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第八章 今度こそ絶対逃げ切ってやる

悪役令嬢であり悪女の私らしいよね

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 たぶん、カインに関わった者は彼の行方と動向が気になると思う。胸に抱く想いは多種多様だと思うけど。私自身気にならないとは言えないしね。

 でも、それを口にはできない。

 だからかな、時たま、ラックさんとかが気を利かせて雑談混じりに教えてくれたりする。

 カインは旅をしているそうだ。そこで魔物を討伐したり、色々な厄介事を解決しているみたい。

 そして、探しているらしいわ。アリエラの生まれ変わりを――

 胸が痛くなる。罪悪感に苛まれる。でもそれは、私が選んだ結果なのだから、仕方ないよね。

 それにしても、困った人に手を差し出すのは元勇者らしいわね……本来、カインは優しくてお人好しだから。今までの彼を見ていたら信じられないだろうけど。私は彼の優しさと強さを知っている。本来、彼は愛されるべき人なの。元の彼に戻ってきていて嬉しいかな。

 そんなことを思いつつ、私が養女になって五年ほど経った頃だった。

 ラックさんが冗談混じりに訊いてきた。

「まだ気になるんだろ。だったら一度、遠目からでもいいから、カインの様子を見たらどうだ」と。私は軽く首を横に振って断った。私は一生会わないって決めていたから。死後は別だけど。

 それが、私なりのケジメで、カインに対して唯一できることだから。

 そう思っていたのに、会ってしまった――

 会うというのは足りない時間。

 ほんの一瞬――すれ違っただけ。

 犬の振りをしている神獣様に、カインはチラリと視線を向けたけど、私には視線を向けはしなかった。神獣様の件で呼び止められもしなかった。ちょっと、胸がチクリと痛む。私はその痛みに気付かぬ振りをして先に進んだ。

 だから私は知らなかった。

 カインが振り返り、私と神獣様を見ていたことに――

 カインの攻撃で負傷し復活した神獣様と一緒に行動してるけど、今だに番関係にはなってはいないの。魔王様は呆れて、もう急かしたりはしない。

 私には人よりはかなり多めの魔力がある。だから、年をとりにくいし、寿命も長い。見た目もほとんど変わってないしね。

 だから、絆されて、神獣様の番になって神獣様似の小さな銀色の狼を抱いてる日が来るかもしれない。それとも、魔族の誰かと夫婦になっているかもしれない。神獣様も違う番を見付けてるかも。

 未来はわからない。

 わからない未来が、私は愛おしい。

 そんな私でも言えることがあるわ。私とカインの死後、神獣様とカインの第二ラウンドが始まるってね。

 最高の男二人を手玉に取るなんて、悪役令嬢であり悪女の私にとっておかしなことじゃないよね。平凡だけど。まぁそれでも、今世ではカインから殺されずに逃げ切れたことには違いないわ。

 私とカインの人生は始まったばかり。

 色々な想いはあるけど、私はこれからの長い人生を楽しもうと思う。

 怒って笑って悲しんで、たまには恋をして、特別なんて望まない。主役なんて絶対嫌。ただ……普通の人間らしく生きていきたい。私が望むものはささやかな幸せなのだから……

 

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みんなの感想(326件)

七地潮
2024.06.21 七地潮
ネタバレ含む
井藤 美樹
2024.06.21 井藤 美樹

 最後まで読んでいただきありがとうございます。重ねて、感想をいただきとても嬉しいです。

 そうですね……
 カインには悲しい終わり方ですよね。彼はマリエールと共に生きるために、自分の持てる物全てを利用し、全てを捨てた。なのに、最後に残ったのは、マリエールがいない自由な世界。
 私もカインのラストは悩みました。少しでも幸せにしてあげたいって。でも、マリエールのためとはいえ、マリエール自身の命を奪い続け、他者を踏みつけてきた過去は変わりません。彼女自身、それを知っているから、このエンディングになりました。

 カインとして現世を生き抜いた後、どうなるかは、作者もわかりません。マリエールの未来も。
 精一杯、生きて欲しいと願ってます。

 カインを愛していただき、ありがとうございます。

 これからも、一生懸命書いていきますので、引き続き応援宜しくお願い致します。ありがとうございました。

解除
どら
2023.12.14 どら
ネタバレ含む
解除
どら
2023.12.03 どら
ネタバレ含む
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