ヤンデレ狼の英雄様に無理矢理、番にされました。さて、それではデスゲームを始めましょうか

井藤 美樹

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諦めたくないから私は言葉を紡ぐ

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「ミステリーが好きなんですか?」

「特にこれが好きっていうのはあまりないですね。恋愛ものも読むし、ファンタジーも読むし。雑食です」

 そう言って笑うと、侑李が声を出して笑った。

「雑食ですか」

「変ですか?」

「いいえ。いいと思います」

「小鳥遊さんは……」

 さっきから自分のことばかり話してしまった。もっと彼のことも知りたい、と切り出そうとした奈月を、侑李がやんわりと制した。

「名前で呼んでください、奈月さん」

「あ……はい……」

 微笑まれ、奈月は少し逡巡する。彼は目上の人だ。取引先の副社長だとか、そういうことを抜きにしても、年上の人を気軽に下の名前で呼んで良いものだろうか。だが、奈月を見つめるブルーの瞳は、名前で呼ばれるのを待っている。

「じゃあ、侑李、さん……私からも、一ついいでしょうか?」

「はい、何でしょう?」

「敬語じゃなくていいです。私の方が年下ですし」

 年下の自分が敬語を使うのは当たり前だと思っている。だが、年上の彼に敬語を使われるのは何だか居た堪れない。すると、少し考えた素振りを見せた侑李は、にっこりと笑って奈月を見た。

「では、お互いに敬語もなしにしましょう」

「え?」

 まさか自分もだとは思わず、奈月は素っ頓狂な声を上げる。そんな彼女を見る侑李の視線は、どこか悪戯めいていた。

「年は関係なく、対等でいましょう。もちろん、プライベートでは」

「っ……」

「いいかな、奈月さん?」

 ニッコリ微笑む侑李に、なんだかしてやられた気分になる。だが、提案したのは奈月だ。そこに自分を含めたつもりはなかったけれど、彼が求めるなら応じる他ない。

「わかり……わかった」

 言い直した奈月に、侑李は心底嬉しそうな顔になる。その顔を見ただけで、いろんな考えが霧散するのは惚れた弱みだろうか。
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