたかったのに……」

 すっごく悔しそうな、スノア王女殿下。

「大丈夫ですよ、似たデザインにするって言ってましたから」

「それなら、いいけど。それで、どうして家族に敬語なの?」

 スノア王女殿下は、ずっと黙って空気になっていたアジル殿下と一緒に私をジッと見詰めてくる。

 なにも悪いことしてないのに、罪悪感が……

「私は、スノアお姉様やアジルお兄様のように、器用ではありません。不器用なのです。一度崩すとなかなか持ち直せないので、敬語で話しています。……それに、気を抜くと、前の呼び方になってしまうので、これで納得してください」

「……まぁ、仕方ないわね。ほんと、ユリシアって可愛い。顔真っ赤にして、そう思わない? アベル」

「ああ、可愛いな。こんな妹が欲しかったんだ」

 アベルジ殿下、やけにしみじみと言ってるよ。隣に妹いるのに。

「それ、どういう意味? まぁでも、その気持ちわかるわ。頭がキレて、とても可愛くて、自分をちゃんと持っていて」

 スノア王女殿下の言葉を引き継ぐように、アジル殿下が話し出す。

「家族おもいで、敵には容赦ない。そして、少しドジっ子で不器用。なんでも、一生懸命な姿勢もいいよな。それで」

「「ツンデレな所が最高!!」」

 最後、見事にハモってたね。

 褒めてくれて認めてくれるのは嬉しいけど、なぜか素直に喜べない。正直、軽く引いてる。それに、ツンデレじゃないし。

 ここまで赤裸々な姿見たくなかったな……でも、ちょっと嬉しいかも。胸の奥がじんわりと暖かくなった。


    
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