ヤンデレ狼の英雄様に無理矢理、番にされました。さて、それではデスゲームを始めましょうか

井藤 美樹

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潰すことに決めました

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 危うく、スノア王女殿下のデレのせいで、選択を誤るところだった……

「……ユリシア、こんなに苦しんで」

 スノア王女殿下勘違いしている。そっちの苦悩じゃないから。訂正できないけど。とはいっても、生徒会の件が悩みの種なのには違いない。

 スノア王女殿下の手前、気にしなくていいと言ったのはいいけど、この状態が続くのは駄目だよね。だからといって、私から折れるのも筋違いだし。折れたくないし。早く諦めてくれることを願ってたんだけど、無理そうね……

 これって、四面楚歌。

 あっちが、さらに一歩踏み出してくれれば打開できそうなんだけど。なら、踏み出すように仕向ければいいかな。かなり強引だけど、手がないわけじゃない。あっでも、カイナル様に知られれば怒られるわね。でも、仕方ないか……

「スノア王女殿下、明日はアジル殿下も誘って食堂でご飯を食べませんか?」

「えっ!? そんなことをしたら……」

 困惑してるよね、スノア王女殿下。さっきまで逃げの一手だったから。

「生徒会役員に出てきてもらいましょう。なんか、嵌めるようで気が進みませんが、仕方ないですよね」

 せめて、私に怒鳴り付けたあの生徒が出てきて謝ったのなら話は違ったし、生徒会長が代わりに出てこなかったら、ここまでややこしくならなかった。そもそも、謝る意思があったのかも疑問よね。代弁なんだから。
 
 自分が仕出かした後始末ぐらい、自分でしろ!! って怒鳴りたいわ。

 そんな生徒が、意外にも平民の間で人気があるのが不思議でたまらない。それは私が、彼を知っているからだ。人族の中で最高位の貴族である彼が、下手な正義と理想論を説けば、私たち平民にとっては甘い蜜なんだよね、きっと。

 私が腹を立てるのはそこ!! 自分の発言に責任が持てないやつが、理想を語るな!!

「あ~そういうことですね。大勢の敵を作ることになりかねませんか?」

 さすが、スノア王女殿下。私の意図がちゃんと伝わっている。

「元々私には敵が多かったし、別に構いません。スノア王女殿下とアジル殿下もいるので、ちっとも寂しくはありませんから、平気です。それよりも、いい加減私も限界がきてるので、公衆の面々に引っ張り出してやる。そして、潰す」

 思わず、握りこぶしを作ってしまったわ。熱がはいちゃった。あっ!? スノア王女殿下、呆れてないかな? 

「私もその案に乗りますわ。私もいい加減腹が立っていたのです。生徒会長の影に隠れて吠えている輩が」

 呆れてなくてよかった。でも、王族に輩呼ばわりされてる時点で、王宮で働くのは難しいでしょうね。あのプライドの高さじゃ、下位文官にはつきたくないだろうし、騎士にも王宮魔術師にもなれないんじゃない。下っ端はなれても。プライドを捨てれば、成り上がることはできると思うけど。

「それで、疑問に思っていたのですが、生徒会長は平民ですか? それとも、下位貴族?」

「男爵家の三男って聞きましたわ」

 あ~やっぱりそうだと思った。

「……平民の間にも貧富の差からの差別はありますけど、貴族社会ほど陰湿で赤裸々ではないですね」

 思わず口から出てしまった。私が嘆いたところで、何一つ変わらないし、変える力もない。隣にいるスノア王女殿下にはあるけど。

「……残念ながら、ユリシアの言う通りですわ。だけど三年後、貴女もその貴族になるのですよ。それも、王族の次に高いコルディー公爵家のね」

 その言葉が、やけに私に重く伸し掛かかった。

 三年後、私は十六歳になる。

 貴族社会で十六歳は成人。王宮でデビュタントが開催され、番である私はカイナル様と踊る。そうなれば、私は実質的にコルディー公爵家の一員と貴族たちに広く認知されるわね。

「そうですね。でも……私は、完全に貴族社会に染まるつもりはありません。根は庶民ですからね。こんな貴族が一人いてもいいですよね」

「まぁ……風通しくらいにはなるでしょうね」

 ほんと、嬉しいことを言ってくれる。初日のことがなかったら、ここまで親密にはならなかったわね。突っかかってきてくれて感謝。

「ありがとうございます、スノア王女殿下。ところで気付いてます? もう午後の授業始まってますよ」

 さっき、鐘の音がしたから。

「えっ!? 急いで戻りましょう!!」

「さぼって、一緒にお昼寝しませんか?」

 駄目元でそうお願いすると、真っ赤な顔で拒否られた。ちょっと、ショックだな。

「色んな意味で駄目に決まっているでしょ!! 走りますよ、ユリシア!!」

 色んな意味って? 亜人族って、いまいちわかんない。

「は~い」

 間延びした返事を返した私は、スノア王女殿下と一緒に走って教室に戻った。

 結局、走っても間に合わなかった私たちは、その日、先生から特別に課題を出すことになった。苦笑しながら渡されたよ、課題の紙を。

 
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