ヤンデレ狼の英雄様に無理矢理、番にされました。さて、それではデスゲームを始めましょうか

井藤 美樹

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リアお姉様、ご帰還です

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 今日の昼過ぎ、リアお姉様がすっごく満面な笑みを浮かべながら帰ってきました。それも、スキップをしながら。大人がスキップするの初めて見たわ……今どきの子供もしないのに。

 ご機嫌なことはいいことだよね。かなり、鬱憤が溜まっていたみたいだし、ほんと解消されてよかったよ……

 ここまで、リアお姉様に嫌われるのはユベラーヌの自業自得だよね。

 家族や配下を特に大切にする狼人族に対して、他国の兵だからとしても、あの戦法は決して許されるものじゃないよ。魔物の討伐の最中だからといっても、なんでも許されるわけじゃない。するとしても、最終手段だわ。
 
 ましてや――今度は弟の番に対して似たことをしてきたのだから、悪手極まれりってことかな。

 策士策に溺れるってやつね。

「リアお姉様、おかえりなさいませ」

 にっこりと微笑みながらお出迎え。大変だったとはいえ、リアお姉様お手製のメイド服は着てないわよ。一生、衣装部屋の中ね。

「ただいま~!! ユリシアちゃん、私の勇姿見ててくれた~!? 皆の仇うってきたよ!! 褒めて!!」

 いや、誰一人死んでないけどね。

 でも、尻尾が凄い勢いで左右に揺れてるし、耳も真横にペタンとなっている。これは撫でなくてはいけないよね。っていうか、撫でさせてください!!

「ありがとうございます、リアお姉様」

 本能には抗えませんでした。私の背後で、圧をヒシヒシと感じていても。

「お役目ご苦労さまです、姉上」

 今から、一人殺ってきます、くらいなテンションで出迎えてるよ……心狭っ!! 怖っ!! 

「ただいま、カイナル。そんなに怒らないの、姉に焼き餅なんて、本当に私の弟は可愛いな」

 この状態のカイナル様を可愛いって言えるのは、ゴルディー公爵家の皆くらいね。頭ポンポンまでしてるよ……沈黙のカイナル様から殺気が……もうすぐ夏なのに、寒っ!!

「だいの大人を可愛いと言うものではありませんよ、姉上」

 敬語が続いてる~これ、完全に激おこパターン。普段は、もっと気さくに話してるからね。

「可愛いを可愛いと称して、なにが悪いの?」

 リアお姉様、完全に遊んでるよね、これ。

「リ、リアお姉様、疲れたでしょ、身体を休めませんか? 風呂とか用意していますよ。足伸ばして、ゆっくりと疲れをとってください」

 別に、カイナル様を助けたわけじゃないからね。ましてや、背後にいる近衛騎士の皆さんでもないから。明らかに、ホッとした顔をされてるけどね。ただ……この圧、心臓に非常に悪いんだよ。

「ユリシアちゃんがそういうなら、お風呂入ろうかな。一緒に入ろう」

 リアお姉様がさも当然のように言うのと同時に、私を横抱きにしようとしたけど、それよりも早く、私はカイナル様の腕の中にいた。

 反射的に顔を見上げた途端、ピシッって身体が固まったね。歯軋りが聞こえるのに、表情は無表情。違和感あり過ぎて、別の意味で怖かったよ。そう言えば………カイナル様って、怒りがある程度越えたら無表情になってたよね……

「これ以上の、お戯れは止めていただきたい」

 もうこれ、完全に殺っちゃったあとの声だわ。

「わかったわ。今回は、これで引いてあげる」

 リアお姉様もカイナル様の怒りを感じたと思う。だから、パッと私から手を放し離れる。キッとリアお姉様を睨み付けると、そのままカイナル様の執務室に運ばれたよ。これが寝室でないだけマシかな。

 もう少し早く放してほしかったよ、リアお姉様……それに丸投げしないでください!! この魔王の相手、私には手に余るよ~!!

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