ヤンデレ狼の英雄様に無理矢理、番にされました。さて、それではデスゲームを始めましょうか

井藤 美樹

文字の大きさ
上 下
10 / 73

絡まれたあと、待っていたのは尋問でした

しおりを挟む

 昼休み、チャイムと同時にスノア王女殿下とアジル殿下が私の前にきて、そのまま連行された。連れて行かれたのは、高位貴族が使うサロン。どうやら、貸し切みたい。さすが王族。このまま昼ご飯ってならないよね……たぶん。

「ユリシア!? なぜ、授業を遅刻しましたの!?」

 入室した途端、スノア王女殿下の尋問が始まった。隠してもすぐにバレるので、ここは素直に答える。

「忘れ物を取りに教室に戻ったら、人族に絡まれ、暴力を振るわれそうにました」

 その言葉に、二人とも青くなる。亜人族からしたら考えられない暴挙だよね。初日に、スノア王女殿下が絡んできたけど、私が番であることを否定するようなことは口にはしなかった。でも、彼女たちはした。

「誰に!? 怪我は!? 大丈夫ですの!?」

「訊く前に、保健室にいった方がいいんじゃないか?」

「心配してくれるのは嬉しいけど、普通に授業を受けてるんだから大丈夫ですよ」

 今、保健室は嫌かな……まだいると思うから。

「そう……ならいいけど、誰に絡まれましたの!?」

 まだ、尋問は続くみたいね。明日になれば、学園内に知れ渡ると思うけど、それが真実とは限らない。王族としては事実を把握しておきたいのね。

「怪我はしてませんので、大丈夫です。名前は忘れましたが、同じクラスの伯爵令嬢様。あとは、その取り巻き三人ですね」

 さすがに、王族の前で金魚のフンとは言えないわね。

「あ~あの子ね。カイナル様の熱烈ファンというか信者? ストーカー? ……とにかく、自分が、カイナル様の番だと盲信して風聴していましたわ。何度か、コンディー公爵家から抗議されたと聞いております。ですが、なまじ亜人族の血が四分の一入っているものですから、信用なさる方もそれなりにいましたわね。ほとんどが、人族でしたけど」

 なるほど。そう盲信していたのに、私がひょっこり横からかすめ取ったと思っていたのかな? それとも、惑わす悪女とも思った? どっちにせよ、現実を知って暴走したのね。

「ここまで、匂い付けをしているのに、なぜ、ユリシア嬢を害しようと思ったのか……わずかでも、亜人族の血が入っているのに」

 アジル殿下は心底わからないようだ。

「……人族の血が強かっただけです。そして、その思考も人族だった。ただそれだけですわ」

 確かに、亜人族の血が入っていても、四分の一、ましてや、両親は人族。ならば、亜人族の能力も人族の中で失われたんだろうね。

「人族って「厄介ですよね」

 アジル殿下が言い辛いことを、私が代わりに言った。

「貴族社会では、人族でも離婚は難しいと思いますが、婚約は違いますからね。簡単とはいきませんが、変えることができます。それに、私は平民ですからね、脅せば下りると思ったのでしょう。人族は、婚姻を軽く考えていますから」

 だから、番の間に平気で割ってこようとする。

「そこだけは……私たちでも、どうすることができませんわ」

 スノア王女殿下の顔が曇る。

「スノア王女殿下が責任を感じることはありませんよ。これだけは、どうすることもできません。民族性の問題ですから」

「達観してるわね……」

 スノア王女殿下が怪訝そうに言う。

「予想はしてましたし、その対策は、カイナル様が自らしていましたから、私は不安は感じていません」

「その対策って……訊いてもいいかしら?」

 スノア王女殿下が恐る恐る訊いてきた。勇気あるなぁ、王女殿下。私なら、絶対訊かないけど。

「そうですね……私も全部は知りませんが、悪意を持つ者に反応する魔法、物理の防御魔法。状態異常を無効化する魔法。あとは、録画機能を持った魔法具ですね。それに、このピアス、通信機能が付いてます」

 ここまで言うと、スノア王女殿下とアジル殿下の表情が見る見る青くなっていた。だから、聞かないほうがよかったのに。でも、亜人族でもここまで青くなるなんて……カイナル様って心配性なの?

「まぁ……学園に番一人通わすのだから、ここまでするのは理解はできますが……録画されていますの?」

 二人が青くなったのは、そこか。入学初日に絡んできたものね。

「安心してください、録画はしてませんよ。スノア王女殿下からは悪意は感じなかったので」

 あれは、ただの難癖だったからね。私を排除しようなんてしていなかったし、私が番であることを否定する言葉を口にはしてなかった。

「保健室に行きたくない気持ちがわかったよ」

 アジル殿下、録画のことは触れなかったわね。

「触れない方がいいと忠告したのですが……聞き入れてくれませんでした」

 一瞬、躊躇はしたんだけどね。そこが、運命の分かれ目だったわね。

「皆、退学でしょうね」

 スノア王女殿下の台詞に、私は軽く首を横に振った。

「退学だけはしないように、カイナル様にお願いしましたので、クラスは変わるとは思いますが、退学にはならないでしょう」

「えっ!? 敵に情けをかけましたの!?」

 いや、そんなに驚かなくても。

「この学園に入学するのに、とても努力し頑張ったと思います。その頑張りを、これくらいのことでなかったことにするのは忍びなかっただけです。罪と罰が釣り合ってませんから」

 良いように言ってるけど、自分のエゴだからね。次はないけど。

「……カイナル殿も苦労しているな」

「厄介な番を持ちましたね、カイナル様」

 なぜか、カイナル様に同情票が集まっている。どうして? 

 

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】え、別れましょう?

須木 水夏
恋愛
「実は他に好きな人が出来て」 「は?え?別れましょう?」 何言ってんだこいつ、とアリエットは目を瞬かせながらも。まあこちらも好きな訳では無いし都合がいいわ、と長年の婚約者(腐れ縁)だったディオルにお別れを申し出た。  ところがその出来事の裏側にはある双子が絡んでいて…?  だる絡みをしてくる美しい双子の兄妹(?)と、のんびりかつ冷静なアリエットのお話。   ※毎度ですが空想であり、架空のお話です。史実に全く関係ありません。 ヨーロッパの雰囲気出してますが、別物です。

【完結】無能に何か用ですか?

凛 伊緒
恋愛
「お前との婚約を破棄するッ!我が国の未来に、無能な王妃は不要だ!」 とある日のパーティーにて…… セイラン王国王太子ヴィアルス・ディア・セイランは、婚約者のレイシア・ユシェナート侯爵令嬢に向かってそう言い放った。 隣にはレイシアの妹ミフェラが、哀れみの目を向けている。 だがレイシアはヴィアルスには見えない角度にて笑みを浮かべていた。 ヴィアルスとミフェラの行動は、全てレイシアの思惑通りの行動に過ぎなかったのだ…… 主人公レイシアが、自身を貶めてきた人々にざまぁする物語── ※ご感想・ご意見につきましては、近況ボードをご覧いただければ幸いです。 《皆様のご愛読、誠に感謝致しますm(*_ _)m》

当て馬令息の婚約者になったので美味しいお菓子を食べながら聖女との恋を応援しようと思います!

朱音ゆうひ
恋愛
「わたくし、当て馬令息の婚約者では?」 伯爵令嬢コーデリアは家同士が決めた婚約者ジャスティンと出会った瞬間、前世の記憶を思い出した。 ここは小説に出てくる世界で、当て馬令息ジャスティンは聖女に片思いするキャラ。婚約者に遠慮してアプローチできないまま失恋する優しいお兄様系キャラで、前世での推しだったのだ。 「わたくし、ジャスティン様の恋を応援しますわ」 推しの幸せが自分の幸せ! あとお菓子が美味しい! 特に小説では出番がなく悪役令嬢でもなんでもない脇役以前のモブキャラ(?)コーデリアは、全力でジャスティンを応援することにした! ※ゆるゆるほんわかハートフルラブコメ。 サブキャラに軽く百合カップルが出てきたりします 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5753hy/ )

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

契約婚なのだから契約を守るべきでしたわ、旦那様。

よもぎ
恋愛
白い結婚を三年間。その他いくつかの決まり事。アンネリーナはその条件を呑み、三年を過ごした。そうして結婚が終わるその日になって三年振りに会った戸籍上の夫に離縁を切り出されたアンネリーナは言う。追加の慰謝料を頂きます――

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

【短編】旦那様、2年後に消えますので、その日まで恩返しをさせてください

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
「二年後には消えますので、ベネディック様。どうかその日まで、いつかの恩返しをさせてください」 「恩? 私と君は初対面だったはず」 「そうかもしれませんが、そうではないのかもしれません」 「意味がわからない──が、これでアルフの、弟の奇病も治るのならいいだろう」 奇病を癒すため魔法都市、最後の薬師フェリーネはベネディック・バルテルスと契約結婚を持ちかける。 彼女の目的は遺産目当てや、玉の輿ではなく──?

処理中です...