ヤンデレ狼の英雄様に無理矢理、番にされました。さて、それではデスゲームを始めましょうか

井藤 美樹

文字の大きさ
39 / 73

ユベラーヌ・コーマン

しおりを挟む

「……そうね~一番近い言葉で表現するなら、腹黒ですね」

 スノア王女殿下が呟くように答えた。

「もしかして、スノア王女殿下は彼女のことが苦手なのですか?」

 普段は貴族令嬢の鏡のようなスノア王女殿下が、めちゃくちゃ嫌そうな顔をしてるからね。溜め息まで吐いてるし。

「ユベラーヌ第二王女殿下のことが苦手じゃない人はいないよ。彼女と少しでも接したことがある人は。ただ……家族には重宝されて、溺愛されているよ」

 スノア王女殿下より酷い顔をしてるね、アジル殿下……この二人にそこまで言われる人って……かなり、問題がありそうね。でも……

「重宝?」

 元ラメール侯爵夫人や令嬢には、間違っても言われない単語だよね。

「頭がかなりキレるのよ。戦術にも長けているし、スタンピードの時はカイナル様と共闘したそうよ」

「共闘ですか……」

 声のトーンが自然と低くなる。まぁ、仕事だったんだからなにも言わないけど、なんかモヤッとする。

「敵に回したくない、腹黒よ。人の気持ちを利用することにも長けてるわね。ましてや、目的のためにはなんでもする面があるし。平気で臣下を切り捨てられることができる人間よ、あれは」

「確かにな。ユベラーヌ第二王女殿下は……人の弱みや願いに敏感なところがあるよ」

 両殿下の台詞に私はなぜか納得したよ。

「……つまり、元ラメール侯爵夫人と令嬢は人形だったってことですか?」

 あの術式は未完成だったけど、床に描かれた魔法陣はそれっぽいものだった。それに、そこまでの凶行を引き起こさせるには起爆剤が必要だったはず。もしくは、それが可能だと信じ込ませる必要があるわ。

 だとしたら、ユベラーヌの立ち位置は力になるわね。それに、両殿下の直感と観察力、人を見る目は信用できる。

「「その可能性は高いかな」」

 両殿下も私と同意見か……

「……囁き続けて、花開いたってところですか。なら、このまま終わりってことはなさそうですね」

「だとしても、難しいと思うわよ」

「俺も同意見だな。言っただろ、重宝されて溺愛されているって。だから、国からは出にくいと思う」

 そうだけど……なんか、頷けないんだよね。両殿下には悪いけど。

「だといいんですが……」

「やっぱり、心配?」

 スノア王女殿下が心配そうに尋ねてくる。

「心配っていうよりは、不安ですね。そこまで頭のキレる人で目的のためならどんなことでもする人が、理由もなく、こんな面倒くさくて遠回しなことをするのでしょうか? そこには、なにかしらの目的と意図があるように思えるんですよね」

 言葉にすると、頭の中が整理されるって本当だよね。

「意図って……まさか!?」

 アジル殿下が驚愕する。

「その可能性は高いと思いますよ。コーマン王国は、いえ、ユベラーヌはカイナル様が欲しいのでは? 接点もありますし。彼を手に入れたいと本気で彼女が動けば、なにかしらの動きがあると思います」

 正直、考え過ぎであって欲しい。そうでなければ、お花畑一号と二号は遊ばれたってことになるわ。それはさすがに気の毒だよ。同情はしないけど。

「か、考え過ぎですわ」

 アジル殿下は黙り込んでしまった。代わりに、スノア王女殿下が不安を打ち消す。

「そうですね」

 私は笑みを浮かべながら、ユベラーヌの話を終えた。

 消えない不安が闇のように心を蝕んでいく。でもなぜか、怖いとは思えないんだよね。それはやっぱり、カイナル様を、そして新しい家族を信頼してるからかな。まぁそれに、簡単に負ける気はないから。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェ(別名義)でも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...