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第八章 今度こそ絶対逃げ切ってやる
自分の意思で決めますよ
しおりを挟む「戻って来たよ~~魔国に」
魔国の入口の洞窟前で、私は感激の声を上げる。足元には神獣様。背後にはカインがいるけどね。
「なんで、魔国なんだ?」
若干一人、不満げな声で文句を言う。思っていた通りの反応ありがとう。
「文句を言うのなら、カインは来なくてもよろしかったのでは?」
元前世勇者様としては、魔国はあまり好まない場所のようだ。それよりも、私が魔国の住人に肩入れしているのが気に食わないんだろうね。相変わらず、心が狭すぎる。
「送ってもらって、そのセリフか?」
拗ねられてもね~。可愛くないわ。
「それには感謝しておりますわ。しかし、コレとソレは話が違いますわ。では、私はこれで失礼します。カインもお元気で」
ここで、カインとはお別れ。バッサリと切り捨てる。薄情!? なんとでも言ってくれて構わないわ。
だって、もう婚約者じゃないしね。婚約は国が結んだものだから。平民になった以上、当然、それは破棄される。まぁあらためて結ぶかは、後々に決めることでしょうね。
でも今は、自由を謳歌したい!!
なので、国に戻る前に、魔王様と相談して決めたことを実行するわ。
できる限り、私は神獣様とカインと行動をともにしない。だけど、行き先はきちんと告げる。そして、人様に迷惑が掛からないよう配慮する。
簡単に言えば、神獣様とカインが牽制し合ってくれれば被害は少なくてすむってことよ。だって、実力は拮抗してるから、互いに出し抜くことができないでしょ。まぁ……とても褒められた作戦じゃないけどね。問題を先送りしているだけだし。傍からみたら、悪女って思われるでしょうね。
「それは、あまりにも薄情じゃないか!! それに、俺は駄目で犬はいいのか!?」
早速、カインからの猛抗議。あ~うるさい。なので、無視。
「神獣様はどうなさいますか? 私は魔王様に会ってから、エルフの森に向かうつもりですが」
一応、誘ってみる。できる限り一緒に行動しないっていっても、わざとらしく避けるのはどうかと思うからね。
「そうだな、我も友人に会いに行こう」
神獣様は私の意図に気付き、気持ちを尊重してくれる。うん、頼りになる大人だね。ポイントアップ。
「そうですか、なら、王城までご一緒にどうですか?」
「いいのか?」
「はい。構いませんよ。では、そういうことですので、ご機嫌よう」
そう告げると、カインに背を向ける。
「なっ!? 俺はマリエールの婚約者だろ!?」
「えっ!? 違いますよ。そもそも国が決めた婚約ですよね。貴族でなくなった以上、解消されて当然でしょう」
何をいまさら。
「俺は認めていない」
でしょうね。そう言われても、事実は覆らない。
「書類は全て破棄されてますよ。まさか、貴族籍を取り戻そうとか考えてませんか? もしくは、別の国で貴族籍を得ようと……もし、そういう行動に出たら、私は二度とカインと目を合わすことも、話すこともしません。それは、私の死後も続きます」
淡々と冷たい口調で告げたら、カインは黙ってしまった。
「…………そこまで、俺は嫌われてるのか……」
雨の中放り出された子犬のような様で、カインはポツリと呟く。あ~~もう!!
「別に嫌ってはいませんわ。ただ、この感情が恋愛的なものではないだけ。平民ですから、私は自由に恋愛をし、いずれは自分の意思で伴侶を決めますわ」
そう告げると、私は今度こそ王城に向かって歩き出した。
「…………自由に恋愛がしたいだと……相変わらず、マリエールは可愛いことを言うな。でも、そんな我が儘、俺が許すわけないだろ。恋愛がしたい。なら、俺とすればいい。他のヤツに絶対渡すものか」
先を進んでいた私には、カインの声は耳には入ってこなかった。だけど、神獣様にははっきりと聞こえていたみたい。
「我も渡すつもりは微塵もないな」
「ん? どうかしました?」
「いや、なんでもない。王城まで距離があるだろ? 我の背中に乗るか?」
「いいんですか!! なら、街道までお願いします」
神獣様は乗りやすいように、少し大きくなってくれた。私はモフモフの背中に飛び乗る。
この感触、肌触り、マジで癒やされるわ~~今のうちに、存分に味わっとこ。
☆☆☆
最後まで読んで頂きありがとうございます。
いかがでしたか? 少しでも楽しんで頂けたら、とても嬉しいです。励みにもなります。
今回、児童書に初挑戦しています。【第一回きずな児童書大賞】にもエントリー中。
タイトルは【こうなったら、頑張るしかないでしょ~両親大好きっ子平民聖女様とモフモフ聖獣様との出稼ぎライフ~】です。
幼い聖女様の頑張りを一緒に応援して頂けたら嬉しいです。
これからも頑張って書いていきますので、宜しくお願い致します。
応援ありがとうございます!
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