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師範本が欲しい
しおりを挟む「……どうしても、納得できませんわ」
今日も朝からスノア王女殿下は元気です。
「そうですか……停学一週間って、私的には重いと思うけど」
「降格になっていませんわ!!」
スノア王女殿下が朝から憤慨しているのは、副会長が停学一週間ですんだこと。
ちなみに、生徒会役員の中で私に手を出そうとした役員は停学十日。他の役員は生徒会長を含め、厳重注意となった。私は軽く注意されただけですんだよ。手と口を出してきたのは向こうからだからね。目撃者は多いし。
「直接、彼は何もしてませんから。ちょっと喧嘩をしただけですよ。彼女たちのように暴力を振るおうとはしいてないのに、降格はないですよ」
「でも!!」
スノア王女殿下の言いたいことはわかるけどね。
「人の胸のうちは裁けませんよ。行動が全てです」
私がそう言うと、不服そうだけど納得してくれた。スノア王女殿下自身、頭では理解はしているけど感情はまた違うんだと思う。スノア王女殿下には悪いけど、私は嬉しいかな。本気で心配して怒ってくれるから。
「私はいい友人が持てて嬉しいです……ところで、アジル殿下は一緒ではないの?」
スノア王女殿下のデレ顔が、アジル殿下の名前を出した途端消えた。
ん? もしかして、また喧嘩でもしてる? 仲が良すぎるからか、その分喧嘩も多いんだよね。すぐに仲直りしてるけど。
「アジルはもう少ししたらきますわ」
あれ? なんか、奥歯にものが挟まったかのような言い方よね。
「なにか用事でもあったのですか?」
「…………生徒会室よ」
「え!? また勧誘されたの!?」
吃驚して、素が出ちゃった。
「自発的にいったの。役員があの件以降、生徒会室にこなくなって、仕事は生徒会長お一人でなさっているとかで、人が好いアジルは黙ってられなくなったみたいですわ」
目に見えるわ~仕事放棄か……まぁそうなるよね。だってあいつらは、そもそも生徒会にいる理由が違うから。生徒会役員になったのも、憧れの副会長の傍にいるため。彼のいない生徒会はどうでもいい。ただそれだけ。私には彼の魅力が、いまだに全然理解できないんだけどね。アベル殿下の魅力は理解できるのに。
「それが、アジル殿下の良いところだと思います。そうでしょ、スノア王女殿下」
そう言ったら、またスノア王女殿下は少しデレた。僅かに表情が変わる程度だから、気付いてるのは私とアジル殿下だけね。うん、癒やされる。
「……少し甘いと思いますが、アジルらしいですわ」
ほんとに、仲が良いよね。だから、提案してみた。
「なら、昼休み、軽食を購買で買ってから、私たちも生徒会室にいきませんか?」
「えっ!?」
そんなに驚くようなこと言ったかな?
「役員になるつもりはありませんが、新たな役員が決まるまで、中継ぎをするくらいはしてもいいと思います。どこまでできるかわかりませんが」
「生徒会を嫌っていたでしょ!?」
なんか、勘違いしてるみたい。
「生徒会そのものを嫌ってはいませんよ。面倒くさいとは思っていましたが。私が嫌だったのは、その体質です。元凶がいなくなったので、手伝う分には全然構いません」
にっこりと微笑みながら答えると、スノア王女殿下はなんとも言えない表情になった。
あ……もしかして、やりすぎたのを思い出した? 私的にはやりすぎたって全然思わないんだけど、貴族の御令嬢、御令息たちには若干、嫌……かなり、引かれたわ。真っ青で震えている生徒もいたし。精神面弱っ。
「ユリシアが手伝うのなら、私も手伝ってあげますわ」
ちょっと素直じゃないところも可愛いな。ほんとは、アジル殿下のこと心配して手伝いたかったんだよね。
「ありがとうございます、スノア王女殿下」
「但し、放課後は一時間だけですよ」
「スノア王女殿下、用事でもあるのですか? なら、無理しなくても、私だけでも」
そう気を利かせて言ったら怒られた。
「私ではなく、ユリシアがです!! ユリシア……少しは自覚を持って。貴女にはカイナル様という番がいるでしょう。私に対してお昼寝しようと平気でいいますし、少しはその言動と行動を考えなさい」
カイナル様もお昼寝って言葉に敏感に反応したし、めっちゃ怒られた。デスゲームの終了に一歩駒を進めてしまったよ。
なんで、放課後は一時間しか駄目なのかな……? よくわかんないけど、これ、選択間違えたら駄目なやつじゃない? ほんと、亜人族ってよくわかんないよ。どこか、師範本ないのかな。あったら即買いだよ。
カイナル様の普段の行動を思い返せば、回避できるコツがあるのかな?
普段のカイナル様って……
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